「お前、大学へいけ」
「入れないよ」
「なぜだ」
「学校の試験は、いつも40点とか50点だから」
「どうするつもりだ」
「就職」
「何をやるんだ」
「何でもやる」
「お前、人の話を真面目に聞いてるのか」
「聞いてる」
「大学へいけ」
「大学くらい出とかないと、あとで損するぞ」
これは角川書店発行の小説
*『ボビーに首ったけ』
にてバイクとサーフィンが大好きな主人公の「ボビー」こと高校3年生の野村昭彦が自身の父親から将来の進路について説教をされているシーンです。
『ボビーに首ったけ』の作者は片岡義男先生、1970年代から80年代にかけて当時の若者、特にライダーとサーファーから圧倒的な支持を得ていました。
今風に言いますと「カリスマ作家」といったところでしょうか。
この作品が世に出たのは1980(昭和55)年、ボビーの父親による前出の説教からわかるように「学歴主義社会」そのものの時代背景でした。
『ボビーに首ったけ』、5年後の1985(昭和60)年にはアニメ映画化されましたが
主人公・ボビーの声を担当したのは野村宏伸さん
バブル期に大ヒットしたフジテレビ系の『びんびん』シリーズにてあの「トシちゃん」こと田原俊彦さんと
「せんぱぁ~い!」
「えのもとぉ~!」
のやり取りで人気を得た方ですが、この当時は角川映画の若手常連俳優として活躍していました。
人気小説とタイアップした手法により1980年代に飛ぶ鳥落とす勢いだった角川映画、女優では薬師丸ひろ子さんや原田知世さん、渡辺典子さんの
*角川3人娘
が映画のヒットに貢献していましたが、俳優では野村さんや真田広之さんの活躍が目立ったものです。
我々団塊ジュニア世代はまだ小中学生、
「トシちゃんのバックダンサー」を経て薬師丸さんと結ばれた某朝ドラの荒巻太一、いや古田新太さんがまだ無名だった頃の出来事でした。
その某朝ドラは現在BSプレミアムにて再放送されていますが、私もほぼ毎日観ていますよ。
皆様方ご存知の通り、90年代初頭にバブル経済が崩壊し「平成不況」に突入するわけですが、それと同時に学歴主義社会も崩壊への道を辿るようになりました。
実際問題として我々団塊ジュニア世代の場合は早く社会に出た同世代の方々に所謂「勝ち組」が目立ちます。
今や大卒の非正規社員やフリーターは当たり前の存在、
現に私立大学の4割、私立短大に至っては7割の学校が定員割れ状態となっています。
確かにバブル崩壊以降は予測不能な社会となりました。
しかしそれは学歴よりも真の実力を持っている方々のほうが社会的に認められる世の中に転換した証拠でもあります。
ボビー君もあと10数年遅くこの世に生を受けていたならば望み通りの進路を歩めただろうに…、と思う度に何とも言えない歯がゆさを感じます。
現在の社会状況からしてさすがのおとっさんも
「大学へいけ」
とは強要しないでしょう。
ただ、おとっさんがボビー君に
「大学の自由な面」
を教えていたならば彼は絶対に大学進学を目指していたでしょう。
何故ならば大学というところは学校生活の「コツ」さえ掴めば大好きなツーリングとサーフィンに思い存分打ち込める環境ですからね。
おとっさん、要領悪いッスよ(笑)。