働くということ・21 吉田猫次郎さん | くるまの達人

くるまの達人

とか、タイトルで謳いながら、実はただの日記だったりするけど、いいですか?

事業再生コンサルタント
吉田猫次郎さん


人って誰かに習ったことが身に付くと
は限りませんよね。好むと好まざるに
関わらずいちばん苦労したことが飯の
種になったり、特技になったりするこ
とってあるでしょ。僕にとって、今や
ってることはそれなんです。

わずか37年の人生の中ですが、何が最
も苦労したか、印象深かったのかとい
うと、借金地獄の体験なわけです。

うっかり連帯保証人になってしまった
のは自分の無知が原因ですが、生きる
か死ぬかと思うような苦労から抜け出
すための方法を、猛烈に調べて勉強し
ました。

それでも自殺を考えるほど追いつめら
れた瞬間もありましたが、どうにかそ
こから抜け出せたときに、この体験を
何かの形で残しておきたいという極め
て個人的な理由でホームページを立ち
上げたんです。

そしたら、思いがけないほどの反響が
寄せられるようになっちゃって。

もちろん仕事にするつもりなんて微塵
もなかったですから、山のように届く
悩みの声にボランティア感覚で答えて
いたんです。

でも、ふと思ったんです。これは求め
られている仕事なんじゃないか、って。

借金相談屋とか借金整理屋とかじゃな
いんですよ。

もちろん弁護士でもありませんから、
僕のところを訪ねれば、きれいさっぱ
り法律的に解決しますというわけでは
ありません。

一気に楽になりたいなら弁護士のとこ
ろへ行って、バンザイしちゃえばいい
わけです。

けれども苦労してでもいいから別の方
法を、と望む人は少なくないんです。

例えば社員の生活を考えると自己破産
はしたくないとか、代々続いた会社を
倒産させずに再建の道を探りたいとか。
裏技だろうが何だろうが、法律に触れ
ないことなら何でも提案します。僕の
仕事は、そういう悩みを抱える人への
コンサルティング業だと思っているん
です。単価は小さいですが、ニーズは
あります。求められているんです。

求められて働くって、これほど楽しい
ことはないと思うんです。

多重債務を抱えた人を相手にして、商
売になるのかっていう人もいます。と
ころが多重債務に陥る経営者って、冒
険心に溢れるいい人材の場合が多いん
ですよ。

もちろんだらしない人もいますが、借
金の整理が一息つくと公私共々すごい
戦力になってくれたりするわけです。
親兄弟にも話せないような悩みを打ち
明けてくれて、それに対して一生懸命
応え一緒に問題を解決していく過程で、
非常に深い人間関係も育ってゆきます
からね。それがまた楽しいわけです。

今の仕事は憧れの職業だったわけでは
なくて、借金地獄という突発的な出来
事によって導かれた道なんですが、そ
れもありかなと。

僕は人生にしても仕事にしても、進ん
でいくのはレールでなくて道の上だと
思うんです。

出発点とゴールがあって、その間に道
がある。

途中ぬかるんでいたり崖崩れがあった
りするかもしれないけど、そういう出
来事が起こることも想定しつつ上手に
迂回しながら進むわけです。

ところがサラリーマンで独立開業を夢
見る人って、成功に向かってのレール
作りに励んでる人ばっかりでしょ。レ
ールの上を進まなくてはいけないとい
うことに固執してると、崖崩れで脱線
したら死ぬしかないわけです。失敗し
たときに上手に逃げることも大切なん
です。

当然最初にイメージしたレール通りに
というわけにはいかないかも知れませ
んが、逃げた先に想像もしなかった楽
しいことが待っている場合もあるじゃ
ないですか。

僕は、ほとほとポジティブ思考なんだ
と思いますよ。

Interview, Writing: 山口宗久


「かもめ」2005年11月号掲載
※内容は、すべて取材時のものです

※記事掲載への思いについて。


山口宗久(YAMAGUCHI-MUNEHISA.COM)
Twitter / nineover
facebook / Yamaguchi Munehisa