2018年6月号の「クルマの達人」 | くるまの達人

くるまの達人

とか、タイトルで謳いながら、実はただの日記だったりするけど、いいですか?

連休の中日です。カレンダーの色味ど
おりにお仕事をされていますか、それ
とも休暇を楽しまれていますか。

赤い日も黒く塗りつぶしたゴールデン
ウィークだよ、という方もいらっしゃ
るでしょう。わたしももちろんその一
人です。まあ、黄金週間ってくらいで
すからね。がっつりいきましょうや。


世の中には知らない人が決めたルール
と、自分で決めたルールの2つがあり
ます。カレンダーの色なんかは、自分
で決めたわけでもないのに、漠然と従
うことになっているルールの最たるも
のであるわけですが、影響力の大きさ
から言えば、そこに人生の日々を過ご
す原理原則のようなものがあるんだよ、
と諭されれば、そうかもしれないねと
思えそうな気もします。

クルマを眺めたり分解したりしている
とね、そういうことって意外とたくさ
ん見つかるものです。

でも、もう少ししつこく考えてゆくと、
そこには真理しか残らないんですね。
本当の真理です。神様が決めたルール、
なんて言い方をすると、妙な教祖をあ
がめるタイプなんじゃないかと勘ぐら
れそうですが、そういうことではなく、
人は生まれたらやがて死ぬ、みたいな
ことです。なぜその個が生まれてきた
のが、なぜ死ぬことに決まっているの
かなんてことは、なにひとつ解明でき
なくても、連綿とそういうことになっ
ている大元のようなルールが、この世
にはあるんですね。そしてクルマも、
その上で成りたっている。

いつもそう思っているようなことなの
ですが、米山さんと話していて、そう
だよねやっぱり、と改めて思いました。

そういうメカニックです。


「クルマの達人」
サンライズオート
米山孝雄

わたしはクルマを整備するのが好きだ。
もちろん不具合を直したり、それに備
えたりするわけだが、それと同じくら
い仕事に行きづまったときの気分転換
という意味が強い。じっとクルマの一
部を眺めて、どういう仕組みなんだろ
うとか、どうしてこういうカタチや素
材なんだろうということを考えている
と、不思議と落ち着いてくる。合点が
ゆくと頭がすっきりして、さぁまた暗
礁に乗り上げてしまった原稿を進めよ
うかという気分になる。

クルマは人間が作った機械で、しかも
どんなゴージャスな内外装を備えた高
級車であっても、実は個々の部品や機
能はなるべく無駄のない、できるだけ
シンプルで安く済むような設計がされ
ている。つまり物理や電気、材料の基
本的な道理を理解すれば、それを設計
した人間の考えの道筋を辿ることはそ
れほど難しいことではない。そしてわ
たしにしてみれば、その道筋を自分の
頭の中にあるロジックで解明するのが
楽しくて仕方ないのである。もっとも
道筋を辿ってばかりいるせいで、わた
しの整備はいつまで経っても終わらな
いのだけど。

「プロのメカニックというのは、正確、
かつ早く機械の整備ができる腕前があ
る人のことを言うんだと思う。決して
工具さばきが早くない私は、プロのメ
カニックと呼べないのかもしれないね。

もう1つあるよ。機械にはそれを設計
した人が必ずいる。高度で複雑な計算
式を駆使して、ゼロから100を生み出す
人のこと。私には、そこまでのことは
できないから、エンジニアでもない。

さて、私はなんでしょうというわけだ」

大きな手で頬を撫でながらそう言って、
ニヤリと笑った。

「私は、スーパーバイザーなんだと思
う」


米山さんは、若い頃から整備工場で腕
を磨いてきたタイプの整備職人ではな
い。家電製品を製造する工場で、生産
管理の仕事に長く就いていた。頭で作
るエンジニアと、手先で作る製造現場
の間に生じるエンジニアリングの歪み
を見つけ、改善策を発想し、双方に提
案して問題を解決する。そんな日々を
長く過ごしてきた。

「子供の頃から機械いじりが好きでね。
それと同じくらい、仕組みを解明する
ことも好きだった。現象には必ず原因
があるわけ。だから現象を遡ると、必
ず原因に辿りつく。で、その道筋を遡
るために必要な知識は、自然に勉強す
るようになる。

でも機械は知識だけじゃ理解しにくい
ものだから、実際に自分の手で分解し
て観察することも当たり前のようにし
てきた」

わたしが米山さんと知り合ったのは、
わずか数年前。ポルシェもBMWもア
ウディもメルセデスもフェラーリも、
全国から米山さんの整備を受けにやっ
て来る。訪ねる度に、違うクルマに工
具を掛けている。

「メーカーじゃないんだよ、クルマは。
どんなクルマでも、道理を理解してか
ら整備を始めてますか、ということが
大切。分からないうちにとりあえず分
解なんていうやり方はしない。

〜冒頭〜




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山口宗久(YAMAGUCHI-MUNEHISA.COM)
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