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暴力教室(1976年 日本 東映)

 

日本映画でも知る人の多いハイスクール・バイオレンスの映画『暴力教室』を観ました。
 
主役は松田優作さん。荒れる高校に赴任した元ボクサーの体育教師。
クラスを支配する不良高校生で族の頭で生徒に、新人の「舘ひろし」さんが登場。
これ舘さんのデビュー作なんだそうで、大人の体で幼ない精神とのアンバランスで壊れてしまいそうな、危険な10代を演じられています。
 
(これ、どっちかが死ぬんじゃないの?)とハラハラしどおしでの作品で、血しぶきまみれの「話し合い(殴り合い)」。
いいのかこれ? 学校でしょう?! という衝撃の映画でした。

 

暴力教室 [DVD]

 

 

 

ポスター THE 優作 BOX 2005年 松田優作 暴力教室 俺達に墓はない ヨコハマBJブルース ア ホーマンス それから

 

「ビーバップハイスクール」や「東京リベンジャーズ」等々、不良高校生と暴力を扱ったドラマはたくさんありますが、
日本ではその系譜の源流になる作品じゃないでしょうか。
1955年の米国の映画『暴力教室』を参考に、バイオレンスな学園映画作品を作ろうと東映が全力を挙げてつくった作品なんだそうです。
 
 
松田優作さんが荒れる高校の先生に就任するところから始まるストーリーですが、
学級崩壊をして不良だらけの三年B組(金八先生!じゃないですよ^^)のエグイこと。
 
不良高校生役の舘ひろしさんヤバすぎます!
鮮烈すぎるデビュー。
 
血だらけだし!
狂ってる!
 
「ウエスト・サイド・ストーリー」のJETSは、ままごとだったな! 
と感じるくらい、キケン!
 

 

クールス 暴力教室 学ラン

 

 

 

「衝撃のデビュー作」という言葉は、本作の舘ひろしのためにある 

 

 
荒れた不良高校生の狂気、いつだれかを刺して殺してもおかしくない、衝動をコントロールできない10代の若者の異常性を演じきった舘ひろしさん、覚せい剤でも使用してるのではないかと思うくらい、恐かった~!
 
先生役の松田優作さんが、またまた狂気の体育教師で、ナイフが飛んできても、ナイフを投げた生徒にガン飛ばして、無言でナイフを投げ返し、生徒をビビらせ返す。教師をなめるなよ!を超えた、恐ろしいまでの威圧!
 
ビリビリした空気、こんな学校あったら嫌~!!
 
最初は理性的で、生徒からどんな挑発を受けてもスルーしていた溝口先生。
荒れてゆく生徒たち。暴力が激化して、先生も半殺し! 
 
だけど、教員は生徒を殴らない。
流血しながらも無抵抗で、ガンを飛ばしながら、生徒と会話を続ける不気味な体育教師。
 
松田優作こわい…(と思ったら、実は先生はKO勝ちした時に対戦相手を新でしまったという元ボクシング世界チャンピォンだったという設定での先生でした)、強い自制心でチンピラ高校生がどんなに先生を殴って挑発しても、先生は、キレるわけない!

 

 

「狂気」を演じさせたら、当時の日本で右に出る人がいない松田優作さん 

 

ハリウッド映画「ブラックレイン」にもヤクザの役で起用されて、日本のヤクザの狂った演技が高い評価を得ましたね。
松田さんは高校生の時、アメリカに住んでいて米国のハイスクールに通っていたんだそうで、英語ペラペラ。
ハリウッドでスターダムにのるのも時間の問題と噂されていた時に、まさかまさかのガンで、42歳の若さで亡くなられました。

人生の最期に目標だった「ハリウッド作品出演」を果たした。

 
生き急いだ人生だったんですね。
無念だっただろうな。

 

ブラック・レイン (字幕版)
 
ブラックレインもそうですが、この暴力教室も、狂気と狂気の応酬が続く作品で、恐ろしいです。
 
あと、松田優作さんって顔や雰囲気がブルースリーにそっくりで、ブルースリーの背が伸びて、足も長くなって、長身モデル体型になって、複雑で繊細な演技が出来るという、奇跡の役者さんなんですね。
 
松田龍平さんと松田翔太さんのお父さんですね。

 

タバコを吸ってる人が松田龍平さん

まほろ駅前狂騒曲

 

auのコマーシャルで桃太郎役をつとめる松田翔太さん(真ん中)。

au 三太郎 クリアファイル 松田翔太 濵田岳 桐谷健太 A4サイズ

 

 

 

昭和50年代、テレビで人気だった刑事ドラマ「太陽にほえろ!」ではジーパン刑事としてお茶の間の人気を博しました。
ジーパン刑事が刺されて死ぬシーン―ー、刺された腹部を触って、血だらけになった自分の手をみながら「なんだあこりゃ~!」と吠えて、その後に死んでしまうシーンは伝説で、私が小学校の頃でしたけれども、学校では男子が盛んに「なんだあこりゃ~!」のシーンを真似をしてましたよ。
 
 
「太陽にほえろ!」のジーパン刑事です。

 

太陽にほえろ!ジーパン刑事編II DVD-BOX

 

 

 

太陽にほえろ! ジーパン刑事編I DVD-BOX(中古品)

 

ジーパン刑事のテーマ『太陽にほえろ』より Wild guitar ver. ORIGINAL COVER

 

 

 

ブルースリーの、こっちが上位変換かも? 圧倒的存在感でハリウッドに出た松田優作 

 

 
暴力教室で「絶対暴力は使わない」と誓っていた溝口先生なのに、あまりにも生徒たちが鬼畜なチンピラすぎて、すでに犯罪が横行してしまってる状態なので、途中からは溝口先生も怒りの鉄拳状態で、遠慮なしに殴る殴る! グレた生徒を「半殺し!」にしていきます。

 

 

 

チンピラどもを半殺しにするシーンでは、ボクシングの構えで殴り合いになる松田さんのパンチの強くて速いこと!
 
ブルースリーに似てるのは顔だけかと思ったら、腕や胸、首筋から背中の筋肉の動きが、もうブルースリーなんです。
喧嘩のシーンで腕を構えると、もうブルースリーにしか見えない!んです。
この方、実戦でも喧嘩強いんじゃないでしょうか。
 
これは、松田優作ハリウッド行くでしょう!いう予感しかしません。

 

こちら、本物のブルースリー。

ドラゴン危機一発 (字幕版)

 

 

敵に対して斜めに立って、背中を丸く顔は正面。
ブルースリーの丸い背中を思い出してしまう、松田優作さんの丸い背中。
 
つよそ~!
 
ブルースリーの構え!
すごくキマっていました。
 
 
 
 
残虐な犯罪に手を染めていくグレた高校生たち。

もうもう狂っていました。

 
荒れる私立高校。不良を制圧するために送りこまれた元ボクシング世界チャンピォンの体育教師溝口。
刑務所送りだ!な悪党高校生を制圧していく狂犬ファイター溝口先生。
 
だけどだけど、本当にあくどくて、不良よりも段違いに黒い、本物の悪党は高校の校長だった!というラストで、汚い大人を憎む不良生徒と暴力教師が気が付いたらお互い同じ時間に学校に殴り込みをかけて、それぞれ闘って、最後に学校に警察が来るんです。
 
最後の最後は、松田優作さんと質ひろしさんが、スローモーションで、校門に集まっている警察に向かって、まっすぐに歩いていく。しびれるラストです。これ、ブルースリーの「怒りの鉄拳」のラストのまんま。ブルースリーのエンディングと同じ!
 
 
松田優作さんを魅せるバイオレンス映画なので、やっぱりかなりブルースリーやブルースリーの映画を研究して作られている作品のようです。
 
松田さんとブルースリー、髪型も似てるし、何よりも目が似てるんですよね。
松田さんの殺気がすごい。殺気だけでいうと、ブルースリーより怖い。こちらは本当に人を殺してしまいそう。
いやほんとにすごかった。
 

 

狂った高校生の表情が、ジョーカーとダブって怖かった
 

 

 
また、これがデビュー作になる舘ひろしさんですが、映画「ジョーカー」を想起させるくらい狂ってました。
デビュー作でこんなすごい演技を見せるなんて、衝撃的なデビューだったんだろうなと思います。
 
 

 

ジョーカー(吹替版)

 

バイクに乗る姿なんか、もうかっこよすぎて「ああ、これがクールスかあ~!」と、しびれてしまいそうになりますが、当時クールスの皆さんは、舘さんもおそらくこの時25歳はゆうに超えていて、シブい大人の魅力も出てきてる年頃。
 
 

 

決定版!クールス

 

ROCK'N' ROLL BIBLE

 

ゴールデン・ベスト

 

ぐれた高校生にしては、ちょっと年齢が行き過ぎてる感がありました。
 
バイク好きなんだろうなあ、チンピラ高校生という役柄なのですが、バイクに乗っているシーンの、バイクに乗る姿はなんとも悠然としていて、「暴走族」という感じはしませんでした。マシンを愛してるからバイクに愛情をもって大切に乗ってる感じ。バイクに乗ってしまうと、狂気が消えて、バイクに対する愛で所作が素に戻る。見た目はワイルドだけど、身のこなしがソフト。
 
不良というより、バイカーでしょう!
20代の舘さんなのですが、10代の若者の衝動性と孤独感、甘ったれた自意識が混然一体となった「若者」を見事に演じておられました。
 
 
舘さん演じる喜多条仁はお金持ちの子供で、お屋敷に住んでおり、お父さんが丹波哲郎さんなんです!
 
「おお!こんなところに!丹波哲郎が出てきた!」と小躍りしたくなりましたが、丹波さんだと戦争中に軍人だった世代の男性なので、息子がグレて徒党を組んで外でチンピラになっていても、戦争中は制裁(リンチに近い)もしてただろうし、戦後愚連隊の荒くれ者をみながら「男は荒れる。そんなもんだ。そのうち落ち着く」という考え方がベースにあって、そのせいで、子供の非行を深刻に考えてない父親に見えました(私の想像です)。
 
 
戦争に参加して殺し合いもしてきた人。漢過ぎて、子供に「強くなれ!」と戦闘意欲を叩き込み、その後は放置して「勝手に育て!」とアテンドしない。男の子どもをちゃんと叱らない。丹波哲郎という大物を起用することで、「昭和の立派な人物だけれども、実は父親としてダメダメな人」という印象を受けました。

 

戦後の日本国憲法の「戦争の放棄」など米国の押し付けだ! 
軍国主義時代の日本は間違ってない、強くなければ男ではない。勝て!
 
子供の繊細な心のアテンドなどそんな寝ぼけたこと「ちまちまして、くだらん!!」というお父さん、昭和50年代は多かったんじゃないでしょか。

 

 
父親がちゃんと男の子供を叱らないから、松田優作演じるボクシング元世界チャンピォンの担任の先生にからんで、(先生を怒らせて、そのパンチを受けてみたい!)という、ゆがんだ願望をもつ(自覚してないけれど、父親に本気で自分に向き合ってほしくて、本気で叱られたがってる)男の子になってしまっているように思いました。
 
父親とのコミュニケーション不全で非行に走った子供。
 
この作品、暴力が暴力を呼んで、暴力まみれの作品で、やっぱり昭和だなあと思いました。
 
 
 
この作品が発表された時、私は小2で、この作品がヒットしたの覚えています。
 
「バイカーはロックンロールを聞いて、たばこをふかし、大変な不良」というイメージがついたのこの頃じゃないでしょか。
小学校4年くらいには、横浜銀蠅も出てきて、バイカー=不良というお約束が芸能界にはあったような気がします。
 
わし、「バイカーだから不良!というのは違うでしょ!」という考えをもっています。
舘ひろしさんがリーダーをつとめる「クールスは本物の不良」というのが宣伝文句で彼はデビューしたようですが、実際の彼は、不良という感じの人ではないのでははいかと、舘さんがバイクに乗るシーンを見て思いました。
 
ハーレー乗りの集団のおじさま方が、たまに国道を走っておられますが、昔、ハーレーダビッドソンのショップに行ってみたら、わりと素敵な紳士淑女の皆さんだったりして、(あれ?私ステレオタイプの「バイカー=不良」という考えに毒されてたな)って気が付いたことがあったんだよね。
 
 
だから舘ひろしさんのデビューの宣伝文句の「不良」も、「不良不良って、不良だったらなんなの!偉いのか!」と私はつっこみたくなりました。それは多分私が田舎の人で、喧嘩や非行はファッションでやるものじゃないと思ってるからだと思いますが、バイカーでも喧嘩弱い人いるし、バイカーでも、争いを好まない敬虔なクリスチャンもいる。
 
わし、暴走族の真似をして悪い人ぶってる人より、優等生の顔をして陰では陰湿な苛めや汚いことをやる人の方が、本当に心の底から大嫌いで、もともと暴力映画も暴力シーンを見るのも大嫌いなのですが(盛り場に住んでいたのでヤクザの喧嘩など子供のころ何度か見て、ほんとうに嫌だったんです。今回は強制的にこの作品を見せられました)、善人ぶってる悪徳校長がやっつけられるシーンは、スカッとしました。
 
内心スカッとしてるのですが、スカッとする自分を認めると、剛柔流の空手の先生に怒られてまた入門させてもらえなくなるし(子供のころ喧嘩ばかりしてて、先生に怒られて、入門させてもらえなかったんです)、闘って悪を倒す映画をみてスカッとする自分を知ってるので、助長しないように暴力映画を見ないようにして、自分をコントロールしてるのかもしれません。
 
私の中の怒れる狂気を眠らせておかなくてはならないので、この映画、何度も観たら私には危険です。
 
これは見る人を選ぶ映画だと思いました。
理性がコントロールできない人は見ない方がいいです。
 
にしても、舘ひろしと松田優作はすごかった!
 
舘ひろしさんに関しては、このデビュー作「暴力教室」と最近の映画「終わった人」を2本連続で見ると、「人って成長するし、人生ってこれだけ変わるんだ」という、人の人生を俯瞰してみられる「神」の視点を得られるかなあ…なんて思いました。
 
ああ、この映画の舘ひろしさん、恐怖映画に出てくる化け物級にこわかったです。
バイク乗ってる時はカッコよくて、この方、素はまったりとして優しいそうな感じが出ていて、だから魅力的なんでしょうね。
「終わった人」また観よ!
 

 

終わった人 (講談社文庫)