先日3月15日土曜日、金春宗家一門の会 円満井会定例能にて、本田芳樹くん布由樹くん兄弟による能「千手」の地頭を勤めさせて頂きました。
能「千手」は良い能ですが、中々大変ですね、、、(汗)
何とか謡わせて頂きました。
能の地頭(じがしら)は能のコーラス隊である地謡(じうたい)のリーダーで地味な役ですが、中々に大変でかつ重要な役です。
謡が不味ければ能の根本が成り立ちませんし、上手くいって当たり前、文言を正確に謡うことは勿論、曲の雰囲気や位、囃子方のリズムにもキッチリ合わせて行かねばならず、沢山気を使います、、、
30年位前に、芳樹くん布由樹くんの父君・本田光洋先生が「鵺」という能の地頭で、私は当時二十歳前後、地謡前列で謡っておりました。
前半のクセという場面、後半の鵺の化け物が退治される場面、、、地頭光洋先生の謡は変幻自在で、囃子に囚われず正に私の祖父もそう謡っていたという「合って合わず」の謡で、スゴイなと思いながら、一緒に謡わせて頂いていました。
当時、79世宗家金春信高先生がまだお元気で、信高先生は客席脇正面最後列でよく弟子たちの舞台をご覧になられていたのですが、この能鵺が終わるやいなや楽屋に戻られて、地頭の光洋先生に、「いやぁ、面白かったよ。いい地謡だった!」と声を弾ませて光洋先生に声をかけられて、光洋先生が大変に恐縮されていました。
そんなことを思い出していたら、実はもうあの時の、信高先生と光洋先生の年代に、光洋先生と私がちょうどなっているのに気が付きました、、、。
舞台は当然お客様のために行うものなのですが、やはり私としては光洋先生に少しでも「おっ。やるな。」と思わせたい。
これが私の密かな想いでした。(これからもそうですが)
さて今回は、、、
終わった後、少し小さな声で光洋先生から「良かったよ」と一言言って頂けました!
少しホッとしたというか、嬉しかったです。
私も5歳の初舞台から芸歴47年を数えますが、まだまだ上がおられます!
「命には終わりあり。能は果てあるべからず」とは世阿弥の名言。
まだまだ上を目指して頑張ります!!
でも、地頭出来るほどに回復出来たことが第一の喜びです!