我々難聴者には、筆記通訳者による、要約筆記(人の音声を文字にして出すサービス)が必須です。その音声を文字にする方法の一つとして、「リスピーク」という方法があります。これは、騒がしい環境や、響きの多い環境、会議や対談など、直接音声を認識すると誤りが多くなることが予想されるときに使われる技術です。このような環境では、健聴者でも聞き取りがむずかしいことがあり、ましてや難聴者には歯が立ちません。リスピークとは、話者の近くにいる聴者が話し手の発言をすぐさま明確な声で繰り返す。これを筆記者が聞いて文字にするのです。
私はこのリスピークという方式を昔から知ってはいたが、見るのは初めてだった。このほど所属する、川崎市中途失聴・難聴者協会の主催で、そのデモンストレーションが行われ、見学した。
デモンストレーションはこの方面に詳しい、筑波技術大学の先生方により行われた。
最初に、リスピーク方式とその利点・欠点などの説明、そしてデモンストレーションだ。
デモは、
1)リスピークなしの生の文字起こし
2)同じ部屋でのリスピークでの文字起こし
3)別の部屋でのリスピークでの文字起こし
の順で実施された。音声は録画されたビデオを使った。文字起こしは人手でななく、音声認識ソフト(UDトーク)を使った。ビデオの声は鮮明度が悪い。
1)のリスピーク無しでは起こした文字ではかなりの誤変換が見受けられた。
2)は話者とリスピーカーが同じ部屋(話者の近く)にいて、リスピークする。これはかなり明瞭に正しく文字起こしされる
3)は話者とは別の部屋にリスピーカーが居る状況て(つまり話者の側ではない)
これは話者とリスピーカーが遠隔地など離れたところにいることを想定している。これでもまずまずの文字起こしになった。
私がリスピーク方式を知ったのは15年以上前だ。当時はパソコンやスマホによる音声認識ソフトなどなかった時代なので、文字起こしは要約筆記者が行ったはずだ。
そして、3)のような別の部屋でのリスピークなどあり得なかっただろう。
要約筆記者無しで、しかも遠隔地でのリスピークは技術の進歩のたまものだろう。
そして、機械による音声認識技術が更に進歩すれば、不鮮明な音声をも、音声認識ソフトが正しく文字にしてくれる時代がくるに違いない。その時にはリスピーク自体が必要なくなるにの違いない。