【能「定家」を想う その一】
年明け、1/17土曜、準老女物といわれる大曲「定家」を勤めさせて頂きます。

私の恩師富山禮子先生は、74歳でこの曲を舞われました。
この「定家」は、流儀の先生方先輩方は皆さん、大体還暦前後に勤められれてきました。
私は52歳。早く舞わせて頂ける有難さを想います。

何故、この歳で定家なのかというと、端的に言えば、もう殆ど舞わせて頂いてきてもう残ってなかった、という側面もありますが、若くてチャレンジさせて頂き、また60歳になったら、させて頂くということも出来るとの思いもあります。
あと、昨年の大病の経験から得られたことが、上手く言えませんが、身体は一度半身全麻痺となり不自由になりましたが、表現としては活かせるところもあるのではと思ったところもあります。

そんな中で、恩師富山先生が私に仰られた言葉を忘れることが出来ません。

富山先生は、先先代79世宗家金春信高先生から強く強くお勧め頂き、富山先生66歳の時(私が20歳の時)、老女物の最高峰「伯母捨」を舞われました。
「伯母捨」のシテを勤めるのは当時、金春信高先生そして人間国宝櫻間道雄先生以来富山先生で史上3人目、女性能楽師としては流儀として史上初の快挙でした。
当然、この「伯母捨」は、富山先生の師匠でもある私の祖父梅村平史朗は、舞えなかった曲でした。

ある時、富山先生が、私にこう仰いました。
「私は今度、有難くも伯母捨を舞わせて頂くことが出来て、一応、梅村先生を勤めた曲としては追い抜くことになるけれども、私はまだまだ梅村先生の足元にも及ばないと思ってるわよ。
貴方はこれから、大曲秘曲を次々と舞わせて頂いて、私が10年かかったところをあっという間に数年で追い抜いていくでしょう。
だけど、勘違いするんじゃないわよ。それで、梅村先生や私を追い越したなんて思うんじゃないわよ。芸というのは、そんなに簡単なものじゃないわよ。」

と強く言われました。
32年経った今も鮮明に覚えています。
なので、私は自惚れることはありません。

私の大切な芸訓です。 
先人に少しでも近づけるように、虚心坦懐に勤めさせて頂きます。

   
写真は、2016年、松尾芸能賞を受賞された恩師富山禮子先生と。

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第20回記念山井綱雄之會
■日時: 2026年1月17日(土)
13時開演 12時開場
■場所: 国立能楽堂
東京都渋谷区千駄ケ谷4丁目18−1
■番組:
能「経政」山井綱大
狂言「佐渡狐」三宅右矩
能「定家」山井綱雄
能「邯鄲」村岡聖美
■チケット料金:
S席/正面 12,000円
A席/脇・中正面前方 10,000円
B席/脇・中正面後方 8,000円
25歳以下B席3,000円
■チケット受付
・後援会「綱雄の会」先行受付 9月10日(水)~
 山井綱雄事務所にて受付
・一般発売 9月24日(水)~
 カンフェティおよび山井綱雄事務所にて受付

◇カンフェティチケットセンター
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