昔から思うことがある。  


それは  


『過去に自分が誰かを傷つけたことは、 

 

いつか自分に返ってくるにちがいない。』  


ということ。 


  


それは同じ形か、それとも形は変わっているかもしれないけれど。 

  

人間に与えられた幸せは平等であると思う。 

 

幸せではない、という人は幸せに気付いてないだけだとも思う。  


『きれい事』、そうかもしれない。 


  


万事が上手くいくことなんかは稀だ。  

 

「すべてが上手くいったっていいじゃない。」  


と、ある友人が言った。  

 

そう、そうなんだ。  


けれど、どこか不安で、幸せが不安に思うことがある。 



 
いつかは失ってしまうかもしれない。 

 

いや、長くは続かない。  


時間は留まることを知らない。  


 


明けない夜はない。  


やまない雨はない。 


けれど、今すぐにでも己に禍が返ってきたならば、  


私は笑っていられるのだろうか…。  




end
 


表ブログに書けないことを、ここで書いてしまいそうで、 
少し怖い。 

明と暗…。 
 
陽と陰…。 
  


http://ameblo.jp/life-in-kyoto/  





200X年7月某日 
 
終電にやっとのことで乗り込むことができた。
席について、ほっと一息つく。 

 

同僚に無理矢理押しつけられた残業を片付けていたのだ。 
そうやって、いつもみんなにいいように利用されている。 
分かってる。 
でも、断れない自分。
悔しいけれど、そんな自分が嫌い… 
電車の窓に映る自分の姿がとてつもなく醜いものに見える。 



楽しみにしていたハーレークインの
(たいていどこかの王子様かなんかに見染められてハッピーエンドになるという話) 
新刊本を鞄の中からいそいそと取り出す。 
表紙は手作りのピンクのブックカバーが掛けられている。 
隣に座っていたカップルがこちらを見てクスクスと笑い声を立てている。
気にしない。 
そんなことは、日常茶飯事なのだから。 


昔からそうだ。 

この容姿…。 

女の子なのに、長身で、幅まで大きいとくればそうでなくとも目立つ。 

それなのにこんな顔だ。  

挙げ句の果てに名前はありす…。 

小学生の頃からいじめは始まり、 

何かと言えば『』呼ばわりされていた。 

『不思議なのありすちゃん』…。 

それに、アニメオ○クとくればより一層馬鹿にされた。 


 

でも、不登校にだけは絶対にならなかった。 

それはせめてものプライド。


 

一駅、二駅と過ぎる。 

会社帰りのサラリーマン、OL、学生…。 

空席が目立つものの、それなりの人数が乗車している。


 

 
ある駅から、大声で叫びながら初老の男性が乗ってきた。 
酷く酔っているのか、すでに呂律が回っていない。 
空いている席には見向きもせず、 
人が座っている所へ来ては口汚く罵っていく。 
ピーンと張りつめた空気が車内を漂う。


 
『嫌だ…。 
 絶対に私も何か言われるはずだもの。』  



立ち上がって車両を変えようとするものの、 
足がすくんで動けない。 
先ほどまで私を笑っていたカップルは寝たふりをしている。 
車内のほとんどはうつむいて知らぬ顔だ。  
言い返す人など、誰もいない。  



極度の緊張によって、本を握りしめた手がうっすらと湿り気を帯びる。 
男はつり革にゆらゆらとぶら下がりながら、移動を続けている。 
「イチャイチャしやがって!ぼけがTYhgb…」 
隣のカップルに絡み始める。


 
次の駅に到着した。 
扉が開き、数人が乗り込んできた。 
ふっと顔を上げた瞬間、男と目が合ってしまった。

 

『しまった…』 

 

もう遅い。 
男は私が手に持っていた本を強引に奪い、 
大声で読み始めた。 
「『その時、キャサリンはアレンの胸にしがみつき、 
嫌、行かないで!どうして、私を置いて行っておしまいになるの!! 
と…』、YGJjhっ。 
なんやァ、こりゃ、おい、そこのデブ、おい、ブス!返事できひんのか? 
豚はお口が聞かれへんかhkyc??しっしっし。」 
と罵り、手に持っていた本を私の足下に投げつけた。

 

「おい、何かしゃべれや…ウイック。 
しっかし、ぶっさいくやのーjgyvん、。」 
と目の前から離れようとしない。



『もう、止めて…』 


目に溜まったを堪えるのが精一杯で、 
言葉もでない。 
膝の上に握りしめた拳の上に、一粒のがこぼれ落ちた。 



「おい、もう止めろや…。」 
と言って、若い男性が男の右腕を掴んだ。 
「なにすんじゃ!!!放せ、ぼけ!!!」 
男は抵抗するが、びくともしない。 
自由のきく左腕で若い男性を殴ろうとした。 



その瞬間、不意に立ち上がってしまった私の顔面に、 
男の拳が命中した。 
パラパラと眼鏡のレンズが飛び散った。 
意識が飛びそうになる。

 
 
若い男性が男を羽交い締めにした。 


 
騒ぎを聞いて駆けつけた車掌二人と、若い男性に取り押さえられた男は、
ブツブツ文句を言いながらもようやく大人しくなる。

 
 
あまりに衝撃的で、私は頬からが流れていることに、 
近くにいたおばさんから指摘されるまで、全く気が付かなかった。 
おばさんは、ハンカチを手渡してくれ、その後、調書をとられることになった私に 
最後まで同行してくれることになる。

 


先ほどまで私を笑っていたカップルが、 

さすがに哀れに思ったのか、 

割れてしまった眼鏡の破片を拾い集めてくれた。

 

駅長室で、私は傷の手当てを受けていた。 
すると、先ほどの若い男性が神妙な面持ちで、 
こちらに近づいてくる。  

背が高く、日に焼けた健康的な肌。 

『今日読んでいた小説の主人公みたいだわ…。』 

うっとりと彼を見つめてしまった。 

ふと、我に帰る。
私は恥ずかしくなって、俯いてしまった。 


 
「大丈夫ですか?酷いやつでしたね…あと…」 
私が男に投げつけられた本をすっと手渡してくれた。 

「汚れちゃいましたね…。」 

と、カバーの黒ずみを申し訳なさそうにみつめている。 

「だ、だいじょうぶです。 

ほんと、あ、有難うございました。」 

私はそう言うのが精一杯だった。 

「いえ、とんでもない。 

早く、お怪我、治るといいですね。」 

そういって、若い男性はにっこりと微笑んだ。  





ウィーーーーーーンンンン。

 

帰宅と共にパソコンを開くことは、 

もう何年も前から日課となっている。 

ただぼんやりと、人のチャットを覗くだけのため。 

暗い。 

自分でもそう思う。  

けれど、今日はいつもとは違う。 

彼の笑顔が、脳裏に焼きついて離れない。 

思い切って書き込んでみることにした。 



777「今日は最悪だったけど、素敵な人に出会いました…」  

(チャット中…) 



 

次の日から、ひたすら待つ女と化す。 

同じ電車に乗れば、いつか出会えるにちがいない。 

そう思って。 

けれど、3日経ち、4日経ち… 

さすがに私は諦めてしまおうと5日で最後にした。 

結局、彼には会えずじまいだった。  



もう治りかけている頬の傷がシクシクと痛む。 

なぜ、あの時、お礼をしたいと言って、 

連絡先を聞かなかったのか。 

自分を責める。

  


777「もう、やっぱ、諦めます…」 

(探してみなよ。あきらめるなよ!!と、 

エールをもらう。)




一週間経ったその日、 

送別会で、いつもより遅い電車に乗った。 

終電の一本前だ。 

ほんのり酔っ払って気分がいい。 

『ああ、こんな時に私のナイトが現れてくれたら…』 

妄想がゆきすぎる。 


 

ぼんやりと、ホームを見つめていると、 

どこかで見覚えのある顔を見つけた。 

   

彼だ!!!!!! 


胸の鼓動は早鐘のように打っている。 

ドアが開く。 

彼も、私に気がついたのか、 

一瞬はて?という顔をし、 

次の瞬間、またあの笑顔で近づいてきた。 



「この前の…」 

「は、はい、そ、そうです、、、。」 

「頬の傷、治ったんですね。」 

また、微笑んだ。 

一瞬クラりとしながら、なんとか答える。 

「はい、お、おかげさまで。」 

「よかったですね。」 

沈黙がながれる。

 


反対側の窓に二人並んだ姿が映し出される。 

彼の隣で座っていると、 

普段大きく映る自分の姿が、 

心なしか小さく見えた。 



けれど、二人はどうしても不釣り合いに見える。 

自分の容姿の滑稽さに、心が沈んでいく気がした。 



そう思うと、直視できなくて、さっと目を伏せた。 


 

『だめだ!!! 

ここで、話さなければ、もう二度と会えないかもしれない。

あんなに会いたかったんだもの…』  


勇気を振り絞って言葉を捜しだす。 

 


「あ、あの時は本当に有難うございました。」 

「いえいえ、気にしないで下さい。 

なんか、ああいう奴いると、見過ごすとかできなくて。」 

ハハハ、と、照れたように笑う。 

「あ、何か、何かお礼を…」   

「いえ、ほんと気にしないでいいですから。」 

でもほんとうに何かないかと思い、 

鞄の中をしきりにあさる。

ふと、今日ゲームで当てた景品を 

とりだし、おもむろに彼に手渡した。 



「これ!、じゃあ、これだけでも。」 

そう言って、私が取り出したのは 

映画のペアチケットだった。

 

 

『逆○ナイン』 


 

彼はそれをしげしげと見つめながら、 

「俺、これ見たかったやつですよ!」 

と、少し興奮気味に話す。

「じゃあ、ぜ、ぜひ、ご覧になって下さい。」 

「え、でも、これペアチケットですよ…」 

「いえ、い、いんです。 

どなたかと一緒にご覧になって下さい。 

せっかくですし。 

お礼といっては、ほんとに、こ、心ばかりですけど。」 

 


少し、彼は考えこんだあと、 

「じゃあ、お礼にこれ、付き合ってくれませんか?」 

と、チケットを一枚私に握らせる。 

始め、全く意味がわからず、ぼんやりしていると、 

矢継ぎ早に、 

「俺、駅もう次なんで、とりあえず名刺渡しておきます。  

いい日にち、また連絡してください。 

メルアド、書いてあるんで。」 

そう言って、名刺を手渡してくれた。 

「じゃあ、また。」 

にっこり笑い、彼はホームに消えていった。  



やっぱり、意味がわからず、ぼんやりしてしまい、

結局、一駅乗り過ごしてしまっていた。 


 

名刺には彼の名が書いてあった。

彼の名はItou Daiki。  



『ID!??』 

 

 

ありすは今後彼に連絡できるのか?

夜な夜なチャットで恋愛相談室が繰り広げられるのでした。 


続く…(続きません)。  




end 






あとがき 


☆表ブログに勢いで書いたもんです。 

http://ameblo.jp/life-in-kyoto/   


その頃ちょうど「電車男」がサークルで大流行。


しかし、どうも男目線の話なんで、 


女目線で書いてみた次第であります。 


お蔵入りにすんのはもったいない~っと 


言われたので、ここで公開。  


若干、ネタいりで。www