働くということ・02 梅森浩一さん | くるまの達人

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とか、タイトルで謳いながら、実はただの日記だったりするけど、いいですか?

1,000人のリストラを敢行した
“クビキラー”
アップダウンサイジング・ジャパン
梅森浩一さん


僕はサラリーマン時代、職務を遂行す
るプロフェッショナルとして1,000人
以上のクビを切ってきました。

最初にクビを切ったときの気持ちを教
えてくれと、よく訪ねられますが、そ
の人の顔すら覚えていません。

サラリーマンとして、特に外資系企業
にとって不要な人材の整理というのは、
至極当然のことなんです。

雇用の関係は、浪花節な人間関係では
なくて、プロフェッショナルとして仕
事を遂行した対価として報酬を受け取
る。評価に値すべき仕事を納めなけれ
ば、当然企業側としは報酬を支払えな
い。つまり、そこに自分のポストがな
くなって当然、というわけです。

僕にとって対価を受け取るための職務
は、そういった人のクビを切ることで
したから、対価を得るためにやったま
でのことなんです。

私情を持ってクビを切りまくったとい
うことではないわけで、そんな過去の
ことを覚えているかと聞かれても、覚
えているわけがないんです。

当然、僕の人生の目標は、もちろんク
ビを切る職務を遂行する人間になるこ
とではありません。

僕は、サラリーマン時代に外資系企業
で活躍できましたが、2年前の8月か
ら「アップダウンサイジング・ジャパ
ン」という人事コンサル組織を立ち上
げ、自らが主宰となって新しいアクシ
ョンを起こしている最中です。傍から
は、そんなに色々な目標があって凄い
ですねという言われ方をするんですけ
ど、自分としてはここまで諦めざるを
得なかったというか、こんなに小さく
なっちゃっという思いはあるんですよ。

実は、サラリーマンほどいいものはな
いんです。

サラリーマンで高給もらっているよう
な人間は、絶対に辞めちゃダメです。
正確に言うと、その人はサラリーマン
として成功している人間ですから。

それなのに、突き動かされるような確
固たるものもなく、もっと他に素晴ら
しい世界があるような妄想を抱くのは、
とてもリスクの大きなことです。

人生、ギャンブル張ってるワケじゃあ
りません。すべてバンッと賭けて、大
化けして大成功するかゼロになるかな
んてことは、やっちゃいけない。それ
じゃバカですよ。でも、多少賭けるチ
ャンスが手に入ったと思ったときは、
賭けてもいいんじゃないですか。

人間には3通り。

カジノテーブルの上にチップを張れな
いでずっとギャラリーやってるタイプ、
手のひらに少々のチップを持って用心
深く参加しているタイプ、その目の前
でガンガン張ってるタイプがあるんで
す。

ほとんどの人は、一生ギャラリーです
ね。参加するどころか、参加するため
のチップを手に入れようともしない。

僕は外資系企業で活躍できたサラリー
マン時代も、これからもすでに数冊出
版が決まっている執筆活動も、すべて
もっと高いところにある目標を実現す
るために必要な通過点としか、考えて
いないんです。

最終的な目標を達成するためのカジノ
テーブルに参加するチップを、自分の
持ってるウリを使って手に入れようと
しているだけなんですよ。

常にリスクヘッジを考えつつ、でも目
標を達成する気持ちを捨てない。

働くことの意義は、そういう気概を持
ち続けることによってのみ、生まれる
んじゃないかと思います。

Interview, Writing: 山口宗久


かもめ・2004年2月号掲載
※内容は、すべて取材時のものです

※記事掲載への思いについて。


山口宗久(YAMAGUCHI-MUNEHISA.COM)
Twitter / nineover
facebook / Yamaguchi Munehisa