千葉市議会議員+千葉から日本を元気にする
山本直史です。

 

昨日から本日にかけて千葉市議会「大都市制度・地方創生調査特別委員会」として大分市及び別府市に行政視察をさせていただいた。

 

既に始まっている「人口減少・少子高齢化・財政難」という状況下において、両市が2040年あるいは2060年に向けて、いかに持続可能な地域を実現するのか・・・。

 

今回視察させていただいた大分市、別府市それぞれの取り組みについて視察によって得られた概要をまとめたい。

 

今日は大分市における視察報告をさせていただきたい。

 

【大分市】(人口:479,000人)

視察テーマ「連携中枢都市圏構想について」


そもそも「連携中枢都市圏構想」とは何なのか?
少し長くなるが説明したい。

 

新たな広域連携として、基礎自治体間の柔軟な連携を可能とする仕組みが制度化されたもので、大分市も昨年度から別府市・臼杵市・津久見市・竹田市・豊後大野市由布市・日出町の8市町村でスタートしたのが「大分都市広域圏」というものだ。

 

説明をしていただいた際の資料の「はじめに」というところに「大分都市広域圏ビジョン策定の趣旨」については、次のように書かれている。


「我が国では本格的な人口減少・超高齢社会の到来を迎え、定住・交流人口を確保や企業誘致を巡る県内外との都市間競争の熾烈化、消費の減少による経済活力の低下、医療・福祉などの社会保障給付費の増大とこれを支える現役世代の負担増、既存の公共施設を介した公共サービスの需給バランスの不均衡等、多方面にわたり、私たちがかつて直面したことのないような深刻な問題や課題が顕在化することが懸念されている。」

 

確かにその通りだ。

そこで続きとして・・・


「この『大分都市広域圏ビジョン』は、今後、圏域全体の経済成長を見据えた7市1町の多様な資源、産業、人材の活用や、人口定住のために必要な高次の都市機能の集積に向けた環境整備、また住民の生活関連サービスの維持・向上を目指す有機的な連携等について大分都市広域圏の特徴と課題を示し、今後の具体的な取組みを推進するための広域計画として策定するもの」

 

とされている。

 

大分市を軸に、「7市1町」で共通の目的を定め、現状と課題を共有し、その課題解決に向けての具体的な事業を行い、毎年度その効果をしっかりと検証しながら、計画期間の5年間で当初設定した目標を達成するというものであると理解している。

 

個人的な感想として、この「ビジョン」については的確に現状分析がなされ、各市町村の強味や特徴なども踏まえて計画年度に落とし込まれた「具体策」も示されていることから、とても分かりやすく、良くまとまっているという印象だ。

 

しかし、僕が最も関心があるところは、このビジョンに描かれていることが「絵に描いた餅」に
なることは無いのだろうか?という点だ。

 

今回は千葉市議会の特別委員会として先進事例を視察させていただいている立場であるので「学ばさせていただいている」という立場ではあるが、これらの「策定された素晴らしい計画」
が計画期間内に必ず目標を達成するという、いわゆる「結果を出すための仕組みづくり」という点では物足りなさも感じつつも、現時点においては、ここは信じるしか無いな・・・というのが
率直な感想だ。

 

今回、僕が着目したのは「人口」という分かりやすいポイントだ。

 

現在の「大分都市広域圏(7市1町)」の人口は77万8000人(平成27年)だ。

国(国立社会保障・人口問題研究所:通称社人研)の推計もとに算出すると2025年になると現在よりも人口が3万4000人減少し、74万4000人になる見込みとなっている。

 

そこで今回、「大分都市広域圏ビジョン」を策定し、各自治体が確実に各種事業を実施する
ことで、2025年の人口を2万2000人減少の、75万6000人にするというものだ。

 

つまり、何も手を打たなけば74万4000人になると推計されている人口を、今回の取り組みによって75万6000人で食い止めるという計画という意味だと理解している。

 

つまり、手を打っても打たなくても、必ず人口は減少するものの、今回の取り組みを「7市1町」が一丸となって進めることで「12,000人」に相当する人口減少を食い止める効果のある計画を行うという意味だ。

 

【気になるポイント①】

~大分市の一人勝ちにならないか~

しかし今回の説明を受けて気になったのは、最近の人口動態傾向によれば「大分都市広域圏」を形成している「7市1町」の中で、人口増加傾向にあるのは「大分市だけ」で、他の「6市1町」は既に人口減少傾向にあるということだ。


そもそも人口減少傾向にある中で「12,000人」相当する部分の「増やす(減らさない)」役割を「7市1町」の各市町村に落とし込んだ場合、それは、一体どのように進めて行くのか?というポイントだ。

 

また、これは計画の成果が最もわかりやすい「人口」という視点で考えたのだが、この「大分都市広域圏ビジョン」という計画策定の目的は「人口」だけの問題ではない。

 

つまり「人口」以外の視点、つまり「産業」、「都市機能」、「住民サービス」という視点においても計画を「より効果の上がるもの」にするため、いかに「結果を出すための仕組み」を作るかがポイントになる考えている。

 

【気になるポイント②】

~結果のでる推進体制になっているか~

そこで気になるのが、具体的に落とし込まれた「31項目」の各種事業を7市1町が推進するにあたり、いかに効果の上がる推進体制を築けるかという点だ。

 

冒頭にも書いたが、この計画は「大分市」だけの計画ではなく、大分市を中心とする
「7市1町」による「広域圏計画」という意味ではこの「広域圏」には7人の市長と1人の町長がおり、当然のように、各自治体には市議会・町議会議員もいる。

 

それを平成28年~32年の5年間という計画期間の中で、それぞれの自治体がどれだけ自らの職員を配置し、予算をねん出し、各自治体が責任をもって事業を進めて行くのか?という点が明確に定まっていないと、それこそ「絵に描いた餅」になるリスクが残るという点だ。

 

【気になるポイント③】

~事業推進の際に必要となる予算の確保は~

 

説明によれば、この計画を推進するにあたり、国から大分市に対して初年度で2億円の交付税が降り、他の6市1町の自治体には1500万円の予算が降りてくるということだった。

 

つまり、この計画を推進するための「原資」は大分市2億円+6市1町(1500万円×7)で合算すると3億500万円ということになる。

 

自治体が各種事業を推進するためには「人員」と「予算」が必要になるが、その原資が、国の交付税措置によって確保した「3億500万円」で、計画年度内に目標を達成するための仕組みが構築できるのかというポイントだ。

 

まさか国からもらえる交付税という「予算額」だけで、すべてが賄えるとは思えないので、そうなると、各種事業を推進する際に必要となる「予算」をどのように確保するか、もしくはどのように「分担金」としてねん出してもらうかなど、事業を取り組む際に必要な経費と、その事業によって得られる「成果」の検証をしっかりと行わないと、結果的に計画が「絵に描いた餅」」になりかねないという点だ。

 

【まとめ】

今回の大分市からの学びは本当に大きいものがあった。

未来に向けて大分市が「連携中枢都市圏構想」を掲げ、既に近隣市町と合意し、一緒になってお互いの強みを補完する形で具体的な「広域連携」を進める体制を構築している点だ。

また、それが総務省から平成27年に選定されている。

 

これは我が千葉市においては、まだ当面は問題にはならないかも知れないが、首都圏にある人口97万人を擁する政令指定都市であっても、このまま未来永劫「単独」の地方自治体で行くのか、それとも大分市のように近隣市町村と「連携」を深めていくのかということを、一度立ち止まって考える必要性が出てくるのではないかとも考えている

 

そして、もっとも大切なことはこのような「計画」を「絵に描いた餅」にしないための工夫や、各自治体がそれぞれ結果にコミットする「仕組み」をいかに構築するかというところだろう。

 

今年の3月に策定された「大分都市広域圏ビジョン」の計画期間が終わる、平成32年の時点で、策定されたいた通りの結果になることを信じながら、そして、これから具体的な事業が始まる途中経過についても積極的に注視させていただきたい。