千葉市議会議員+千葉から日本を元気にする

山本直史です。

 

先日参加させていただいた、「全国市議会議長会研究フォーラムin姫路」において行われた基調講演についての報告は先日ブログに書かせていただいた。

 

前日のプログラムの第2部として行われた「パネルでジスカッション」だ。

ここでは、有識者の皆さんが地方議会をどのように見ているのか・・・そして、これから先に地方議会をどのようにして行くことが良いと考えているのかのパネルディスカッションが行われた。

 

第2部パネルディスカッションテーマ

「議会改革をどう進めていくか」

〇コーディネーター

人羅 格氏(毎日新聞論説副委員長)

〇パネリスト
大山礼子(駒澤大学法学部教授)
金井利之(東京大学大学院法学政治学研究科教授)
新川達郎(同志社大学大学院総合政策科学研究科・政策学部教授)
川西忠信(姫路市議会議長)

以下、苗字のみの記載で発言のポイントを列挙させていただきます。

 

★議会改革基本条例について
〇大山
議事手続き(反問権・一問一答など)議員さんは「うちの議会では議会改革をこんなにやっている!」と思っていてもそれは住民にとってはどうでも良い話

→大きなズレが生まれている

そもそも政治に対する関心が薄い→無投票当選、一人しか落選しない選挙→おのずと投票率が低い

議員のほとんどが男性(女性が少ない)、年齢は年配者が多い(若者が少ない)、
職業の偏りがある(自営業比率)

→市議会議員は「自分たちの代表者だ!」と思ってもらえない(議員の属性に偏りが大きい場合)


→現職議員は嫌かも知れないがもっと競争が生まれるようにすべき

〇金井
「議会基本条例」は少なくとも作ることに意義はある
議会改革を進める上で、「議会基本条例」は目標の具体化という意味ではある。
→しかし議会基本条例を作ることが自己目的化するリスクが大きい
→極論を言えば作ってしまえさえすれば、その中身はどうでも良い
→「制定したら疲れ果てるケース」もある

議会報告会については、決まってしまったことだけを「報告」(既にわかりきっていることの報告)→あまり意味は無い
議員から「ここは意見や要望などを言う「陳情」の場ではない!」と言われるケースが多い→参加者は減ってくる
議会報告会に「住民が来ない」のは開催する意味が無いので、自治会にお願いして集客してもらうケース
→そうなるとそもそも議会報告を実施する意味はどこに?(本末転倒)
「仏作って魂入れず」の状態→議会報告会の形骸化

・議会改革とは「首長との権力闘争」である
・良い試合を見せることが必要(質の悪い試合×)
・是非とも議会側が首長に勝ってほしいと願っている
→現実は議員の数の方が圧倒的に多いのに、1人のジャイアン(首長)が勝ってしまうのが今の日本の現状
→間違ってはいけないのは「議会内での権力闘争」ではなく「首長との権力闘争」である
・首長に対する「反問権」の付与は議会側が有利になるので導入すべき

〇新川
「議会基本条例」は理念条例にとどまっているものが多く見受けられる
・審議の活性化を図る際にも、議会基本条例の理念にあっているかを確認すべき
・条例の中身がちゃんと使える議会基本条例になっているのか?そうでない場合には、どのように変えて行くのか?
・「現状維持」=その瞬間から「陳腐化」がはじまる
・使いこなしやすいように「運用の改善」が必要になってくる→「中身の見直し」こそが議会改革の次なるステップに

〇川西(姫路市議会における状況)
平成23年に議会基本条例を制定
理念は早く一致したが、具体的なところでいろいろな議論があった

議員間討議の現状→自由討議をしているがあまり活発とは言えない
一問一答方式の導入(複数の質問方法を採用)
議会報告会(偏ったエリアでの開催、報告会を適切に運用することが難しいのではないかという理由で導入見送り)
反問権の導入(6年間で数回発動)

予算審査・決算審査の「プロセス」を強化している
議員の職務能率向上を目指してタブレット導入を検討中


★地方議会はどのような役割を果たし、どのような改革を進めて行くべきか?
〇新川
あれも、これもと言わざるを得ない
まずは「議会と住民とのかかわり方」→住民との距離を縮める努力が必要

〇大山
議会基本条例→情報公開(議決した結果の公開)→これでは住民の関心は高まらない
議会が「今論じていること」を住民に伝え、住民が意見を言える「場」が必要
議員個人としての活動ではなく、議会としての活動が大切
「議会として」いかに住民の意見をくみ取るかが問われている
イギリスではホームページ上に議員への連絡先、議員が住民からの意見徴収を行う方法などが記載されている

〇金井
人間は「金」のことになると急に意識が高まる
議会が信頼を勝ち得た上で「権力」を持つべき
→新年度予算編成はどのような予算にすべきなのか?
→予算編成こそ「金」をめぐる権力闘争に他ならない

その一方で「政務活動費」などで議員側が守勢に回るのはマズい。
不正を無くすためには、議員本人が「現金を触らない」ことが大切
「守りの体制」を構築すべき、首長は現金を触らない
議会は「予算の査定」を出来るのか?
議会の「議決」の権利は大きい

日本の地方議会は予算査定をして来なかった→今後チャレンジすべきポイント
各会派からの「予算要望」を首長に渡すことが重要
議会が再査定する力をつけよ!→予算がつかなかった場合には、執行部に対し
「要望したのになぜ予算化しなかったのか?」を聞くこともポイント


★議会における議員発議による政策条例について
→乾杯は日本酒で行うなどの条例

〇新川
議員提案条例を議会がどれだけイニシアチブを取るか?
監視機能も重要であったので、これまでは政策的な動きをする議会の権能は弱かった
→背景にあるのは「オール与党化」の議会は市民から批判される

〇大山
国の地方分権は市長に権限を与える事→議会のチェック機能が大切
チェック機能は非常に地味なので、市民からは見えにくい部分もある
→政策条例はアピールしやすい
→条例で出来ることを増やす

〇金井
議会は監視も大切だが、政策を打ち出すことも大切
予算査定は政策判断が伴うのが一般的
「優先順位をつける」か、もしくは「広く薄くを特徴とする」のか
従って「政策条例は必要がない」→理由「政策で一番大切なのは「予算」」

総合計画を元に予算をつける→原点に返るべき
議会としてしっかり予算に対して力を発揮すべき
→首長との闘争に勝つために「総合計画」を軸に進めるのが良い


★議員のなり手不足について
〇新川
そもそも日本国民の責任が大きい
民主主義を「仕組み」として動かすために、どれだけ主権者教育をして来たか
それが戦後70年の歴史なのではないか
「民主主義の政治」をキチンと理解している市民は何人いるか?
現状を考えると時間はかかると考えている
市民ひとりひとりの意欲に期待する以外に道は無い

〇大山
選挙制度を考えた方が良い
投票のしようがない
定数50人に候補者80人のポスターがある場合、「選ぶこと自体」が大変
全市1区の大選挙区制に問題がある
その一方で有権者の1%でも当選するケース
号泣議員や問題あり議員でも「目立つと当選してしまう」のが今の選挙制度

国は1994年に国の選挙制度が大きく変わったのに、地方議会の
選挙制度はずっと変わらない

多様な議員を確保するにはどうすれば良いのか?
→比例代表制など

選挙制度を変えるのは「現職議員は嫌がるの常」
地方議会の中から公職選挙法を変える機運が高まって欲しい

〇金井
選挙制度改革=有害
政党本位、新党ブームと破裂、政党の身売り、政党の離合集散
〇〇チルドレン議員×(とんでもない議員)
与党議員が国会質疑でお経を読むなら、まだ号泣していただいた方が良い
むしろ今の地方議員が日本の民主主義を守っているのではないか

大した仕事でないので国会議員がなれる
地方議員は「こんなに大変な仕事なのにこの給料ではやってられない」が本音
地方議員へのなり手不足はここがポイント

街を良くしたいのに、今の議員では力不足
予算を決めることの出来る「権力」を持つことが大切
議員報酬を増やすだけでな議員としての魅力が高まらない
議員の処遇を改善することが必要
地方議員は労働条件が悪いブラック企業で働いているようなもの
街のためにやりたい=(地方議員の善意に対して市民がおんぶに抱っこの状態
ただ(無料)で議員を酷使できない
使用者側としての国民は、労働者としての議員の処遇を改善する必要がある

〇川西
議会の議決権は大きい
投票年齢が18歳に引き下げられたので、政治教育が大切
多様な意見が集まる議会が大切
議員なた当局とでも、「これなら負けないという得意分野」を持つべきだ
議会の「見える化」も非常に大切
インターネット中継もしているが、あまり見られていない

★最後のメッセージを
〇大山
「危機」という言葉を使うと「本が売れる」
議会制、代議制の危機→一番身近な主権者教育の場

〇金井
議会基本条例は自己目的になってはいけない
予算審議・総合計画をチェック
現実にお金を決めているという姿を見せるべき
「議長室がこんなに広い」というのは意味がない
お金が足りなければ、増税すべき
増税すればサービスに帰ってくる
住民は「無駄遣いしている」と思われている

〇新川
改革のための、前に進めていくための仕組みが必要
議会事務局には執行機関の1~2%の人員は必要

【山本の視点】

率直に感じたことは、文字通り「議会改革」が進んでいる地域と、「議会改革基本条例」を制定したものの、議会改革が進んでいるとは言えない市議会との差が大きくなっているように感じたので、個人的には相当危機感を持った。

 

また、「議会改革」により、開かれた議会を進め、市民の税金をどのように使っているのかの「見える化」を進め、議論の過程や、政策が決まるプロセスを「見える化」することも大切だと感じた。

 

今後は議員や会派における利害関係の対立を、単なる「多数決」で決めてしまうだけではなく、「論点」を明確にした上で、異なる意見を集約するための議員間で「議論」を重ね、そのプロセスを公開して行くなどの手法も求められるはずだ。

 

そして、そのための第一義的なところにもなるが、選挙で選ばれる議員自身が有権者から信頼される存在にならなければならないと強く感じているが、その議員がどのように頑張っているのかを、有権者にちゃんと理解していただく必要もあると感じている。