マエストロその音楽と愛と(2023年 米国 NETFLIX)

今年の米国アカデミー賞「作品賞」のノミネート作品を集中して観る期間に突入しました。
(相方が映画関係者なので、成り行きで私も見てます)。
 
米国を代表する音楽家レナード・バーンスタインの生涯を映画化した作品『マエストロ その音楽と愛と』を観ました。

 

 

 

 
先日お亡くなりになられました世界のozawa、
世界に誇る日本人指揮者・小澤征爾さんの師匠・バーンスタイン!
 
そして、佐渡裕さんもバーンスタインの付き人をやってらしたそうです。
佐渡さんって、今、日本で一番の指揮者ですよね。
 
彼らの師匠だなんて、偉大過ぎます。
 

 

 

 

 

モンスター!!
巨人です!
音楽の巨人!
 
いざ鑑賞!
 

 

  主演男優賞ノミネートに納得! 彼は私がテレビで見てきたバーンスタインそのものだった。

 

いや、すごかった。

主役のブラッドリー・クーパーさん、完璧です。
 

バーンスタインにしか見えない!

 

 

若い頃から晩年になるまでを一人で演じきって、
どの年代のバーンスタインさんもナチュラルで、「すごい!」の一言でした。
 
これは、主演男優賞ノミネートされるでしょう!
獲るんじゃないかな主演男優賞。
 
だって、本人にしか見えないんですもの!
 
ユダヤ人は大きなお鼻が特徴で、この特殊メイクは日本人(カズ・ヒロさん)が担当されているそうです。
青年時代から晩年まで、見事な特殊メイクでした。おじいちゃんのバーンスタイン、どこからみてもおじいちゃんです。
どこにも不自然さがないし、お年寄りの話し方してるんです。
 
これもすごい!
 

 

カズ・ヒロさん。辻一成さん。

 
 
そして、バーンスタインさんはいろいろ隠し事がある人なのですが、
わざとらしくなくて、本当にご近所さんの、おじさんの秘密を、なんとなく私も知ってしまった時のような
気まずい気分になるけど、知らないふりして明るい顔で「こんにちは!」という時の、あのなんか、嘘くさい感じ。
 
隠し事をしながら家族と暮らしていて、あけっぴろげにしてるようにみえて、ちょっとだけ心を閉ざしている感じ、
そのちょっとだけ寂しい感じ、ちょとだけ無責任な感じ、なんか、家庭を大切にしてるけど、冷たい。
 
だけどいつも明るくて、なんか幸せなような気がする……という微妙な演技が、うまい!
 
久しぶりかもしれない、こんな大人の映画。
 
 

 

「アメリカンスナイパー」の主役の人なんですね。
これも異常な緊張感を顔と目だけで演じきっておられました。
やだ、思い出すだけでも脂汗が出ます。

 

 

「アリースター誕生」の、ボロボロになっていくミュージシャンの役の人もクーパーさんだそうです。
つらすぎて見れなかったです。
辛すぎて私、この映画嫌いになりましたよ。(いい作品だってことですね)

 

 

 
この「マエストロ」、
プロデューサーにマーチンスコセッシ監督と、スピルバーグ監督が入ってるんです。
 
なんで、この巨匠が2人揃ってプロデューサーなの?
なんかすごくない?
 
それで、監督は、この主役をつとめたブラッドリー・クーバーさんが監督を、
監督兼主役を務められているそうです。
 
どんだけ才能があるんだ!この人は!
 
(もしかして、二世俳優なんじゃないの?コネなんじゃないの?)
(もしかしてゲイリー・クーパーJrかな…)と調べたら、無関係の方でした。
 
実力で、ハリウッドのトップに立った人だったんですね!
 

 

 
今年の米国アカデミー賞作品賞候補作は「バービー」と「マエストロ」、まだこの2作品しか候補作を観ていませんが、
この2作だったら、「マエストロ!」かなと思いました。
 
 
 

 

  苦悩を子供たちに見せず、凛として生きた母親が本当の主役

酸いも甘いもかみ分けた大人が顔には出さず心の中で泣く「大人」の辛さを描いた作品で、
 
ゃんと苦悩しながら、大人としての責任をもってキリッとして生きる奥様の姿が印象的な作品でした。
 
(ああわかる、これはつらい)と激しく共感して、寂寞とした思いを抱えながら無償の愛をささげる奥様を
見守りつづけたくなる、大人の映画でした。
 
 
登場人物がちゃんと苦悩して、自分がこの世に存在する意義を考えながら、
自分の出来ることをひたすらに続けて、正しいことをしようと、正しさとは何かを自問自答したり、絶望したり。
 
悩んでいるからこそ、「愛」という見えないものの存在を、実感してしまったり。
そこに愛があるのが判ってるから、よけいに悩みが深まっていくという。
 
必死に誠実に生きている人々だからこそ、自分に嘘がつけなくなる。
登場人物を見守って、悩んでいる人たちに慈しみと穏やかな愛をささげたいという気持ちになるヒューマンドラマで、
ファミリーで見ていい映画だと思いました。
 
この作品は、奥様のフェリシアが本当の主役なんじゃないかと思います。
この奥様、苦悩続きの方で、よく耐えたなあという拍手を送りたくなる女性です。
 
具体的に彼女は何に悩んでいたかというと、
彼は同性愛者だったのだそうで(バイセクシュアルで、ちゃんと奥様のことも本気で愛していたようです)、
それが衝撃的な暴露にはなっておらず(ボヘミアンラプソティでは、衝撃的に描いていましたが)、
 
昔のゲイは「相性の良い、気立てのよい女性を捜して結婚して、子供を作って子孫を残す」のは当たり前だったのでしょうかね。
(日本でも織田信長と森蘭丸が恋人で、でも奥方様の間には子供がいました。これ万国共通だったのですかね)
 
 
夫がゲイだったという事実を知り苦悩する奥様は、苦悩すれば苦悩するほど品格が出てきて、美しくなってゆき、
背筋を伸ばして、凛としたたたずまいで行動されるんです。
 
日本の戦前の女性みたいです。
悲しみや嫉妬を抑圧しながら冷静に生きる女性、芸術家である夫を献身的に支え続る女性を、
キャリーマリガンさんという女優さんが演じられていて、
「主演女優賞」にノミネートされています。

 

自分が最愛の人ではないという失望感や、嫉妬の感情を乗り越えて、穏やかに全力で夫をサポートするというハードな人生、
私だと「うわー‼無理!」と逃げ出したくなる人生です。
 
感情を押し殺している人の演技って、お芝居の中でも難易度が高いんだそうです。
実力が認められている女優さんなんでしょうね。
 

 

  生きるために米国に移住したユダヤ人の壮絶な覚悟

 

また、この作品は「アメリカに移住したユダヤ人がどう立身出世していくか」が一つの見どころだなとおもいました。
 
背水の陣をしいて生きてきた人達が、どれだけの覚悟をして生きていたか、思いの強さを実感させられました。
 
結婚して、子供も3人作って、「幸せな家庭を作り、子孫もたくさん」。
 
踊るように歌うように、満面の笑顔で表現豊かなオーケストラを指揮する指揮者、バーンスタイン。
 
彼の指揮をみていると「生きる喜び」が全身からあふれているように見えます。
 
子どもや、異国の人が見ても、彼が満面の笑顔で踊りながら、音楽の真ん中に立って、音楽と同化してる姿をみたら、
「音楽は最高!」だと気が付いてしまいます。

 

 

 

 

 

  ニューヨークシティフィル最高!

 

 

日本ではNHKBS(だったと思いますが)でも放送していたと思うのですが、
 
子どもたちのための音楽教養番組 「青少年コンサート(Young People’s Concert)」というアメリカのTV人気番組があって
クラシック音楽を全く知らない子供たちのためにバーンスタインが身振り手振り、ニコニコ顔でクラシック音楽を解説しながら、オーケストラが生演奏するという番組が放送されていました。
アメリカではこの番組のおかげで、バーンスタインはお茶の間の人気者だったそうです。
私は、NHKでみましたけれども、これは本当に面白い番組でしたよ。
 
山本直純さんの「オーケストラがやってきた」は、このバーンスタインの青少年コンサートを元に作られた番組なんだそうで、
黛敏郎さんの「題名のない音楽会」も、バーンスタインの青少年コンサートを参考に作られているんだそうです。
 
題名のない音楽会は、バーンスタインの付き人だった佐渡裕さんが司会を引き継いで、今もやってるのかな?
私はテレビを観なくなってしまったので、どうなんでしょか?
 
 

 

バーンスタインBlu-ray ヤングピープルズ•コンサートvol1

 

 

オーケストラがやって来た DVD-BOX

 

オーストラがやってきた~♪ 

題名のない音楽会 美空ひばり その世界 [VHS]

 

子どもにも大人気のクラシック音楽家で、ニューヨークシティフィルの指揮者・バーンスタイン。
 
ニューヨークシティフィル、私も一度みたことあるなあ。
大学生の時に東京bayNKホールで見ました。バブル期の真っ只中でしたよ。
 
ニューヨークシティフィルは、クラシックもいい!けど、JAZZがすごい。
グレンミラーも真っ青!です。
大楽団ですから、音の厚みが全然違う!
 
米国の交響楽団だから、演奏してる方に黒人の方も多いんです。だからからなのか、演奏がシャープでホット!で、ソフトで、エモーシャナル!なんです。これがアメリカの交響楽団か!とワクワクしました。
 
生きる喜びにあふれてる!んです。
踊る紐育!という映画がありますが、踊り出したくなる。
 
 
ウィーンフィルは、ちょっと、あえてゆったり演奏するんですよね。
もっさり、というか。
あの、もっさりしたリズムの取り方って、貴族の、あえて、ゆっくり、上品に歩く時の、歩き方のリズムのような気がしました。
(謹んでこの音楽を♪ 謹んでこの音楽を♪)と、ちょっとだけ、テンポがゆっくりなんですね。
 
 

 

 

  本当に音楽を愛してる人同士は喧嘩しない、ただ愛し合うんだと思う

 

 

「カラヤンかバーンスタインか!」という言われる二大巨匠で
二人は仲悪いということにされてたそうですけれども、
仲が悪いという設定に勝手にされてただけで、晩年初めて出会って、意気投合して仲良しになってたそうです。
 
カラヤンは、ぴっちり!ですかね。
きっちりというか、ぱっちり!というか。
バチバチ!というか。シャープな演奏が多いなと思います。
(カラヤンに関する私の表現がおそまつすぎて、我ながら残念です)
 
2人とも音楽が大好きだから、嫌い合うとか、あるわけないじゃん!的な展開だったのではないでしょうか。
芸術家の中でも音楽家は「ハーモニー」(調和)の芸術家だから、解釈の違いで激論はあるでしょうが、
調和の世界にはいると、みな恍惚としてしまって、音楽の神様が天から降りてきてしまう体験をするので、
最終的に理解しあってしまって、喧嘩しないんじゃないかと思います。
 
私もベースが「音楽畑」の人なので、もう音楽が流れてくると、音の世界に入り込んでしまって、幸せで、他のことどうでもよくなります。3歳から楽器を弾いてたので、エアプレイしながら、音楽を一緒に演奏してるんです。もしくは一緒に歌ってる。
幸せで幸せでしかたない。「ワンネス」の世界ですよ。
 
音楽の人は、あまり争わないんじゃないかと思います。
 
音楽関係者で争ってる人いるけど、それは「絶対にオリコン一位になりたい」とか、「賞を撮りたい」とか、「センターポジションがほしい」と言ってるアイドルさんだったりが、靴の中に画びょうを入れたり、ライバルのゴシップを雑誌に売ったり、せこいことをしてるんじゃないでしょうか。
 
音楽を全力で楽しまずに、靴の中に画びょうを入れて、ライバルが傷つく妄想を楽しんでて、音楽で楽しむことを忘れてるから、この人達が音楽を奏でても、たのしくない。
 
 
あと、音楽関係者には、音楽家ではない人もいて、この人達、音楽に没頭できないから、
その人達の中には魑魅魍魎系がまぎれてる気がします。
 
音楽家は、音の幾何学の世界の圧倒的な美の中に漂っている人達なので、
どちらかというと年がら年じゅう、音楽でトランス状態になってゴキゲンで、
音楽は人を恍惚とさせる力があるから、ピースフルで、
ライバル!とか、たぶん、どうでもいいというのが、音楽家だと思います。
 

 

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  彼の音楽で聴衆が熱狂するのは、彼が音楽のなかに楽園をみてたから

 

 

アメリカに移住したユダヤ人で、迫害の歴史を背負って生きてる音楽家だったようで、
クラシックの素養と才能は天才的なのに、クラシックの本場であるヨーロッパから米国に移民として渡り、
彼のお父さんは理容院経営者で、なぜ彼がクラシック音楽家になったのか、よく分からないのですが、
 
ともかく才能が開花して、アメリカで活躍をしていて、彼の人生は、「起爆力!」がハンパない!
 
交響楽団の指揮者として、作曲家として、ピアニストとして、新芸術の映画音楽や、舞台音楽、交響楽としてつくられたJAZZ、ダンスミュージック、子供ための音楽会、音楽家の指導等々、どんだけ音楽のために働くんだ!という、
情熱があふれだして止まらない状態。
 
芸術の神と相思相愛の人。
 
交響楽団の指揮をしながら、とけそうな笑顔と踊り出すような指揮で、聴衆を熱狂させ続けたようです。
 

 

 

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  パッション。人生を前向きに生きる覚悟

 

クラシック畑の人だけれども、新しい世界に飛び込み、ミュージカル「ウエストサイドストーリー」の作曲者として世界のパーンスタインになりました。もっと、あまりにも売れっ子すぎて、指揮者としての講演やヤングコンサートのオーダーが多くて、「もっと時間をとって作曲をしたかった」とよく語っていたそうですが、名曲たくさん残ってます。
 

 

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音楽がクラシックからJAZZに進化した時代、おもいっきりの変拍子で楽器がうなり、吠え、うような、緩急が複雑で、ホットでクールな、ふしぎな構成のバーンスタインの音楽は、ダンサーたちが、大きな舞台のあちこちで、突発的にバラバラと踊り出して、一斉に群舞を始める、その舞台が目に見えてくるかのような高揚感に満ちて、聞く者も演じる者も恍惚の彼方に連れて行ってしまいます。
 
パッションが起爆してる!
すごいストーリーでした。
 
 
 
アメリカでユダヤ人は生き延びてやる!
幸せになってやる!
家庭を作り、子孫もふやす!
 

 

  音楽の感動は性差を超越する

 

音楽は全身で感じながら演奏して、全身でその感動を受け止めて、全身で受けた感動を群衆で共有するという、個々の一人一人の境界がなくなって「ひとつ」になるような瞬間が、音楽にはあるので、そんな音楽の世界で生きている人にとっては、男性だから女性だからという性差はどうでもいいことで、究極のワンネスを知る者として、
男性であろうと女性であろうと、音楽の感動というものは性差を超えて愛のバイブレーションなので、だから(バイセクシュアル)として深化した人がバーンスタインではなかったか、性差も超えるけど、音楽の神様に愛されてしまった人だったという。
 
 
ワンネスというと、スピリチュアルの専売特許のように扱われがちですが、音楽は「ワンネス」の定義をかりると、音楽の本質が表現しやすくなるというか、たとえば「神の祝福」には家族も他人もないし、「生きとし生ける者に祝福を」と、教会の讃美歌はうたわれます。教会は讃美歌をうたうと、天井に歌声(音)が響いて、そこからまた音が反射して「降りてくる」感じで音が聞こえるんだそうです。
 
感動を共有するために「教会」の設計を「歌(音)が反射して降りてくる」設計にした人がいるわけで、それは「神様はいる」「神の祝福を、皆に信じてもらいたい」から頑張るわけで、そうしないと、世の中には絶望しかなくなるから、「希望」を作ろうとした。
 
 
絶望しかない世の中で、音楽家は全身で喜びを表現して、絶望する人々に「神の祝福」を実感させるための使命がある。
 
だから、演奏しながら笑うし、沖縄だと「予祝」とかいって、辛いときは「お祝いの歌をうたう」という習慣があります。
 
だから、ヨーロッパを命懸けで逃げてきたユダヤ人は、「神の祝福」を信じて、音楽の世界に身を投じ、
祝福をもたらす者として、笑顔で「音」を紡ぎ続けたのかなと思いました。
 
映画の中で、教会が出てくるシーンはなかったかと思いますが、そういうことを考えながら見られる作品でした。

 

マエストロ:その音楽と愛と (オリジナル・サウンドトラック)(SHM-CD)

 

映画チラシ「マエストロ:その音楽と愛と」キャリー・マリガン、ブラッドリー・クーパー

 

【大判】映画ポスター 海外版 マエストロ: その音楽と愛と (68.5 cm x 101.5 cm) APMPS-CB86565 [U.S. Made Poster]