【能定家を想う その三】
能「定家」は、世阿弥の娘婿だった、我が流派中興の祖・57世宗家金春禅竹の作品です。
とてもストレートな世阿弥作品と違い、感情が、世界が、空間が、景色がウネリます!作品がグルーヴし、一筋縄ではないのが禅竹作品の特徴です!
能「野宮」、そしてこの能「定家」はその典型かと思います。
能「定家」の主人公 式子内親王は、若くして賀茂神社に仕える斎院となり、清浄を保つため恋愛や結婚が禁じられ世俗から切り離され、孤独・祈りの中で生きる運命を背負います。
また、式子内親王は、長く病に苦しんだともいわれているそうです。
なので、彼女の歌は、孤独と祈り、抑制された沈黙の奥にある情熱を表す歌が多いともいわれます。
能「定家」にも登場する歌
玉の緒よ 絶えなば絶えね ながらへば
忍ぶることの 弱りもぞする
(命よ、切れるなら切れてしまえ。
生きながらえれば、忍んでいる心が弱ってしまうから)
抑えた表現の中の、爆発しそうな慟哭を表していますね。
また、「定家葛」という植物が式子内親王の墓に纏わりついている、という所から能の初めの方の場面では描きます。
この能でとても重要なのが、この「定家葛」。
これは藤原定家の、式子内親王への断ち切れない恋心や執着執念を表します。
この能「定家」では、恋は成就せず、成仏も出来ない、地獄に堕ちても尚現在も続く恋の執着を非常に厳しい結末として描いています。
式子内親王の亡霊は、自ら、定家葛に身を纏われ、成仏を否定し、定家の執心と共に、地獄の底に沈みます。衝撃のラストシーンです。
世阿弥は、「鎮魂、魂の救済」を多く描きました。
しかし、この能定家は、人間の弱さを最後まで露呈し、それをも肯定しています。
式子内親王の歌に込められた恋の情念に、定家葛となった定家の執念をも絡ませて、残酷に、美しく描いた、狂気の地獄絵図。
これこそが、正に、金春禅竹作品の特徴!
正に「金春禅竹ワールド」全開の作品かなと感じます!
故に、式子内親王を勤める演者にも、それ相応のキャリアが求められる訳ですね。
この、残酷に、美しく、狂気の地獄絵図を描くのは、3年前にさせて頂き、また来年世界の大舞台で演じることになっているシェイクスピア作品「タイタス」にも通底するイズムかと。
私の中に、正に今、金春禅竹と、シェイクスピアが同居しています!
【第20回記念山井綱雄之會】
■日時: 2026年1月17日(土)
13時開演 12時開場
■場所: 国立能楽堂
東京都渋谷区千駄ケ谷4丁目18−1
■番組:
能「経政」山井綱大
狂言「佐渡狐」三宅右矩
能「定家」山井綱雄
能「邯鄲」村岡聖美
■チケット料金:
S席/正面 12,000円
A席/脇・中正面前方 10,000円
B席/脇・中正面後方 8,000円
25歳以下B席3,000円
■チケット受付
カンフェティおよび山井綱雄事務所にて受付
◇カンフェティチケットセンター
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◇主催・チケット受付
山井綱雄事務所/綱雄の会事務局
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