カサカサしたてのひら
多分ハンドクリーム塗っても塗っても、毎日家族の食事を一人で担ってたから、カサカサだったんだと思う。
僕の故郷、吉富町は、福岡の中でも田舎の方で田畑が広がり川が流れる綺麗な街です。
僕の家は当時炊事場の洗面台の蛇口からは水しか出ませんでした。
たぶん。
家族7人、猫1匹。
冷たかっただろうな。
大変だっただろうな。
今思えばどうして「手伝うよ」の一言も出なかったのかと、幼い僕に腹が立つ。
でもそんな素振りを全く見せなかったから、そう思えなかったのかもしれない。
ごめんね。おかん。
今日はバー営業でグラスを洗っていました。
冷たい水でグラスを流し続けるとキーンとした痛みが手を通じて頭の方まで感じます。
僕は肌が弱いから、すぐ手が荒れてしまいます。
痒くなって、ひび割れて、水ぶくれが出来て…。
福岡時代はその度に皮膚科にお世話になっていました。
食器洗い用のグローブで洗ってみたこともあったんですが、微妙に感覚が違うのか、シャンパングラスやワイングラスなど薄いグラスの加減が難しい。
だから直で分かるように僕はいつも素手でやってます。
極力、仕事の演奏に支障がない範囲でですが。
こうして家に帰り、ハンドクリームを塗ったカサカサなてのひらを見るとあの日のことを思い出します。
武田鉄矢さんの朝のラジオが毎日流れ、僕と弟は一緒に朝ごはんを食べながら、顔を上げると母親の背中がある。左には親父が新聞広げてご飯食べてて、毎日が始まる。
そんな風景が今でも瞼に焼き付いています。
もうちょっとがんばってみるから。
神様
ほんのちょっとチャンスを下さい。