ゴールデンカムイ(2024 日本 東宝)

 
ヤングジャンプの人気漫画「ゴールデンカムイ」。

 

ゴールデンカムイ 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)

 

北海道ではその昔、砂金が採れた。それらはすべてアイヌの所有で、その莫大な量の砂金を強奪して北海道のどこかに隠した極悪人がいて、彼らの遺したヒントを元に、日露戦争帰りの杉元をはじめ、野心をもつ男たちが、かつてアイヌが所有していたという埋蔵金を北海道で探しながら、死闘を繰り返すというお話です。
 
ちらっとだけマンガを読んだことがありますが、途中から読んでもよく意味が分からないもので、
とにかく人気漫画だということだけは知っている程度の状態で、映画化された「ゴールデンカムイ」を観てきました(正確にいうと、連れてってもらいました)。
劇場は、日比谷のTOHOシネマズに行きましたよ。
 

 

舞台は明治時代の北海道で、網走監獄の死刑囚たちや、日露戦争の復員兵士、アイヌ民族、明治政府の軍人らが、埋蔵金捜しで極寒の北海道で闘います。
主役は山崎賢人さん。
続編も製作予定の大作映画「キングダム」でも主役の信をつとめる山崎さん。
ハンサムですっきりとした顔立ちで、目力があって、大変な運動神経がある山崎さんが日露戦争で「不死身の杉元」といわれた
ゴールデンカムイの主役を務められていました。

 

 

 
いやあ、北海道の厳冬の自然が美しい!
その中でアイヌの埋蔵金をめぐり、繰り広げられる死闘!
アクションも素晴らしい!
 
よく出来た原作、よく出来た映画でした。
 
冒頭の日露戦争二百三高地の戦闘シーンは、見事でした。
これまで日露戦争の二百三高地を描いたドラマや映画はたくさんありますが、昭和に作られたものが多くて、平成ではほとんどみかけなかったような気がします。
 
久しぶりにみたなあ、日露戦争の映画。
映画「キングダム」で東宝は戦のシーンの撮影はだいぶ、手法を取り戻したというか、新しい撮影方法も取り入れて、戦闘シーン、ハリウッド並の技術で撮影できるようになっているんですね。

 
 
ゴールデンカムイは、どうも「キングダム」の撮影スタッフがだいぶ入っているとのことで(まあ同じ東宝映画ですから)、
キングダムの戦闘シーンは群像が多いのですが、ゴールデンカムイは「登場人物」にフォーカスして、日露戦争の二百三高地のシーン以外では、北海道の自然の中で、1対1、1対2で闘うシーンが多くて(人間対熊の闘いというのもありますが)、キングダムより登場人物が少なくて、そのかわり強烈なキャラクターの人物が次々出てくるので、ゴールデンカムイの世界に没入しやすく、映画として「見やすい」という効果がありました。
 
また、北海道の雪景色の中ですべてのストーリーが繰り広げられるので、北の大地の雪の景色の美しさに心を洗われる時間が長くて、熾烈な戦闘シーンも、人と人のこともあれば、人と熊のこともあり、「殺し合いをする人って醜い」という感情にならず、熊と人も同様に弱肉強食の世界に生きる命あるもので、命をつなぐために血を流している、美しくて厳しい自然の中で…という、映画の題材としては最高の「ゴールデンカムイ」、映画化しておもしろくないわけがない!
 
 
にしても、日本は太平洋戦争で負けて、戦争を描く映画というと、グイグイ攻める戦争や戦闘を描かずに「平和を希求する」ことをテーマにした作品が多いので、グイグイ勝ちに行く戦闘シーンに、違和感を感じたりもしたのですが(別に変ではないのですが)。
日本って「絶対闘わない民族」になって79年が経過しました。
だけど、サムライですから「闘う!」本能が本当は米国やロシア、中国といった軍隊がある国の人々と同じように、備わっていて、
今は飼いならしている状態だと思うのですが、時にこのような映画で、「日本人にもあるぞ!闘う本能が!」というのを再確認してるんじゃないかと思ったりしたのが、この作品です。
 
喜怒哀楽の感情って、だれしも皆持っているものですし、私は人前で楽しい時間を過ごすのは得意です。それに人前でよく笑います。泣くとは出来なかったのですが、最近は人前でも自然に泣けるようになりました。一番難しかったのが「怒る」ということです。ここは「怒らきゃだめでしょ」という場面で、私は怒れなかったんです。努力して、「怒る」が出来るようになりました。
 
喜怒哀楽の感情って、上手に適正に出せるようになるのって難しいですよね。
 
本能もそうです。本能があるのを認めて、コントロールする方法を学ぶ。
だから「肯定」って大切だと思うんです。
 
食欲、睡眠欲、支配欲、征服欲、我欲、性欲等々。
食欲をコントロールする話だと万人が参加できる話ですけれども、攻撃する本能「征服欲」と「食欲」「名誉欲」あたりになるんでしょうかね、これ、存在しますよね。
 
映画って、それらの感情や欲を「むき出し」にして描きます。
落語も、「落語は業の肯定」とよくいいます。
 
映画は幻影に一番近い芸術なんじゃないですかね…。

 

 

ということで、映画が終わって劇場が明るくなった時、開口一番で「おもしろかった~!」と声をあげてしまいました。
 
 
東宝、勢いに乗ってますね!
日本映画完全復活宣言!
 
東宝が自社での制作をやめて配給に徹するようになって、日本映画この先どうなるんだろうという不安を感じたものですが、
制作はしないけれども「マネジメントに徹する」会社になったのかなと想像したりしました(中のことをしらないのにこんなことを書いてよいのでしょうか?)
 
「日本にはプロデューサーがいない」とかよく言われていますが、東宝から世界で闘える日本映画を作れるプロデューサーが育っていくのかなと思いました。
 
山田賢人さんと真栄田郷屯さんの雪ソリ上の対決がともかく最高で、ゴードンさんってイケメンだからラブストーリーでの登場が多くて、(千葉真一の子供だっていう話だけど、全然アクションやらないなあ…。アクション見たいなあ)と思っていたゴードンさんのアクション、さすが!

 

 

いよいよですね!ゴードンさん!本領発揮の、ただのイケメンじゃねーぞ!という。
マンガのキャラクターにもそっくり!だと騒いでる方がいらっしゃいましたが、マンガからそのまま抜け出てきた!とファンがヒートアップされてました。
 
それから、舘ひろしさん、デビュー作の「暴力教室」の狂犬高校生が、齢七十を過ぎて、「死んだはずなのに北海道で生きていた土方歳三」というぶっ飛んだ役を演じられています。
シブい!シブい! 迫力ある!
渡哲也さん、松田優作さん、丹波哲郎さん亡き今、甘いマスクの舘さんが置いた狂犬の狂暴性と老成を魅せてくれています(というか、たぶんこれからですね。続編楽しみです)。よっ!石原プロダクション!
 

 

 

また、このストーリーの中で一番のクレイジーな鶴見中尉、やばい!やばいです! 玉木宏さん、こわすぎる~!
その他にも油に乗った出演者が目白押し。

 

 

アイヌの女の子を演じた山田杏奈さん
んという女性も、大人なのに少女の役を見事演じられていて、彼女もアクションスターなんでしょうね、すごい体幹!

 

 

それで、アイヌの村の人々、コンディショングリーンのエディさんみたいな方いらっしゃいましたね。
あれは、本物のアイヌ民族の方かな? 中野で毎年開催される、アイヌ・沖縄のお祭り「チャランケ祭」にいらしてた方じゃないのかな。おばあちゃんの役も本物かな? 口紅藍色なんですかね。あれ、それとも染物をするのに、藍を味見(沖縄でも昔の人はやる)してるから、口が青くなったのか、とても気になるところでした。
 
一瞬、アイヌの村に宇梶さんがいらしたような気がしたのですが、「宇梶さんがご出演なさるのなら、シークレットキャラや続編の登場人物としてのチラ見せだけでも、クレジットに名前でるでしょ!」ということで、宇梶さんのそっくりさんなのかな。私は、宇梶さんのウポポイの歌や、狩りをされるお姿、見たいです。