・シネマ組踊 孝行の巻(2022年 日本)

 
われらが沖縄「琉球王国」が誇る古典歌舞劇「組踊」。
国指定重要文化財です♪
皆さん、ぜひご覧になってみてください!!
 
映画スクリーンで見られるように、超高画像の解像度で演目まるごと撮影してしまいました! 解説もついてます♪ という優れもの。「はじめての組踊」鑑賞にピッタリな作品です。
 
その昔、組踊の神様といわれる玉城朝薫(たまぐすぐ・ちょうくん)という踊りと三線の名手が琉球王国にいらっしゃいまして、この方が創作したのが「組踊」とされています。
 
朝薫が作った5作品を(朝薫の五番)もしくは(朝薫五番)ということがありますが、孝行の巻はその五番のなかの1つです。もっとも派手な演出があると言われている作品で、大掛かりなセットを使用するため、上演する劇場も限られ、映画化することで多くの方に観てもらえるようにしたのがこの映画なんだそうです。
 
松竹が「シネマ歌舞伎」というシリーズをやっていますが、その組踊版だという認識でよいかと思います。
 
沖縄はかつて「琉球国」という、王様が統治する小さな王国でした。
それで「琉球王国」などとも呼ばれたりするのですが、江戸時代鎖国をしていた日本とは違って、琉球王国は開国状態だったので、中国や海外との貿易も盛んで、鎖国時代の日本には琉球経由で多くの海外の品が入っていたんだそうです。
 

物品だけでなく、海外の文化や学問なども琉球経由で日本本土に持ち込まれているものが数多くあります。食べ物だとサツマイモだったり、書物だったら六諭だったり、音楽だったら三味線だったり、数えればキリがありません。

 
琉球の言語は、日本の古語がふんだんに残った言語で、日本人にとっては「なつかしい」と感じる言語のようで、それで「私のルーツは沖縄ではないか」とくりかえし沖縄を旅するのが趣味になった方も多くいらっしゃいます。先日辺野古を訪れたひろゆきさんが「沖縄の人は正しい日本語がしゃべれない」と発言して炎上騒ぎになったりしましたが、彼はのちに(沖縄の言語は日本の古語の文法が残っていて、今の日本では使われていない文法を使って話をするから標準語を上手に使えない)と言い換えてみたり、どうも大変よく勉強をされたようで。で、本当にそうなんですよ、皆さん。
 
ということで、この日本のルーツを探すなら、「琉球王国」の文化に触れてみてください。
 
言葉、よく分からないと思うのですが、字幕で日本語訳が付いています。それを見ながら「組踊」を見てると、「あっ!これ日本語の古語だ」ってわかってきます。よくわからないと思ってたセリフが、「あれ? あれ? これって昔の日本の言葉だよね…」と、すごく不思議な気分になります。
 
ストーリーは、日本人にもわかりやすいストーリーで(というか、玉城朝薫さんは江戸時代、琉球王国版の参勤交代のような「江戸立ち行列」の琉球使節団として江戸時代の日本を訪問して、歌舞伎や能を鑑賞して、それらを元に「組踊」を作っているんです)、「ご存じ!」のお話を組踊に仕立ててあって、「わかる!!」んです。
 
「えっ! なにこれ! 分かる~!」とうれしくなってしまいますよ。
 
朝薫五番のうち、「執心鐘入」は娘道成寺、「二童敵討」は曽我兄弟。そして「孝行の巻」は 日本だけでなく海外にも多い「人身供養(ひとみごくう)の少女が仏の力で命拾いをする」というストーリーで、とても分かりやすいです。
 
不思議な感覚になるのには、いくつか理由があって「組踊の静かな動き」もその一つです。ミニマリズムか!といいたくなるくらい、抑揚した表現が多いんですね。また役者さんのセリフも歌を詠みあげるよう「詠う」ので、初めてみた方は「これは何をしているの?」という謎展開に、面食らうと思いますが、抑えた表現の中に感情が爆発していくシーンがあったり、泣いてるシーンがあったり、喜んでいるシーンがあるので、見てると「あっ!」とわかってくるんですね。
 
どうしてわかるかというと、地謡(じかた)の皆さんのテンションが高い!もう、歌三線の唄者の皆さんがはりさけんばかりに歌を歌うんです。
 
三線の音というのは、弦が三本しかなくたって棹の部分は長いので、高音部からベースのような低い音まででますから、
それを駆使して、歌い方も演奏が、ふいうちで突然始まったり、突然途切れたりなので、感情の起伏は地謡さんたちが全開で泣きの歌を聞かせてくれます。役者はミニマリストか?な演技を至高としてるので、高まる感情を微動でピクピク動いて表現したり、ものすごくゆっくり動いたり(インパクトを強めるためにスローモーショーン的な演出にしてるんじゃないかという説も聞いたことあります)、大劇場の末席で見てると、歩いてるだけ、座ってるだけにしか見えないのですが、わずかな動きで、喜怒哀楽を表現したりします。
 
よく見てると分かりますが、首を落としたり、目が泳いでいたり、肩が震えていたりします。それで、演奏隊の方は舞台で感情を押し殺してる役者さんとは真逆で、感情を爆発させて、ブルージーに、甘く切なく、感情を歌い上げていきます。
 
「ジャズに詳しいんだ俺!」とか、「俺はちょっと音楽にはうるさい」とか
言ってる男子で生意気な輩がいたら、ぜひ一緒に「シネマ組踊」を鑑賞してみてください。ノイズミュージックも環境音楽も、BPMがどうのとか、そういう知識を総動員して、組踊の音楽を分析してもらってください。
 
あの世界の坂本龍一様ですら、「沖縄の古典音楽は分からない、特に太鼓」と言わしめた、謎多き音楽で、ウチナーンチュはしってる、「古典音楽の太鼓」は何のルールに基づいて演奏されているか。
 
「あなた見抜けるける?!」と生意気そうなBOYとデートで、「シネマ組踊」を鑑賞してみたら、音楽と芝居の連動具合に、「おもしれ~!」となるか、「わからん!なんだ!」と興奮するか、「つまらなかった二度と観ない」というか。
 
沖縄の音楽を、読み解けるか解けないか!
難解そうだけど、ヒントがあると、とても身近で分かりやすいんですよ。
 
 
デートして「こんなの二度とみる必要ない」というような男子で、そいつがイケすかない男子だったら、これを口実に「あなた分からないんだ。お話にならないね!」とフッてしまっていいと思います!!!
 
だって、その人、探求心ないってことでしょう?
食わず嫌いしてる子ってつまんないよ。
一緒に冒険の旅に出てくれる子の方が楽しいと思うよ!
 
というのは言い過ぎですが、最初は退屈かもしれない(言葉分からないし)。
意外と、舞台で本物の組踊をみても、つまらなかったと思うかもしれない(言葉が分からないから、動きも、音楽の歌詞も分からないはずだから)。
 
だからこその「シネマ組踊」です。
字幕が最高に見やすい状態で入っていて、ミニマルな表現であっても、表情のアップ、目のアップ、背中で演技してるときは、「背中」を写して、(ここをみて!!)を、さりげなく、超さりげなく、ズームアップして、そこに目がいくように編集されているので、「組踊、舞台で見たときはよく分からなかったけど、映画で見たら、すごい面白かった! 組踊って、こんな歌舞劇だったんだ」と、沖縄の人まで言ってるんだそうです。
 
昨今、日本人の伝統文化離れが進んでいると言われますが、沖縄(琉球古典芸能)は、日本の中でも盛んで、後継者も多く、(古典芸能愛)が強いエリアなんですね。
 
だからこその挑戦なんです。この作品。
 
で、沖縄の人たちがナイチに来て一番思ってるのは、「どうしてナイチの人たちは、自分のふるさとの古言芸能を誇りだと思ってないんだろ」ということなんです。
 
この感覚、沖縄の古典芸能の現場にくると、よくわかります。
舞台だと敷居が高い方は、ぜひこちらの「シネマ組踊 孝行の巻」をお試しにご覧になられてみてください。
 
私、お勧めします!