千葉市議会議員+千葉から日本を元気にする
山本直史です。

弘前市では先進的な「公共施設マネジメント」を進めている。
キーワードは「魅せるファシリティマネジメント」だ。

今回の弘前市における視察を通じて戦略的な「ファシリティマネジメント」の大切さをあらためて認識したので、特にその部分を重点的に報告したい。

弘前市が保有する公共施設は保険福祉施設、庁舎や消防施設などの行政系施設、公営住宅などを含めて500施設とされ、その延床面積は約71万㎡とされている。

弘前市と人口規模が同程度の地方自治体の人口一人あたりの延床面積は3.02㎡/人に対し同市は4.02/人なので、人口規模に対して比較的公共施設が多い傾向にある。

また、現在保有している公共施設の約48%が建築後30年を経過していることから、現施設の大規模改修や建て替えなどを含めた更新費用は今後40年間で約5872億円と積算されている。
 

弘前市も人口減少が見込まれているため、このまま税収が増えない中で単純に施設更新した場合には、毎年更新費用として約146億円が必要となり、財源が毎年89億円不足する事態も予測されているため、現存する施設を持ち続けることは困難であるため、施設の長寿命化や維持管理費の縮減・平準化などの公共施設マネジメントが求められている。

【弘前城本丸石垣修繕活用事業】
魅せる工事でピンチをチャンスにした好事例

弘前城の石垣を修繕するために、天守閣を曳家にする工事を市民を巻き込んだイベントにしたことで平成27年9月に実施された天守曳家では8日間で3900人が参加し、そのニュースの公告効果は25億円と試算されただけでなく、その後に弘前公園の有料区域への入場者は前年同期比2倍を記録した。

【弘前公園外濠の花筏(はないかだ)】
弘前市役所の前に弘前公園がそこの外濠は春になると桜の花びらが濠に散り、桜の花びらが絨毯のようになる「花筏(はないかだ)」が見られる。

しかし花びらは水流や風の影響を受けるため、観光で訪れた方に「花筏(はないかだ)状態」を見ていただくために、かつてはスタッフが人力で花びらをタモで集めてすくっていたそうだが、弘前市は一つの英断を下した。

この外濠を準用河川として指定し、水の流れを調整することで花筏を人工的に作り出すようにした。
 

この発想はなかなか出てこないし、この決断をした当時の市長や議会は素晴らしいと感じた。

その結果、この「弘前公園外濠の花筏」は「死ぬまでに行きたい!世界の絶景」で世界一となった。

●具体的効果の平成25年と平成27年の比較
弘前公園周辺施設の入館者数
4万5618人→21万4673人

宿泊者数
56万5891人→60万9618人

観光消費額
172億円→195億円

●地域ブランド調査2016年「観光魅力度」
1000自治体中「全国40位」
東北の中では仙台に次いで「2位」
青森県内では「1位」

【山本の視点】
「魅せるファシリティマネジメント」が底流にある弘前市の公共施設マネジメントには学ぶところが多くあった。


弘前公園の桜は全国的にも有名だが、そのお濠に桜の花びらが散った時だけ出来る出来る「花筏」の状態を出来るだけ多くの方に見せるために準河川指定をしてまで水流を変えるという決断は、前例踏襲主義の行政運営としては極めてチャレンジングな事だ。

今回の視察の際に、この「花筏(はないかだ)が実現した推進力がどこから生まれたのか?」という質問をさせていただいたが、その回答は「前市長が青森県庁の技術屋出身でかなりのアイデアマンだったため、リーダーのイニシアチブにより実現した」との話であった。

それは、弘前城の曳家によるプロジェクトや、資料館として使っていた歴史的建造物(旧第八師団長官舎)を曳家により市役所の前に移動し、スターバックスコーヒーにするなど、注目すべき「魅せるファシリティマネジメント」による公共施設が数多く点在していた。

創意工夫によりあらゆる地域資源を活用し、新しい価値を生み出し市民に愛される公共施設を目指す戦略は、持続可能な公共サービスの提供するだけではく、新しい価値の創造を図ることにより利用者を魅了し、結果的に市民に愛され
親しまれる公共施設を次世代に継ぐことになるため非常に参考になった。

しかし皮肉にも、「魅せるファシリティマネジメント」戦略は非常に先進的であったが、それにより弘前市の公共施設は単純に除却するより活用するという方針であったため延床面積は増えてしまったそうだ。

それが直接的な原因なのかはわからないが、「魅せるファシリティマネジメント」を推進した前市長は3期目の市長選で落選してしまったそうだが、現市長は「魅せるファシリティマネジメント」戦略と、人口減少を見据えた最適化の両立を
目指しているようだ。

つまり、街づくり全体には市長のリーダーシップが必要不可欠ではあるものの、実現の過程においては将来を見据えた「本質的なファシリティマネジメント」のあり方をしっかりと市民に理解していただく努力も求められる。

 

「死ぬまでに行きたい!世界の絶景」で世界一になった花筏

 

旧第八師団長官舎がスターバックスに
 
現在は弘前城の天守閣のみが曳家で移動した場所に仮設されている