千葉市議会議員+千葉から日本を元気にする
山本直史です。
弘前市における視察報告テーマは下記の2つ
【視察テーマ】
①弘前型スマートシティ構想推進事業について
②弘前市駅前こども広場について
【弘前型スマートシティ構想推進事業について】
(Q)なぜこの「スマートシティ構想」を進めることになったのか?
(A)東日本大震災でガソリンや灯油の供給が一か月近くの間ストップしたことで、市外からではなく、市内でエネルギーを確保する必要性が顕在化した。
(Q)目指す方向性は?
(A)「豊かな資源を活用した世界一快適な雪国」を目指す
→新しい雪国型コンパクトシティモデル
→自立分散型エネルギーとICTを活用
(Q)具体的にはどのような事を推進している?
(A)
・再生可能エネルギー・未利用熱を活用した融雪の推進
→市民が雪の影響を受けることなく快適に生活や外出が出来る街を実現
・「下水道熱」「地下水熱」を活用した「地域の熱利用モデル」
・雪氷冷熱を利用した冷房設備導入事業(弘前市役所庁舎1階ロビー)
・岩木山地熱資源開発調査事業
・既存の廃棄物処理施設と新たなメタンガス発酵施設の組み合わせによる売電
・市庁舎へのEMS(エネルギーマネジメントシステム)導入事業
・公共施設への太陽光発電・蓄電池設備導入事業
・弘前市雪国対応型メガソーラー実証事業
→400世帯分の発電施設を民間企業と一緒に進めている
・弘前市街灯LED化ESCO事業
→全て一括で「弘前地区電気工事業協同組合」と10年間の定額サービス契約
・次世代グリーンエネルギー(水素利用技術)利用モデル構築プロジェクト
→水素を「つくる」「はこぶ」「ためる」「つかう」
→「下水汚泥から直接水素を製造する事業」(東北大学と連携)
【まとめ】
弘前市ではその他にもICT技術を活用した「スマート観光都市実現プロジェクト」などを進め、「弘前型スマートシティ構想」の名のもとに、国からの補助金を活用したり、大学との連携を積極的に進めている。
数多くのスマートシティ化につながる先進的な取り組みを、同時進行で進めていることがある意味で衝撃的であった。
弘前市がここまで「スマートシティ化」を積極的に進めているのは、現在の市長が東日本大震災を契機として青森県から「部長」を招聘するなどして、トップダウンで進めていることが大きい。
そして、この構想を進めるために、実際に事業策定を行い、計画を立て、市役所の各部局との連絡調整を進めているのが「スマートシティ推進課」だ。
この組織は弘前市の「スマートシティ化」を進めるために、部局横断組織的な位置づけとなっている。
加えて、弘前市役所だけでなく「産学金官」が連携して進めるために、数多くの民間企業や団体も巻き込んでいるところが注目される。
具体的には「弘前型スマート推進協議会」を設置し、4つの部会を設けている。
弘前市が進める「スマートシティ化」構想に賛同する127社・団体が現時点で参画しており、再生可能エネルギー部会/雪対策部会/街づくり部会/ICT関連部会がも設置されている。
この「協議会」の存在が、スマート化を進める原動力となっている、民間企業におけるビジネスチャンスの創出や、地元企業の活性化に寄与していることに加え、大学と民間企業との共同研究も促進されている。
率直な感想として、壮大なビジョンのもと、民間企業を巻き込みながらスマートシティ化を進めている弘前市は非常に先進的で挑戦的で、アグレッシブな印象が強い。
しかしながら、現時点では種まきから芽が出始めたところという印象だ。
その理由は現在がフェーズ2に入ったばかりの段階だからだ。
フェーズ1 2013年~2016年(先進技術の可能性調査)
フェーズ2 2017年~2020年(先進技術導入+革新技術の可能性調査)
フェーズ3 2021年~2030年(革新技術導入)
最後に、「最大の課題」は何かを聞いたところ、答えはズバリ「人口減少」とのことだ。
今後スマートシティ化をどんどん進め、予定通りの構想が実現したとしても、その時の弘前市の人口減少はさらに加速する見通しであるため、スマートシティ化は進んでも、人口減少傾向の中で行政サービスそのものをいかに維持して行くのかという根本的な課題が出てくるということであった。
今回の視察の成果をいかに千葉市政に生かすかという視点で考えれば、弘前市と千葉市とでは人口動態も立地も、取り巻く環境も異なるため、今回の学びをそのまますぐに生かすことは難しいと思えるが、その一方で既に弘前市で先行している「スマートシティ化にかかわる技術」で千葉市にとって必要な技術があれば、実証段階を経て確立された際には積極的の取り入れて行く視点が大切だと考えている。