千葉市議会議員+千葉から日本を元気にする
山本直史です。

熊本市における視察項目の一つ目は「熊本市動物愛護センター」だ。


熊本市では「犬猫の殺処分ゼロ」を早くから目標として掲げ、様々な取り組みを
進めてきている都市だ。

お話を伺ったのは動物愛護センター所長の村上睦子氏(獣医師)で、女性のセンター長は全国的に見ても稀とのことだ。

【施設概要】
熊本市動物愛護センターは東京ドームの1/4の広さとのことだが、施設の位置づけとしては住民から歓迎される施設というよりも、どちらかと言えば迷惑施設的な存在とのことなので、敷地の半分以上を公園などにしている。

【収容頭数】(現状も、ほぼ収容できる上限に近いとのこと)
犬:80頭~90頭
猫:30匹~40匹

【職員体制】
獣医師10名、事務職3名、業務職12名(うち5名:動物看護師・ハンドラー・トリマー)
※このハンドラーやトリマーの存在が大きい

【法的な位置づけ】
狂犬病予防法
動物愛護管理法
鳥獣保護法

【殺処分ゼロへの経緯】
・平成13年時点では567頭の殺処分をしていた。
 

~数々の取り組みにより~
平成21年には殺処分1頭にまで減少
平成26年には殺処分0頭を実現
平成28年も殺処分0頭を実現
※現実的には熊本市においても、毎年殺処分ゼロが続いているわけではないが、出来るだけ「殺処分」を行わずに済むように様々な取り組みを続けている。

【なぜ殺処分ゼロを目指すこととなったのか】
以前は住民が「犬や猫を飼えなくなった」と愛護センターに持ち込む。


一定の期間が過ぎると職員が「殺処分機」の操作盤を操作し、炭酸ガスにより
殺処分を行っていた。

※現在は深い麻酔をかけて安らかに見送る手法が取られている。

熊本市の職員は殺処分も「仕事の一つ」として気持ちを押し殺して淡々作業を進めていた。


平成13年頃から「これで本当に良いのか?」と職員が疑問を持つようになり、職員同士の話し合いで「どげんかせにゃいかん」という機運が高まってきた。

「チャンスがあれば、殺処分をする前に新しい飼い主を探してあげたい!」
「どうにかこの状況を変えて行きたい!」
「本当は殺処分などしたくない!」

以前、職員は自分の仕事を家族にも言えない状況で、取材や報道が来ても顔を出さないようないわばワースト5に入る職場だった。

【動物愛護推進協議会発足】
平成14年「動物愛護推進協議会(25名)」の発足
目標:殺処分ゼロを目指す

熊本市獣医師会
動物取り扱い業者(2団体)
動物愛護団体
盲導犬使用者の会
熊本市推薦
公募
 

【具体的アクション】

~入口抑制策~
迷い犬、飼育放棄、負傷犬猫

〇実情
箱が限界(キャパ)になっているため入口で受け取らないようにしている。
住民からの理由:明日引っ越し、部屋の片づけをしたら犬もいらなくなった、
近隣からの苦情、ペットの面倒をみる人が介護になった、ペット禁止マンションで
見つかってしまったなど様々

〇返還策(元の飼い主に戻す)→安易に引き取らず説得をしている
→簡単には引き取らない

〇返還策
預かっている犬や猫を「ホームページ」に出すことで飼い主が探しに来る
ことが多くなった。
当初熊本市の広報は「ホームページは人のものであり、動物のものではない」と
言われたが実現した。

〇「犬・猫をもらってください」と地域のフリーペーパーに掲載
その結果:最近は直接窓口に飼えなくなったペットを連れて来る人はいなくなった

〇迷い犬をなくす
迷子札をつけよう100%運動(平成21年度から)
飼い主の連絡先を明記した首輪や名札などをつける
バスへの「車内広告」

〇負傷猫を減らす
野良猫の繁殖は早く、2匹の猫から1年間で30~40匹まで増える

〇譲渡策(新たな飼い主を見つける)
職員がシャンプー&トリミングをすることで譲渡が進むようになっている

〇個体管理によりケンカが起きないようにしている
(昔は大部屋だった)

〇譲渡会の前に講習会を開催
→講習会に参加しない限り譲渡はしない

〇譲渡したあとは「アフターフォロー」を徹底
「報告書」を郵送して、回答して戻していただく。
対応の悪い方には直接電話連絡を入れるほどの徹底ぶり

【山本の視点】
これらの複数の方策を地道に進めるにより、熊本市では確実に殺処分は
減少して来ているが、まだ「殺処分」が完全にゼロにはなっていないのが実情だ。

 

大切なポイントは、全ての人が「命」を意識するようになることだと感じた。

 

そのように考えると、ペットのブリーダーや、販売店の意識改革も進める必要もあるし、飼う側も、「ペットを飼う」ためには、〝かわいい”という感情だけでなく、そのペットの将来も預かる責任があるのだということがしっかり理解する必要があるだろう。

 

個人的には「売る側の責任」「飼う側の責任」を果たしつつ、市民一人ひとりが、犬や猫というペットであっても、「同じ命なのだ」と認識をするための啓蒙活動を、地道に取り組んで行くことが大切なのだと感じた。