NDロードスター・スピーカーシステムについて(2) | くるまの達人

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とか、タイトルで謳いながら、実はただの日記だったりするけど、いいですか?

昨日のブログに続いて「NDロードス
ター・スピーカーシステム」の仕様に
ついてお話しさせていただきます。
ドライカーボン製バッフルボードの理
由(わけ)
の次は、メインスピーカー
ユニット選定の話です。



【スキャンスピーク製
 10F/4424G00 メインスピーカー】


NDロードスター・スピーカーシステ
ムのメインスピーカーには、デンマー
ク製のスキャンスピーク10F/4424G00
というフルレンジユニットを採用しま
した。口径は4インチ、75ミリほど
の小さなユニットです。



NDロードスターのドアパネルには、
17センチ口径のユニットでも十分に
取り付けが可能な大きな穴が空いてい
るのですが、スピーカーは大きければ
よいというものではないようです。
これは、あの頃系メルセデスやNAロ
ードスター用のスピーカーシステムを
創る過程で大いに勉強したことです。

スピーカーユニットの選定にあたって
留意しなければならないのは、まずそ
のスピーカーが果たさなければならな
い目的をはっきりさせることです。N
Dロードスターの場合は、ツィーター
が標準装備されています。BOSEサ
ウンドシステム装着車では純正でサブ
ウーファーが付いています。その中で、
メインユニットが果たさなければなら
ない目的は、どれだけ音楽の美しさや
躍動感を表現できるかという一点にあ
ります。突き抜けるような高音や、腰
を揺らすような重低音をメインユニッ
トに求める必要はありません。

一般的に、一桁万円程度の価格帯で、
低い音も高い音も出るというスピーカ
ーユニットは、無闇に大口径になりが
ちで、数値で表現される周波数特性は
ともかく、低い音も高い音も掘り下げ
感が希薄で、音楽表現でとても大切な
中音域の表現力まで犠牲になっている
ことが多いです。

そして、FRP製のエンクロージャー
を使った密閉式で鳴らすことを前提と
したスピーカーシステムでは、限られ
たエンクロージャー容量とのバランス
もあります。いろいろな考え方があり
ますが、わたしはドアの戸袋をエンク
ロージャーに見立てた音作りには、限
界があると考えています。

1つ潰してはまた現れるような課題を
丁寧に解決していかなければならない
音づくりにおいて、ドアの戸袋を静音
シートで塞いで、はいエンクロージャ
ーのできあがりという工程は、あまり
にザクッとしていますし、不確定要素
が多すぎです。加えて、ドアはヒンジ
とドアキャッチでボディから浮いた存
在ですから、ボディを伝って体で感じ
るような重低音を再現することは極め
て難しいと考えています。

まず最初にサイズや特性、メーカーご
とに存在する音の傾向で選別した20
種類くらいのユニットを試聴して、そ
の中から確か4セットを実際にロード
スターに装着しました。

装着前の最有力候補は、オーディオ・
ニラヴァーナというアメリカ製の13
センチ口径のユニットでした。フルレ
ンジに徹底的にこだわるカリフォルニ
アのオーディオ趣味人が、勢い余って
ユニットづくりを始めてしまったとい
うメーカーの成り立ちにも共感を覚え
ましたし、明るめの音でスコーン! 
と響く鳴り味が好感触でした。加えて
13センチという口径は、ボーカルや
サックスなどの帯域が素晴らしく自然
になる傾向があります。大昔にオーデ
ィオに凝り始めた頃、W126という
自分のクルマに装着したのもフォーカ
ルというメーカーの13センチユニッ
トでした。16センチもあったのです
が、あえて選んだ13センチの美しい
鳴りっぷりは本当に素晴らしいもので
した。

少し脱線しましたね。

ところがNDロードスター用として選
んだのは、スキャンスピーク製の口径
8センチ足らずのユニットでした。実
車に装着して聴いて、即決でした。エ
ンクロージャーの容量とのマッチング
もよく、圧倒的な美しさと力強さを備
えた兼ね備え、かつ音楽性の高い表現
力が一発で気に入りました。

ところがところが、実はそのユニット
は、それから約2週間後にボツになり
ます。スキャンスピークの10Fシリ
ーズには、コーン紙やフレームなどが
同じ構成で、マグネットがさらに大き
なモデルが存在します。ところが、価
格が1万円以上も高額なので最初に選
定した4モデルに加えていなかったん
です。ひとまず選んだユニットも、あ
のころ系メルセデス用も含めた歴代ス
ピーカーシステムの中ですでに最高額
でした。ND用では、ツィーターもセ
ットに含めなければなりません。バッ
フルボードをドライカーボン性にする
かどうか、と同じ理由で除外していた
選択肢でした。

けれども、これよりもさらによくなる
可能性があると思う気持ちが抑えきれ
なくなり、テスト用に1セット購入し
て鳴らしてみることにしました。

……参りました。即決です。

2周りほど大きなネオジウムマグネッ
トの威力は絶大でした。

まず大きな音量でも破綻しません。通
常の音楽鑑賞ではまず設定しないほど
のボリュームに上げても、暴れ始める
気配なくしっかりと鳴ってくれます。
コーン紙の口径が小さいと、音量的に
は不利なのですが、どんどんパワーを
入れていっても破綻しません。これは、
オープンカーにとってとてつもなく魅
力的な性能です。

そして、強烈な磁力(作業中の工具が
かなり離れた距離から吸い寄せられ、
一旦くっつくと真っ直ぐに引っ張って
も離すことができず、斜めに引き剥が
すようにしなければなりません。製作
時の作業性は最悪です……)は微細な
音楽信号を、細やかなディテールの波
形のまま緻密になぞるように再生して
くれます。

繊細で細やかな小さな音から、突然破
裂するようなアタックの強い大きな音
に移行するような音楽表現も、あっさ
りとこなしてくれます。

そしてここがとても肝心なことなので
すが、そのような鳴り方のすべてがひ
とつの音楽表現として素晴らしくよく
まとまり、美しいです。

スキャンスピーク製のユニットは、あ
の頃系メルセデス用スピーカーシステ
ムの上級モデルに、さらに小径の5F
というユニットを採用しています。

今回NDロードスター用として選んだ
10F/4424G00は、そのユニ
ットのさらに1.5倍以上もする高級
ユニットです。

またやってしまいました……。果たし
て完成品に常識的な価格が設定できる
のだろうか、という不安を抱えながら
の開発でした。ちょうど去年の7月か
ら8月にかけてのことです。


写真は、大きなマグネットの方も一応
テストをしておこう、という動機で1
セット購入したときのものです。

よいユニットを使うだけでは良い音を
実現することはできませんが、よいユ
ニットの鳴らし方を徹底的に磨き上げ
ると信じられないような世界を実現す
ることができます。それは、口径が大
きいとか小さいとかということと直接
は関係ないと思います。

完成したNDロードスター・スピーカ
ーシステムの音を聴いてもらえれば、
わたしが言いたいことのほとんど全て
を理解していただけると思います。な
るべく早く、皆さんに聴いていただけ
る機会を設けたいと思います。


次は、「FRP製エンクロージャー」
について
お話しします。


【NDロードスタースピーカーシステム】 



山口宗久(YAMAGUCHI-MUNEHISA.COM)
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