オッペンハイマー(2023年 米国 ユニバーサル)

米国アカデミー賞作品賞受賞作品「オッペンハイマー」。
 
「原爆の父」とよばれる米国の物理理論学者オッペンハイマーの自伝映画で
世界で唯一原爆を投下された国日本では、公開は未定という状態のまま、
2023年に公開され、世界的に大ヒット。
 
世界中の映画祭で賞をとって、
アカデミー賞授賞式をふくめた2023年の賞レースが終わる時期を見定めて……
なのか、2024年3月29日に日本公開が決まりました。
 
日本公開に際して、忖度に忖度をされまくった作品です。
やっと見ることができました。
 
これは、ちゃんと見ておこうと、映画館(IMAX)で鑑賞。
 

 

 

 

  満席、満席、満席!

 

公開当日はどこも満席で、席が取れませんでした。
それから数日、満席、満席、満席で。
 
相方がやっとこさ、ネットで空いてる回を捜して、
4月に入ってから予約をとってくれました。
 
「昔、コンサートを発売日に電話をかけまくってチケットを取った時の、
あの感じで、何回もチャレンジしてやっととれた」
ということでした。
すごい人気です。
 
 
私が見れたのは4月に入って、それも朝の8時20分開始の回でした。
そんな時間に見る人いるの?と思いながら映画館に行きましたけど、
20代の若者から年配の方まで、ぎっしり!
満員御礼!
 
 
日本人なら「原爆」について、どうしてどうして米国が日本に原爆を投下したのか、
遺伝子レベルで被曝者の子供にも影響が出るとされている爆弾を開発するのはまだしも、
どうして実際に使用してしまったのか、
「どうして?」をたくさん、持ってる人が多いと思います。
(いや、世界中の人がそうでしょう)
 
だから、これは「見る!」という人多いのは予想してましたが、朝8時ですよ?!
という私も、朝8時鑑賞組。
 
私とおなじで「見る!」と決めて、ビシッ!と見に来た皆さん、お疲れ様です!
ってなもんです。
 
超満員!
(って、言葉変ですね。定員に達したのは「満員」、「超」はいらんだろ!という)
 
 

 

  ノーラン監督、自分の子供に原爆について知ってもらいたかったから作ったんだって
 

 

それで、映画を作ったクリストファーノーラン監督も、いろいろ考えた人なんですよね。
私たちとおなじで。
 
「私たちとおなじ」と気やすく書いてしまいましたが、
私は、アメリカ人って日本人と考えをかなりのハイレベルでいろいろな考え方を共有して、共感出来ている人達だと考えています。
 
いろいろ、理解不能な面もありますが、
私はアメリカ人はオープンマインドで、基本的に理解し合える人達としてフランクに付き合えます(英語下手ですけど)。
アメリカ人って表情で、考えてること理解できます。
 
以前、世界旅行博に行っていろんな国の方とお話をしてみようと挑戦したことありあすが、
アフリカの国の方は、一部ちょっと表情が分からないとか、考えてることが分からないとか、ありました。
ロシアの人も笑顔を見せないと聞いたことがありますが、ちょっと表情が読めなかったです。
 
アメリカ人はほぼほぼ、判ります(悪だくみしてる人でなければ)。
私のオープンマインド、オーバーアクション系のコミュニケーションは、子供のころ米国人の子供と交流パーティをやった
結果、「これぐらいオープンマインドにすれば、人は必ず理解し合える」というのをがっつり学んだせいで、
今も、ちょっと大げさな、フレンドシップベイベーなのかもしれません(学生時代に男子同級生に「よく話かけてくるから、僕のこと好きなのかと思ったのに、みんなとお友達系の人だったんですね。shockでした」と言われたことあります)。
 
本題に戻ります。
それで、ノーラン監督、自分の子供さんと原爆の話してたら「原爆より環境問題の方が深刻だよ」と言われたんだそうで、
「えっ!今の子供たち、原爆のこと、興味ないの?!」とビックリして、
ああ、子供に原爆のこと教えてなかったと、この映画作ったんだそうです。
 
ああ、判る!
判ります!それ!と思ったんですよ。
 
 
 
 
 
 
 

 
日本は世界で唯一の原爆による被ばく国で、
一瞬で数万人の人が死んで、爆心地の近くは、そこにいた人が消えて、何も残ってないとか、
すべて一瞬で燃え尽きて、何も残ってない、骨も残ってないし、そこにいたことすら分からないとか、これは、「戦争」という国家レベルの「決闘」だから、決闘のルールから外れてる案件。

 

原爆とか空爆系のやつって、今の戦争でもそうだけど、「一般市民巻き込んで、ルール違反じゃないの!」というのは第二次世界大戦当時、いやそのもっと前の戦争でも「市民巻き込むな!卑怯だそ!」という論争はあって、で、だけど、戦争をしてる側の人にとっては、「戦争してるんだぞ!戦争!」「ルール無用でやられるから、やりかえすんだよ!」という風になってしまって。
 
やあね。
戦争って。
 
「もう止めましょう」って、いっせーのせー!でストップしてもらわないと、
ずっと戦争してますね。
どんどん人を殺し合っていく。
 
どこまでやるんだろう…と考えたら、いつまでもやってるよね。
No!No!No!

 

  原水協や原水禁の皆さんの努力は世界に伝わってる

 

原水協や原水禁との関係が、

この映画の製作者たちと関係が悪いかといったら

そういうわけではなくて、相互理解が得られてるようです。

 

原水協のHPには

『オッペンハイマー』という作品について、ハリウッドの俳優やアメリカの文化人たちが

「『オッペンハイマー』は、核兵器の起源、マンハッタン計画の歴史、その後のロバート・オッペンハイマーの軍備競争とそれまで以上に強力な兵器の開発への警告などを描いている。オッペンハイマーが我々に警告したのは正しかった。」

 

「 私たちは世界の指導者たちに核兵器を歴史の過去のものとするよう、そして明るい未来を創るよう要求しなければならない」いう声明文「公開状」を出したことが、きちんと翻訳されて掲載されてます。

 

 

 

それで、オッペンハイマーを見た世界中の人達が今考えてるのは、

声明文の中にありますけれど、

「いま、1万4千発の核兵器が9つの国の手中にある。

 あるものは1945年に広島と長崎を破壊したものよりも80倍の威力を持っている。」

「私たちは世界の指導者たちに核兵器を歴史の過去のものとするよう、 そして明るい未来を創るよう要求しなければならない。 」ということです。

 

一緒に平和な未来を目指して前を向いて考えていくスタンスになってるんですね。

こういうの素敵だよなあ。

 

 

最近ではAIによる兵器開発があぶない!という議論が、

21世紀では軍縮の議論に加わってます。

映画『AIー創造者たち』はまさに、そのことをテーマにした作品でしたね。

 

核よりAIの方がヤバいでしょ!というか、

「人を殺せ」とプログラミングされたAIが、いろいろ判断して、人の数がゼロをするために、自動計算して、核のボタンをおしたらどうする?」的な。

コンビューターは、地球から人類が滅亡するまで、実行するという。

 

 

 

 

 

 

 

  広島で公開された時の感想を、日本のテレビ局が取材

広島でオッペンハイマーを見た方の感想をbbcがインタビューしてます。

 

私が広島の人がオッペンハイマーを見たエピソードで一番印象に残ったのは、

「✕」で広島の映画館でオッペンハイマーを見た人がポストでした。

 

左腕さんいう方のポストです。コピペしてきました(無断で…)

 

オッペンハイマー 今住んでる広島の映画館で見たんだけど、隣におばあちゃんが座ってて途中から泣き始めて、最後までずっと泣いてて、怖いくらい泣いてたので終わってティッシュをあげた。被爆二世で途中から被爆した家族を思い出して泣いてたらしい。映画はよくわからなかったと爆笑してた。

 

 

これなんですよ。「辛すぎて、涙が出てきて、ずっと泣いてる。怖いくらい泣いてる」。

泣くことしかできない。

PTSD後遺症です。

 

どうしようもなくなる。

 

 

原爆2世って被曝者じゃないしょ!という方もいらっしゃしますが、

原爆2世って、「被曝者って遺伝的にアレでしょ?うちの子とは結婚させません」とか、「近寄るなよ」的なことを言われたり、いろいろイバラの道があったり、原爆症に苦しむ親御さんたちのお世話もしなくちゃいけないし、ヤングケアラー的な人生を送っていらっしゃったり、原爆症は白血病とおなじような症状が出るそうですから、家族は大変ですよ。

 

 

何故?原爆2世の私だけが経験した事実

 

沖縄にもいます。戦争の後遺症に苦しむ人達。

 

沖縄戦の体験者のお爺ちゃん・おばあちゃんたち。

戦争が終わっても毎晩悪夢にうなされて、フラッシュバックに苦しんで、目の前で爆死していった家族のことが忘れられなくて。ウッとなって、下を向いて動けなくなってしまう人達が、いました。

死ぬほどつらいのを耐えてる。

 

 

家族の血を浴びて、血だらけになって自分は生きてて……という悪夢のような瞬間のこと、人って忘れようとしても一生忘れられないんですね。

 

過去の辛い体験が頭にこびりついて、常に苦しんでいる家族がいたら、夢にうなされて、急に涙を流して泣いてるお爺ちゃん・おばあちゃんのこと、とっても心配だし、お爺ちゃんおばあちゃんから「いやちょっと戦争のこと思い出したらくるしくなって…」といわれて、救心を飲みながら、ちょっと落ち着いたお爺ちゃんとお婆ちゃんの傍らで落ち着くまで手を握って、そばにいるんですよ。

 

それで、落ち着いてきたら傾聴をするんです。

話を聞いてみたら、おぞましいスプラッターな殺戮の現場の体験談で、そりゃー話を聞いた子供たちもトラウマ発症して、不眠症になったり、人間不信になったり。さらには(米兵がレイプされた)とか、(日本兵にレイプされた)とか、それよりも(イラついてる日本兵に「ジャマだ!」と殺された)とか、米兵に殺されるならまだしもね、そういうところ目撃してる人達の、トラウマって、計り知れないんです。聞く方もしんどい。

 

沖縄だけじゃなくて、戦争が起きてる国、世界中のあちこちで、人が苦しんでる。

戦争が終わっても、それを乗り越えるのに、すごく時間かかるみたいです。

 

私が知ってるおじいちゃん・おばあちゃん、戦後50年過ぎても、「テレビで戦争のニュースを見たら、心臓がバクバクして眠れなくなった。ちょっと病院に行って、睡眠薬もらってくるわ」とか、そんな感じでした。

 

私も、沖縄で子供のころ、不眠症だったり、幽霊がみえちゃったり、

沖縄戦に対する恐怖で、軽いノイローゼ状態になってました。

 

だから、沖縄観光に来て「沖縄戦の話聞きたくない」という人が出てくるのも理解してます。

 

だから、世界中から戦争をなくした方がいいし、戦争を続けてたら原爆も水爆を使いたくなるけど、そしたら人類滅亡するから、もう戦争止めた方がいいよ!と一生懸命いう人たちが出てくるんです。

 

で、それはなるべく声を大にしていった方がいい。

「沖縄戦の話なんか聞きたくない!」という人は、たぶん、戦争がはじまったら戦争が耐えられない人達なんです。

我慢して、戦争の話を聞けた人は、聞けるだけの耐性がまだあったということです。

 

私だって戦争の話なんか聞きたくない。

だって、怖いんだもの!

 

だけど、ウチナーンチュは聞く!

苦しんでるおじー、おばあのことが心配だから!

手を握って、おじい、おばあの背中をさすって、救心を手渡して、水も入れて渡して、心臓発作が落ち着くのを待つ!

そして、おじい、おばあが何を思い出して、「うっ!」と心臓発作が起きるくらい、苦しい過去の出来事を思い出したのか、

聞く!

 

聞くんです! 愛してるから!

 

で、聞いたら「えぐい!」んです。

おじいとおばあが体験した内容が、えぐすぎる!

逆毛が立つくらい、拒否反応が、全身から、ぐわーっ!と来ます。

 

戦争やっちゃダメしょ!これ!

「わかったよ、おじい!おばあ!戦争止めよう!ってみんなに言う!」

「もう苦しむな! わたしが、おじいとおばあを守る!」という話になります。

 

戦争って、ヤバいの!

 

ものすごく、気持ち悪いことしてるんですよ戦争って。

オッペンハイマーの映画の中でも、原爆が投下された後のオッペンハイマーの貌、

冷静でな顔をしながら、鳥肌立ちまくりの状態みたいな演技してるんですよ。

 

そういう演技してます。さすが、主演男優賞!ですよ。

私、木下惠介監督の映画『陸軍』の田中絹代さんの演技を思い出しました。
戦記高揚映画といわれながら、実は反戦映画と言われる傑作です。

 

 

陸軍

 

 

  戦争はカッコよく見えるけど、実際に体験したら地獄、「二度とごめん!」と人は必ず言う

 

広島でヤングケアラー的な人生を送ってきた原爆二世の人が、「あああの原爆、ここから始まってたのか」って知ったら、原爆が原因で、二世の自分も結婚も難易度が高い人生を送ってたら、自分の因果応報っていうより「なんで、原爆落としたんだの。私、戦後生まれで、ほんとは私に関係ないでしょう!」という気持ちの方が強くて、さめざめ泣くと思いますよ。

 

で、これ、日本人だけが戦争の被害者だって話ではなくて、

戦争は世界中で起きていて、戦争でPTSDになる人って世界中にいて、

世界中の人がPTSDになって苦しんでるんですね。

 

話を聞いた人やお世話をしている家族も、「どんだけ辛い体験をしたのこの人は」と体験を聞いて、一緒に人間不信になったり、共感して、共感しすぎて鬱になっちゃったりとか、二次的PTSDとか言われる状態になる。

 

だから、戦争は体験した人達だけじゃなくて、その後も、戦争が終わっても、傷が深すぎて、後世の人達の心をむしばんでいくんです。「だから、止めよう!」という人たちが、地上戦を経験した沖縄や他の国からも、声があがる。別に沖縄だけじゃないですよ。

ベトナムの人達も、「二度と戦争はしない」と話をされます。

 

心的外傷と回復 増補新版

 

  「原爆のスイッチをさわりたがるおバカさん」対策ってどうすれば…
 

世界中の映画監督って、それぞれの国でPTSDになって苦しんでる人の映画、とってますよね。

 

世界各国で原爆製造がなされてしまってる時代に私たちは生きていて

世界初で原爆を完成させた米国の原発開発チームのリーダー「オッペンハイマー」さん、

彼は、原爆製造成功後、水爆の開発に反対してたんですよね。

 
原爆使用に、何のためらいもなかったトルーマン大統領と話をして、
「あ、政治家は何のためらいもなく、原爆を使う」「人類が滅亡する可能性のある爆弾を何のためらいもなく使う」と気が付いた時点で、科学者として冷静に判断して、今後、水爆の開発に反対をした。

 

これ、ニュースになってましたけど、原水爆が抗議する類の映画ではなく、

見て一緒に考える、というスタンスの映画でした。

 

「日本に原爆を落とすぞ!」という米国人たちが盛り上がっているシーンは、

史実だから、ちゃんと描いてましたけど、だって、仕方ないじゃないですか。

戦争してるんだもの。

 

日本の戦時中に作られた映画だって、戦争中を描いた映画は「鬼畜米英!」って盛んに表現してますよ。

だって、史実だもの。

 

敵のことは憎いだろうし、

「敵をやっつけてやる!」と考えて、「日本に原爆を落とす」的な発言を登場人物がしても、

日本と戦争してる国の中の戦争当時の話だから、「そういうことは当然言ってただろうな」と私は冷静に見れました。

胸はチクチク痛んだけど。

 
日本の映画やドラマでも、戦争中を描いた映画で「鬼畜米英!」とか台詞普通に出てくるし、
「JAP」というセリフが出て来たって、そりゃあそうだろう…と考えながら覚悟してみたんですけれど、
 
どうも、この映画、「JAP」という言葉は、あえて使用してない、セリフに入れてないようですよ。
(と、英語オタクの人のブログに書かれてました)


 

原爆を開発する科学者、物理の世界に人生をささげた科学者たちが、
「理論上はこういう化学反応が起きて、こういうことは可能」という(←専門的な説明ができない山川夏子でした)
「材料はある、ナチスが先に作ったらヤバい! あいつらは米国に使ってくる。ナチスより先に作って成功させなくては!」
とユダヤ系の学者が必死に開発しちゃうんですね。
 
オッペンハイマーはユダヤ系の人の苗字なんですね。
 
だから「一心不乱に作った」んだということは、よく判りました。
 
ナチスが嫌!という気持ちがエンジンになって原爆作りに没頭したということは、よく理解できました。
 

 

 
 

 

 

 

  物理学者が見てる分子の世界 

 

 
日本は世界で唯一の原爆を投下された国で、日本人は基本的に原爆にNO!というスタンスの人が多いと思います。
 
原爆実験のキノコ雲や物理学の世界に没頭していく人が見てる光景(幾何学的な模様や量子や分子の描くアブストラクトな絵画のような世界)、原爆の恐ろしさは「音」で最大限表現されていて、音を聞いてるだけで寒気がします。
 
湯川秀樹さんの自伝を読んだことがありますが、物理学者というのは「規則的な分子の世界の美」、美しい数式の世界の美しさにとりつかれた人達で、ロマンチストで、グロテスクな人のやりとりに興味がないといった(私、だいぶ前に本を読んだので正確な言葉を忘れてしまいましたが)、理系の人って、「完全にクリアな数字の世界が好き!」って人多くないですか? 経理の人とかも。
 
そのオッペンハイマーがいつも、原子の世界のことを考えて恍惚してるような描写も、クリストファーノーラン監督が、そこの部分は映像美の環境ビデオか!というくらい、美しく映像を入れられていますが、あれは映画人が「美的センス」をひけらかすために入れてるんじゃなくて、「物理学者が物理学の世界で生きていく理由=美」を表現してる、オッペンハイマーが見ていた美しい世界を、映画的手法を駆使して、ちゃんと描いていて、それは、さすがクリストファーノーラン監督だな、綺麗に描いてましたよ。
(物理学者が物理学の世界、原子や量子の世界、そんな学問の世界に、心酔する原点の部分だから)。
 
それだけに、開発が止められないというか、
だから生まれちゃったんだ原発が!ということが、
ものすごく直感的に、理解できます。
 
なんか、アダムとイブが「リンゴを食べた」みたいな感じですよ。
原子や量子の世界は、ひたすらに美しい、というのが禁断の果実の味。
 
って、私たち普通にリンゴ食べてますが、「原罪のシンボルとしてのリンゴ」ですね。
 
美しい原子や量子の世界の住人がナチスを倒すために禁断の核開発に手を染めて
って、私たち普通に原発で作った電気を使っていますが、「原罪のシンボルとしての原爆」ですね。
 
背徳、やっちゃったんですね。
電気、便利ですよね。私、今電気ストーブつけて、暖をとってます。

 

  キリアン・マーフィー、ロバートダウニーJr、役者がすばらしすぎる!

 

主役のオッペンハイマーを演じたキリアンマーフィーさんは、大変繊細な演技で、世界の破壊者になってしまった自分への嫌悪や、自分の理論を実証したい研究者としての思い、ナチスをやっつけたいという思い、国内で差別されているユダヤ系アメリカ人の生きにくさや、学問で身を立てて自分の生きる場所を見つけた喜び、さまざな毀誉褒貶と心の中の葛藤に対峙されていました。
 
ナチスよりロシアより先に原爆開発を成功させることで正真正銘の「米国民」になる、移民者は積極的にアメリカの戦争に協力して、勲功を上げることで「アメリカ国民」として認められる、そういう社会なんだそうです。
 
だから、「アメリカ国民として、この国を祖国に」という思いも、やっぱりあるんじゃないでしょうかね、そういう複雑な思いを、見事に演じらえていました。
 
 
これは、米国アカデミー賞主演男優賞を獲るだけ、ある!
 

 

それと、最終的にはオッペンハイマーを陥れるルイスストロースを演じたロバート・ダウニーJr。
 
もう、本当にイヤらしい!!
 
もう、最悪!「きったねー!」「サイテー!」と大声をあげたくなるぐらい、
いやらしかったです。
 
これは、さすがさすがの助演男優賞です!
イヤな奴を演じさせたら世界一!ですね。
 
↓「栄光と没落」って書いてありますよね。没落させる輩…。
 

 
この作品、ヒューマンドラマなので家で見てもいいと思いますが、
原子爆弾の威力を巨大なスクリーンで見ると、
なんというか、(ああ、これが原爆か)とシュミレーション体験できるので
一回は映画館の巨大スクリーンで見ておいても、よいかと思いました。
 
私、これVODで公開されたら、相方にお願いして、もう2、3回は見ようと思ってます。
 
私、この20年、いつも相方に映画見せてもらってるので、
何十回もリピート再生して、英語のネイティブの表現をくり返し聞いて…
台詞を暗記するまで見る、という映画の鑑賞の仕方をしてないので、
今年は、それを再開しようかなと思ってます。
 
英語や外国語って、意識して聞いたり、話したりしてないと、忘れてしまうので。
 
中国語もずいぶん忘れたなあ…。
 

 

  考える映画を観ると自分の人生を大切にしようと思える
 

 

私も55歳をすぎて、残りの人生をどう生きるかを考える年になりました。
この先は、私はやりたいことをやります。

 

名誉欲にとりつかれたルイスストロースみたいな人って、実在するんですね。

 

 

私、先輩方に言われたんです。

 

「あなたの年になったら、誰と付き合うか、つき合わないという選択も、大切な選択肢です。それを覚えなさい」と。
 
ルイスストロースみたいな人との付き合い方、覚えた方がいい。対処できた方がいいです。
 
オッペンハイマー博士がいた世界がアメリカの軍事開発の最先端で、
ここに関わっていればアメリカの政治の中枢にも行けると考えていた野心家が
周りにうじゃうじゃしてたわけですね。
思想家も商売人も、左も右も、いろいろとり混ざって、いた!
 
この映画、原爆開発も描かれているのですが、
米国政府内の権力争いに巻き込まれた「一介の学者」という描かれ方もしていて、
エグイ話でした。
 

 

  日本映画から「命のバトン」を継いで作られた作品
 

 

そうそう、「オッペンハイマー」でアインシュタインを演じた役者さん、トム・コンティさんだそうです。
「誰?」って思う方も多いと思います。私も忘れてましたが、
 
「戦場のメリークリスマス」のジョン・ロレンスを演じた人でした。
「ローレンス! めりぃ・くりすます!ろーれんすさん!」 満面の笑顔を見せるハラ軍曹のまん丸な笑顔!
 
タリラリラン♪ タリラリラリ タリラララ♪(by 坂本隆一)
 
ああ!ローレンスさんが白髪のお爺ちゃんになってる。
(なんて穏やかで優しい、知的なアインシュタインさんなんだろう)と思って、ジワッとしてたんです。
 
オッペンハイマーのファンの方のXなどで「ノーラン監督は戦メリのファンだった」という書き込みがあったんですね。
「ノーラン監督日本が大好きで」とか「日本映画好きで」とか。
 
この映画、直感的にここにつながるんですよ「めりぃくりすます・ろーれんす!」。
 
 
この映画も、戦争の映画だけど戦闘シーンはなくて、人に焦点をあてて「戦争」について考える作品なんです。
たしかに「オッペンハイマー」につながります。
戦場のメリークリスマス [VHS]
 
「ローレンス」役の人が登場する。
 
 
映画人が感銘を受けた作品に対するリスペクト
「めりぃくりすます!」の言葉を、
西洋人が受けとった「命のバトン」としての、
トムコンティさん起用だと思います。

泣くしかないでしょう!

 

坂本龍一さんも昨年お亡くなりになられました。

私、戦メリのころ、坂本信者でした。

 

戦場のメリークリスマス-30th Anniversary Edition- SHMCD

 

 

 

 

私の祖先ははるか昔、ロシアのコサックだった人(ハンガリーの東側ということだったので、ウクライナあたりの人)
がいて、沖縄に漂着して、命を助けられて…という人たちの子孫なんだそうです。
 
あまりに昔のご先祖様すぎて、私にはロシア美人の「ロ」の字もありませんが!

 

プーチンさんが2000年に沖縄サミットに来た時は、沖縄空手の演武を見たり、「晩さん会の最後にカチャーシーがある」と聞いて、ホテルの部屋のボーイさんにカチャーシーのやり方を教えてもらったり…と、なんとか「みなさんと仲良くなれるよう」歩み寄って、努力してたんですよね。私、あれとっても嬉しかったんですよ。

 

 
どうして、こうなるんだろう。
 
悲しい。
 
「オッペンハイマー」は、なんというか日本に原爆を落とした米国人の当時の声もわりとがっつり書かれる作品なのですが、
それは「史実」を淡々と描いてるからであって、映画人の隠れたメッセージが「日本へのリスペクト」「世界共通の愛を信じる気持ち」を、監督が作品の中にちゃんと隠して(ちゃんと盛り込んで)ありました。
 
今、書き飛ばしてるから、ちょっと大げさですが、日本人が見ても大丈夫だと思います。