・ゴジラ-1.0/C(2023年日本/東宝)

 

 

 

日本が誇る東宝映画「ゴジラ」。
国内でもいろんなバージョンがあって、ハリウッドでもリメイクされて、今やゴジラは世界のゴジラとなっています。
 

昨年、日本のVFXの第一人者である山崎貴監督の手で作られた『ゴジラ-1.0』が海外でも人気を博して、各国の映画祭にノミネートされているようですが、この世界的大ヒットを受けて、『ゴジラ-1.0』をモノクロ版にした作品が新たに公開されました。

 
面白かったです!
最高!
 
ストーリーが秀逸です。
 
終戦直後の焼野原となった日本にゴジラが現れる!
日本国内には復員兵、海軍に陸軍に特攻隊の生き残り、「死に損なった」軍人たちが業火を燃やしながら「生きる」覚悟を決めて、日本の復興を始める、そんな時代にゴジラが現れるという、これは傑作!と言ってもいいんじゃないでしょうか。
 
登場人物の苗字も「敷島」「水島」と、日本帝国海軍の歴史に詳しい方なら「おおっ!」となる名前がずらり。
 
特攻隊の映画『永遠の0(ゼロ)』や、 日本帝国海軍が超巨大戦艦の製造を目指して天才数学者が数式で戦艦の設計図を作り出す『アルキメデスの大戦』を撮った山崎貴監督のもとには、もと日本帝国軍関係者の協力チームがあるんだそうで、私も戦後50年(1995年)当時、海軍、陸軍、海軍航空隊の本を作ったので、その時に覚えた当時の日本の軍隊に関する細かいあれこれがきちっと再現されていて、時代考証が見事でした(だからといって、軍事映画ではありません。終戦直後が舞台の映画なので、時代考証が完璧だったという意味です)。さすが東宝だなと思ったのですが、戦前・終戦直後の日本映画を丁寧に研究して作られていました。
 
もしかして当時の東宝の映画の銀座の映像をCG処理してAIで動かしてるんじゃないかなあという、どえらい作品で、(日本もここまでやれるようになったんだ!!)と感慨深くなる作品でした。
 

 

 

 
脚本もよく出来ていました。
ヒューマンドラマのストーリーがきちんとつくられていて、ハリウッドの、ただゴジラが出てきて「スゴーイ!」というパニック映画ではなく、「OH!GOD!」と畏怖するだけの映画とは一線を画した、終戦直後の日本人の復興ドラマになっていました。
 
 
日本人にとって第二次世界大戦というのは、特攻隊が自爆テロ(特攻)をして命を落として、陸戦では肉弾戦、日本帝国海軍の誇りである戦艦大和をはじめ多くの軍艦が沈み、原爆が落ちるわ、敗戦するわ、帝都は焼野原、女はパンパンになり、孤児はあふれ……という惨憺たる状況で、助け合う人々の生きざまが泣ける!
 
ちゃんとヒューマンドラマがあったから、ゴジラと闘う人たちを応援できました。
 
個人的には、『君の名は』の無慈悲な敗戦の現実を描く、たとえば、退役軍人の大尉の笠智衆さんとパンパンが焼野原の廃墟で同居、みたいなシーンもあったらよかったなあと思ったりしたのですが、ゴジラってやっぱり子供も見る映画だという前提なんでしょうかね、アコギなことをする娼婦や泥棒、ヒドイ悪党は出てきませんでした。ギリギリな感じでしたけれども。
 
主役の元特攻隊員の男を神木隆之介さんが演じられていて、抑えめの演技をされてました。感情が麻痺してる感じなのかな…という。脇でよかったのは山田裕貴さん、戦中の若者の感じがよく出てました。一番光ってたなあ。
 
あと、みなしごの女の子はあれは素でしょうね。可愛かったです。私もあの時代に、あんな子がいたら抱きしめてあげたくなったでしょうね。
 
安藤サクラさん、安定の演技をされてました。
女性の方も、よかったなあ。(ごめん名前忘れました)。

 

『ゴジラ-1.0』 怪獣咆哮撃 ゴジラ(2023) フィギュア

 

 
ゴジラとの闘い方も、「1946年だと、こうくるか!!」という意表をついた闘い方をしていて、
当時の日本なら、なるほど、そうか、そうだ! そうするだろう!という納得の展開。
 
私、合掌してしまいましたよ。
 
 
もうすぐ戦後80年になりますが、1945年の敗戦以降、平和憲法の元で生きている日本人は、「なんのために戦うか」という問いかけすら御法度になってしまいましたが、ぶっちゃけて、「もし攻められたらどうする?闘う?」という問いかけを、ゴジラの映画を見て感想を共有することで、日本人は遠回しに確認しあってて、「あんな化け物来たら、そしたら闘うしかないでしょ!」というコンセンサスを、ゴジラを介して国民が再確認してるような気がします。
 
戦争は理念で止めることが出来るけれども、戦争がなくならないのは、生きし生けるものの中には荒ぶる「ゴジラ」が眠っているからで、闘うことが嫌でも、ゴジラが起きて暴れ出したら、対峙せざるを得ないよなあ…という。
 
戦争をしてる国のどちらが悪いとかではなく、両者が両者にとってゴジラ的な存在になってしまったから、殺し合いが続いているんだなあと、理解もできます。
 
 
たとえば、私は沖縄の人で、常に頭の隅で気にしているのは尖閣に中国が上陸してこないかということだったり、台湾有事があったら沖縄はどうなるんだろうという「脅威」が頭の中にあります。
いわゆる中国脅威論といわれる、私は中国脅威論者なので、国防の問題はきちんと考えていたい。
中国人とお友達になっておしゃべりをしたり、中国の皆さんがとても素敵な人たちなのはよく知っているのですが、それと同時に、私はどこの国の人であろうと、他人を傷つけてでも自分が利益を得ようとする人たちがいることを私は知っているので、どこの国だろうと軍隊を使って領土を拡大したい為政者がいる国は、周辺国は警戒すべきだと私は思う。
 

 

『ゴジラ-1.0』 怪獣咆哮撃 ゴジラ(2023) フィギュア

 

 

ゴジラだって、いつ上陸してくるかわからないけど、あっという間に相模湾から上陸してくる。
ゴジラだけじゃなくて、津波も地震も、戦争も、いつ上陸してくるか分からない。
 
避けられないのは天災で、天災以外の人災は、本当に努力すれば避けられるから、
大きな災害に直面した時、人は素直になって助け合うことはよくあることで、
だからゴジラは何度もリメイクされるんですね。
 
ゴジラが世界で受けてるのは、日本が戦争を放棄した平和国家だけど、「ゴジラのような自国の有事の際は全力で戦うんだ」、そうかそうか。ということはつまり、「日本人は闘う時は闘う民族だけど、だけど、戦争を放棄して平和国家を維持してるのは、理性で維持してるんだ。理性が強いんだ。すげー!」ということになりますよね。
 
だから、ゴジラを作った日本は世界に受け入れられるんだと思います。