迎角分布 | やまめ工房の日記2010+α

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翼端上反角付の主翼のスパン方向の迎角分布を考えてみます。
スパン1m、翼弦10cmの矩形翼を想定します。
翼端から200mmの位置から翼端上反角が30°付いているとします。(図参照)

迎角の影響する要素としては

1、上反角の幾何学的ねじり下げ
2、上反角による翼端方向への流れの偏向
3、誘導吹きおろし

影響の大きな物はこの3つでしょう。
特に2と3は実際には区別が難しいので2の翼端方向への流れとしてまとめて扱いましょう。

簡単な計算をしてグラフを作成します。

中央パネルはフラットですので幾何学的ねじり下げは有りません。
翼端パネルは30°の上反角が有りますので迎角に比例してねじり下げを持つようになります。
中央パネルが迎角10°の場合、翼端パネルは1.8°ぐらい迎角が小さく成ります。

下から空気が当たる(迎角が+の場合)翼端部分は上反角により翼の下側を流れる空気は翼端方向に流されます。
これは空気がより流れやすい方向に流れるだけというごく当たり前の動きです。
物体があれば空気はそこを避けるように回り込む形を取ります。
飛行機でも同じ事で飛行機という物体を回り込む際に翼端では外向きに空気が流れます。
上反角が強いとますます外側に回り込みやすくなるのは感覚的に解ると思います。


この翼端への流れの向きが翼端の下面で20°、上面で0°として(上下の面で気流の向きが異なる)平均を取って10°外向きに流れると仮定して計算します。
この気流の影響範囲は翼端翼弦の2倍の範囲として翼端から20cmの範囲で距離に比例して小さくなると仮定します。

以上2つの要素を加えてスパン方向の迎角分布をグラフにした物が上のグラフになります。
翼端方向への偏向がいかに迎角を減らすのかが見て取れます。

FF-HLGのような強い翼端上反角では翼端の迎角は見た目の半分程度になると考えても良いのかも知れませんね。
翼としてあまり効率が良いとは言えません。
結果として中央パネルの空気力負担率が大きくなるので自然と揚力は楕円分布となる傾向が有ります。
翼端付近の揚力勾配が緩やかになるため誘導渦の減少には貢献していると思います。
しかしながらあまりにも中央パネルとの迎角差が大きいので滑空比や沈下率といったポテンシャル面で不利な事には変わりは有りません。


一見翼端パネルの迎角が小さく成るので翼端失速は問題とならないと考えがちです。
しかし失速の要因は翼上面の空気の完全剥離とすれば幾何学的ねじり下げ分(2°未満)しか効果が期待できません。
上面の流れは翼端でもほとんど翼端方向に流れる傾向が無いので上面の剥離に関しては中央パネルと大きな差は無いと言えます。
実際には翼の上面がいつも綺麗に流れているとは考え難く剥離と付着を繰り返すような事も多いと思います。
揚力は下面の正圧による所が大きく、上面の負圧分はおまけ程度と考えた方が低レイノルズ数では当たっているような気がします。
上面がそんな訳ですから、下面の空気の流れる向きが外に向かえばほとんど揚力が発生しないと考えても良いでしょう。
強い翼端上反角を持つFF-HLGでは翼端は揚力負担せず、あくまで運動安定上必要な物と割り切って考えた方が良いでしょう。