【東京圏の介護危機と高齢者移住】

千葉市議会議員+千葉から日本を元気にする
山本直史です。

民間の研究機関「日本創成会議」は東京など1都3県の
介護への需要が今後10年で45%増え、施設や介護士
などの不足が深刻になるとの試算を発表しました。

これは東京圏と比べれば高齢化が進んでいる地方は介護
需要の伸びが相対的に低いため、介護の余力がある地域も
あるので「東京圏の高齢者の移住」を進めるという対策
の「柱」としての提言です。

日本では第2次世界大戦後にベビーラッシュが起こり、
1947年から49年までに最高で年間269万人の
子どもが生まれました。

その方々がいわゆる「団塊の世代」ですが、この団塊の
世代が例外なく2025年には必ず75歳を超えます。

75歳と言えば後期高齢者ですから、若年世代と比べると
相対的に病弱になりやすくなり、入院や介護が必要になる
割合が増えるのは仕方ありません。

また、この75歳以上の人は東京圏だけでなく日本全国で
増えて行きますが、首都圏の1都3県で見てみると、現在の
397万人から2025年には572万人と大幅に増える
ので介護施設の大幅な不足が顕在化するわけです。

日本創成会議では「東京圏では10年後には入院患者が
20%増え、介護施設の入所者も45%増加する」と
見込んでいます。

入院患者が2割、介護施設入所者が5割近く増えるという
試算ですが、その一方で東京圏は特別養護老人ホームの
待機者が多く、2014年の調査によると、東京都では
4万3千人、神奈川県では2万9千人で、千葉県は1万
9千人、そして千葉市は2千人となっています。

入院や介護施設への需要は増えつつも、施設に入れない
待機者が同時に増えるという構図を予測しているわけです。

介護になる人が増えれば病院のベッドに入る高齢者も増え
るので、そもそもの病院の入院機能がマヒし、救急車が
患者をどこにも運べないという事態も想定されます。

日本創成会議では、ロボットの活用などで介護人材への
依存度を下げたり、効率的に医療介護サービスを受けられる
ような体制を作ったりといった提案をしていますが、最も
強調しているのが東京圏の高齢者が地方に移住するための
環境整備であると提言しており、その「地方移住」の受け
皿として想定しているのが「日本版CCRC」です。

※CCRC
Continuing Care Retirement Communityの略で、継続して
ケアを受けることができる退職者のコミュニティーの事

しかも、政府はこれから顕在化する人口減少への対策として、
大都市圏からの移住の促進を掲げ、この対策のど真ん中に
高齢者を対象にした「日本版CCRC構想」を置いています。

「構図」から考えれば、千葉県は東京圏の一都三県のうちの
一県なので、いわば千葉県のこれから増える高齢者の受け皿を
介護に余裕のある地域へ移住してもらうという考え方です。

本当にそんなシナリオ通りにうまく行くのでしょうか?

この構想は千葉県の県都である千葉市にとって見れば、
とても微妙な構想とも言えます。

逆に言えば、「千葉市の高齢者にとっては介護施設が不足して
いるため、人生の最期まで千葉市で暮らすことができない」と
いうことをあらかじめ想定している構想だからです。

それでは、具体的な「CCRC」とは一体どのようなものなの
でしょうか?

高齢者がまだ元気なうちから高齢者向け住宅に住み、地域の
社会活動にも参加するというイメージで、やがて介護が必要に
なったら訪問介護や往診などを受けたり、施設に入ったりする
というものです。

そして、日本創成会議は今回、41地域を介護が必要な
「高齢者を受け入れる余力のある地域」として公表しましたが、
一方的に「受け入れ可能な地域」と一方的に言われた側も、
これまた微妙な感じなのではないでしょうか。

外野から「高齢者を受け入れる余力がある」と言われても、
現時点でも施設への入所待ちの高齢者を抱えている自治体
も多いでしょうし、そもそも介護する人材が不足している
地域も多いと思います。

この「元気なうちから高齢者向け住宅に住む」という考え
方を頭から否定するわけではありませんが、現在自分が
住んでいる地域からまったく知らない地域に「移り住む」
ということが本当に進むのかが疑問です。

受け入れ側の自治体も、最初は介護の不要な元気な高齢者でも、
自然の摂理としてやがては、いや結果的に若年者よりは早い
スピードで介護が必要になる方を積極的に受け入れるという
ことに二の足を踏むのが当然なのではないかと考えています。

理想的には地域包括ケア体制を進めて、住み慣れた地域で
最期まで安心して暮らせるように、在宅介護や在宅医療を
充実させて、施設に入らないで暮らせる体制を充実させる
ことが重要です。

住む場所を個人に強制することはできませんから、最後は
個人の判断で、「自分の人生の最期をどこで暮らしたいのか」
という判断のもと、一つの選択肢として移住という選択肢が
あっても良いと思います。

そのためにも、高齢者の介護の問題を考える時には、
担い手となる人材の確保も考える必要があり、日本が
移民政策を進めないのであれば、介護ロボットの大幅な
普及か、時間はかかるが今から少子化を止める以外に
道は無いと考えています。


※写真は我が団地の管理組合総会です。
(ブログ記事とは関係ありません)