【解説】「BassPLUS+」まずロードスター用から。 | くるまの達人

くるまの達人

とか、タイトルで謳いながら、実はただの日記だったりするけど、いいですか?

おはようございます。

そろそろ今月中に書きあげなければな
らない原稿のイメージを創りあげなけ
ればならない時期に入っていて、頭の
中でずっとそのことを考えています。
取材で得たこと、調べて知ったことを
熟成させて、雑味を取り除いて取り除
いて、これだ! という姿が見えたら、
Macの前に座り込んで一気に書きあげ
ます。いつも、そういうスタイルです。

最近の書き物は記名でないものが多い
のですが、そのうちの1つは、きっと
クルマ好きの皆さんの目に留まること
になると思います。少しウルッとくる
ような原稿をリクエストされています
が、なんの脚色もせずにそういう物語
になると思います。どうぞ期待してい
てください。やはり無記名ですが、嗚
呼ヤマグチが書いたんだなと気づいて
くださる方がいるかもしれません。



さて「BassPLUS+」の話をしましょう。
少し長いですよ。




すでに完成していて、何名かの愛車に
装着済みのこのアイテムは、まだブロ
グできちんと解説できていません。ス
ピーカーシステムの申し込みを受け付
けているウェブサイトでの展開も間に
合っておらず、このブログで概要を一
度紹介
しただけにも係わらず、即日完
売で、現在、部品手配の都合で製作が
止まっている状態です。


NAロードスターにおける走行時の低
音消失という問題をどうにか解決でき
ないか、という思案の中から生まれた
アイデアのひとつを試したことが、製
作のきっかけになりました。


スピーカーシステムにパワーアンプキ
ットとサブウーファーキットを組み合
わせたNAロードスターでは、実はす
でに相当な音量の低音が出ています。
システムの低音が足らないのではなく、
それを上回る大騒ぎな走行音や振動が、
システムからの低音を打ち消したり覆
い被さったりして、低音の存在を感じ
なくさせていることが、NAロードス
ターにおける走行時の低音不足の原因
です。

常識的な解決方法は2つあります。

1つは、さらに大音量の低音を再生し
て、走行音なにするものぞ、という状
態にしてしまうことです。けれどもこ
の方法では、耳がおかしくなります。
街宣車の巨大なラッパスピーカーの中
に頭を突っ込んだような状態が、体に
よいわけなく、そもそも再生音を音楽
として成り立たせることができません。
ですから、この方法はなし、です。

もう1つは、走行音を減らすことです。
例えばデッドニング。NAロードスタ
ーでは、走行中の床の共振が盛大なの
で、床一面に制震シートを貼り込みま
す。エンジンルームと室内を隔ててい
るパネルも、リアトレイも、トランク
ルームも、ドアパネルも、どこもかし
こも遮音に十分な設計ではないので、
そのあたりもまとめて制振材を貼り込
みます。あれ、屋根がありません。こ
れは静かな車内の実現にとって致命的
ですから、しっかりしたハードトップ
を載せましょう。ずいぶん重くなりま
した、オープンエアもなくなりました。
さて、これはロードスターなのでしょ
うか。この方法もなし、です。


さて、困りました。

BassPLUS+の発想は、そんなどん詰ま
りの状況をなんとか打破したいという
ところから始まっています。


ロードスターには、かつてボディソニ
ックという純正アイテムの設定があり
ました。この発想は大いに参考になっ
ています。実は現在製作しているサブ
ウーファーキットを完成させる前に、
今回使用したバイブレーターユニット
よりずっと大きな機材を助手席の足元
にセットしてテストをしたことがあり
ます。

かつてのボディソニックは、バイブレ
ーターの振動を点のような小さな面積
で直接感じているようなわざとらしい
感触があり、ボディパネル全体を震わ
せればその感触を回避できると考えて
の試行でした。結局、両手にいっぱい
になるような巨大なバイブレーターを
もってしても、車体全体を震わせるよ
うなことはできなかったわけです。お
蔵入りした試みに使った巨大なバイブ
レーターは、今でもガレージのどこか
に、その時試作した取り付けパネルに
くっついたまま転がっています。

BassPLUS+に使用しているバイブレー
ターは、その時に使用したものよりも
ずっと小型です。第一義に、シートに
取り付けなければならないというスペ
ース的な課題をクリアしなければなら
なかったからです。こんな小さなもの
で大丈夫かな、と思えるほど小型です。

その小型バイブレーターを、シートの
骨格材に取り付けることを考えました。
ボディソニックのバイブレーターの存
在を点で感じる不自然さを回避するた
めには、シート全体を震わせればいい
と考えたわけです。またシートの骨格
材を巨大な振動板と見立てれば、振動
の増幅効果も見込めます。

NAロードスターの純正シートと床面
のクリアランスは、ほんのわずかです。
シートの前後調整などシートの性能を
完全に保ったままで、シート全体に振
動が伝わえられるような硬質なパネル
は一カ所しかありませんでしたが、最
大2個まで装着することができる広さ
がありました。


結論から言うと、効果は絶大です。

骨格材を通じてシート全体を震わせる
ようにしたお陰で、ボディソニックに
あったような点で振動を感じる不自然
さもありません。スピーカーシステム
から聞こえる音楽や、サブウーファー
から伝わる重低音とうまく馴染ませて、
音楽として一体化させるには少し念入
りな装着後のセッティングが必要にな
りますが、うまく合わせてやれば、今
まで経験したことのない躍動感や奥深
さを音楽に盛り込むことができます。


体に感じる振動の強さは、シートの構
造によって変わりますが、純正シート
であれば1脚1個でも十分な効果を得
ることができます。フルバケットのよ
うな、全体が1つの硬質なシェルでで
きているシートでは、とても効率的に
効果を得られます。好みもあるので、
もし足らなければシートの取り付けス
ペースを考慮しながら、1脚2個以上
のBassPLUS+を装着することも可能で
す。パワーアンプのインピーダンスと
のマッチングの問題もあるので、アン
プの出力端子1チャンネルにつき2個
までと考えていいと思います。実際、
2個までで十分なので、わたしはそれ
以上を試したことがありません。

1脚あたりのBassPLUS+の数を増やす
ことによる効果は、振動の大きさより
も、むしろ小さな振動から大きな振動
までのつながりのよさにあるように思
えます。そっと振動してほしいときに
も不足感なくじんわりと低音存在を体
に伝えてくれますし、音楽が激しいビ
ート感溢れるパートに入れば、もちろ
ん痺れるような刺激で音楽を盛り上げ
てくれます。


先日、すでにフルキットを装着してく
ださっているオーナーのNAロードス
ターに、BassPLUS+を装着したときの
動画を紹介します。サブウーファーを
含めたフルキットでの音楽環境にすっ
かり慣れているはずの彼女が、とても
驚いている様子が記録されています。
まずは、ご覧ください。

※うまく表示されない場合は、画面中の
「facebookで見る」というところをク
リックすれば、見ることができます。





実は、彼女が驚いているBassPLUS+が
加わったことによる新しい効果は、動
画を通じてお伝えすることができませ
ん。なぜなら、それは音ではないから
です。録音できないんです。


もう1つの動画を紹介します。同じと
きにガレージを訪ねてくれた彼のNA
ロードスターにも、すでにフルキット
が装着されています。

動画の解説を先に記しておきます。

この動画は、BassPLUS+ありの状態で
始まっています。もちろんサブウーフ
ァーも鳴っています。

次にBassPLUS+だけを消してます。今
までこれなんです、とわたしが言って
いる辺りでは、BassPLUS+は鳴ってい
ません。

もう一度BassPLUS+を鳴らして(較べ
ると相当違うでしょと言っている辺り)、

その後、BassPLUS+とサブウーファー
だけを鳴らすようにコントローラーを
調整してます。これくらいしか響いて
いないんです、と言っている辺り、動
画からはほとんど何も聞こえないと思
います。

これがBassPLUS+の効果で、付け加え
るならこれがわたしのサブウーファー
の使い方、です。




どうですか。動画の後半でほとんど無
音にしか聞こえない効果が、1本目の
動画で、彼女が「すごーーい!」と思
わず声をあげてくれた音楽体験を実現
したBassPLUS+の仕事の成果です。


BassPLUS+は、それだけを付け足して
も効果を発揮しません。高音から低音
までしっかりと音で表現されているベ
ースがなければ、振動だけが浮かび上
がるような不自然な感じになります。
そして用意すべき音楽再生環境のベー
スは、すでに十分に低音域が再生され
ている必要があります。BassPLUS+が
発生させるのは、もはや音の領域以下
の振動です。

まずスピーカーシステムで美しく、表
情豊かな音楽再生の中心となる音をつ
くります。そして、サブウーファーで
十数センチ程度のスピーカーでは絶対
に再現不可能なしっかりとした低音を
再生して、スピーカーシステムから聞
こえてくる音楽にうまく馴染ませます。
そして、BassPLUS+の出番となります。


そのようにして加えたBassPLUS+の効
果は、単に低音の補完という意味で言
えば、例えば大観山のパーキングエリ
アに向かって箱根の上り坂をグングン
加速しているときでも、しっかり音楽
のビートを感じさせてくれるものです。

そしてこれは副次的に得られたことな
のですが、音楽の輪郭が明らかにくっ
きりします。低音だけでなく、中音域、
高音域の聞こえ方がさらにくっきり明
瞭になります。既にスピーカーシステ
ムを楽しんでいただいている方にはお
わかりのあのスピーカーシステムのク
リアな印象から、さらにベールを一枚
剥いだような音世界が拡がります。1
本目の動画の1曲目でボーカルが聞こ
えた瞬間の「すごーい!」や、2曲目
の終わり頃、繰り返される重厚なリズ
ムの上にパーカッションが入ってくる
あたりでの彼女の拍手は、全身で感じ
ている低音の中から、中高音域が3D
映像のように浮かび上がって聞こえて
くるような分離感へのトキメキだと理
解しています。


2本目の動画でもお分かりのように、
この興奮は実際にシートに座っている
人だけのものです。あいかわらずのコ
ロナ禍で、皆さんに心置きなく集まっ
ていただけるような試聴の機会を設け
にくい状況が続いています。ですので
最初に製作した10セットに手を上げ
てくださった方々は、聴かずのオーダ
ーというわけで、本当に心苦しく思っ
ています。けれども例えば1本目の動
画で紹介させていただいたNAロード
スターの車内で起こったこの興奮の様
子は、BassPLUS+が想定通り、あるい
はそれ以上の効果を発揮していると確
信させてくれます。余談ですが、この
黒いロードスター、ご夫婦で代わり代
わり運転をしながら、なんと長崎から
自走で茅ヶ崎のわたしのガレージまで
やって来てくれました。丁寧な取り付
けはもちろん、使われているヘッドユ
ニットに搭載されている機能を使い切
ってみっちり念入りにサウンドセット
アップもしておきました。それが、こ
のような笑顔とともに、ご夫婦のロー
ドスターとの日々に新しいトキメキを
加えることができているのであれば、
こんなにうれしいことはありません。

文末になりましたが、ベースボードに
は、何種類かの素材を試した結果、
CFRP(ドライカーボン)を使用し
ました。今回もかなり分厚い1枚もの
です。バイブレーターにおまけで付属
されているプラスチック製はリアルに
おまけ程度の効果しか得られず、木製
は立ち上がりのスピード感も切れ味も
悪い上に品質が安定しないという理由
でボツ。CFRPは高価な材料なので、
それを使うことで効果が見込まれると
ころにしか使いませんが、今回のよう
なシーンでは、まさに他に代わる手が
ないほどの適材適所ぶりだと思います。



もうひとつ。

言い訳ばかりで失礼な話ですが、あい
かわらず寝る時間が取れないほど忙し
くしています。BassPLUS+のお申し込
みをいただくウェブサイトのページを
作る時間がまったく取れません。

BassPLUS+のお申し込みについては、
車種別に専用のハーネスを製作する都
合があり、現在ご使用中のスピーカー
システムのお申し込み時にご使用いた
だいたアドレスか、または下記のウェ
ブサイト中で該当する車種用スピーカ
ーシステムのお申し込みアドレス宛へ
お願いします。

【yamaguchi Speaker System】



★BassPLUS+

1セット(2個): 27,500円

25,000円+2,500円(消費税)
です。

5月製作分はありません。今お申し込
みいただければ、6月中にはお届けで
きる予定です。またブログ中で解説さ
せていただいた通りの理由から、NA
/NDロードスタースピーカーシステ
ムをフルキットでご愛用いただいてい
る方のみへの製作とさせていただきま
す。

現在開発中のNCロードスタースピー
カーシステムとのマッチングテストは、
開発車を提供してくださっているオー
ナー氏の軽井沢ミーティングへの参加
に間に合わせるべく準備中です。

あの頃系メルセデスへのマッチングも
もちろん考えています。

どうぞよろしくお願いします。



※ぜひ、Facebookでわたしをフォロー
してください。ブログよりも更新が楽
なので、スピーカーシステムの話、ク
ルマの話、はるかにたくさんの発信を
しています。簡単な動画ですが、スピ
ーカーシステムの音を車内で録音した
ファイルも、Facebook内にはたくさ
んあります。下のFacebookのURL
から飛べます。



山口宗久(YAMAGUCHI-MUNEHISA.COM)
webTV「モーター日本」
facebook / Yamaguchi Munehisa
Twitter / nineover