醤油醸造発祥の地・紀州湯浅町・其の壱『湯浅最古の醸造蔵・角長』
湯浅町に訪れたものの、夕方だったため殆どの施設が閉まっていたという事で、このままでは済ませられない・・・と翌週、リベンジで再びやってきましたよ、湯浅町に。
早起きをして阪和自動車道を使って有田ICに降りて、その後は国道42号線でやってきました・・・が、ここにたどり着いたのはAM8時。
殆どの施設が10時からしか開かないので、駅前の有料パーキングに停めて仮眠をします。
あちこちに無料の駐車場があるのですが、まだ開いていない内から停めるのもどうかと思いましてここに停めました。
まぁ、有料といっても24時間500円で停められますからね。そんなに負担には感じません。
午前9時になると観光案内所が開くので、オープンと同時にレンタルサイクルの申し込みをします。
篠山のようにこれが電動自転車やったら楽やのになぁ~。
そいつをこれから否が応にも痛感することになります。
先週、立ち寄ったときには閉館していましたが、さすがに今日は開いてましたね(笑)
江戸末期の建物で、岡正酒店だったものを改装して今は岡正という無料休憩所として利用されています。
中にはテーブルや椅子もありますが、飲食物の販売はなく、無人です。
クーラーがとても効いていて気持ちよかったのでしばらく居させてもらいました。
館内には昔の湯浅町にちなんだ写真が多数展示されていました。
さて、これからちとサイクリングで周辺を散策します。
この川は山田川といって醤油造りに適した水質なんだそうです。
しばらく走っているとすぐに海が見えてきました。
ここは紀伊水道です。
この場所は和歌山県夕日100選にも選ばれている場所のようです。
他ではマリーナシティにもあったのを覚えています。
行きは海沿いを通ってきましたが、栖原海水浴場から山側へ移動して戻るんですが、思った以上に坂の勾配がきつく、嫁はんは途中で降りて歩いてました。
電動自転車やったらもうちょっと奥へと進んでたんですけどね、思った以上に過酷な坂道でした。
自転車で通ったルートはこんな感じ。
なかなかええ運動になりました。
元の場所に戻って、さらに先へと進むと川を隔てた左手に古い醤油蔵が・・・ここにいるだけで麹の香りがしてきます。
この川には今殆ど水がありませんが、当時は醤油の運搬に利用されていたそうです。
さっきの見た景色は裏手になるので、醤油蔵のあるメイン通りにやってきました。
昔のままの街並みが現在でも残っているので情緒があって良い雰囲気ですなぁ~。
角長の向かいにある『角長民族博物館』へ入ってみました。
撮影禁止との事なので、写真はありませんが女性スタッフがわかりやすく湯浅町の由来や醤油の事を教えてくれました。
角長は天保12(1841)年に創業します。
現在の日本の醤油の源泉は鎌倉時代(13世紀中ごろ)紀州の禅寺『興国寺』の開祖「法燈円明国師」が当時は南宋(なんそう)と呼ばれていた中国から伝わった嘗味噌(経山寺味噌、現在は金山寺味噌と呼ばれている)がその母体とされています。
嘗味噌の中には瓜・茄子などの野菜から塩の浸透圧によって水分が出てきます。この水は当時の野菜の生産が6~8月であったため黴の発生や腐敗の原因の元であったため捨てるだけのものでしたが、昔あるとき、その汁を利用してみるとこれがなかなかに美味しい。
そこではじめからこの汁を利用するつもりで造れば新しい調味料が誕生するのではないかと考えたのが醤油の始まりだと言われています。
法燈国師という坊さん(1207~1299)が実際に持ち込んだ場所は湯浅町ではなく隣町の由良町です。
ただ由良町は白い岩がきれいな海岸を持つところですが、その白い岩というのが石灰岩であるため、地下水から湧き出る水が醤油造りには適さなかったので、湯浅町で造られるようになったそうです。
こちらは『湯浅醤油・職人蔵』。
100年以上前に実際に使用されていた道具が展示されています。
江戸時代、紀州徳川家の庇護を受けて湯浅町は醤油屋としてピーク時には92軒もありましたが、1949年には23軒にまで減少し、現在では数件が残るのみとなってしまいました。
醤油というのはとても手間のかかるもので、製品化されるまで2年もの歳月が必要となりますが、ヒガシマル醤油やキッコーマン、ヤマサ醤油といった大手企業が主に作っている赤いキャップの醤油は僅か4ヶ月で作られるそうです。
なぜ、こんなに差があるのか・・・赤いキャップの醤油は安価な、いわゆる醤油風味と言ってもいいかもしれません。
まず、使用している原料が違います。
本当の醤油に使用されているのは大豆・小麦・塩、水、これだけです。
対して一般的に売られている赤いキャップの醤油は脱脂加工大豆、アルコールやさまざまな添加物が入っています。
ラベルの裏に書いている原料を見てみたらたくさんカタカナの添加物が列挙しているのがわかると思います。
脱脂加工大豆といえば油を抜いたカス・・・豆腐でいえば「おから」みたいな状態ですね。ヨーグルトでいえば低脂肪といった感じでしょうか。
4か月で出来た赤いキャップの醤油は本物の醤油に近い味を再現することができるようですが、一つだけどうしても醤油と違う点があります。
それは醤油の色。
本物の醤油は醸造する過程で琥珀色に変わっていきますが、赤いキャップの醤油はいくら醸造しても色がつきません。
だからカラメル色素を使って醤油の色を再現しているんです。
体のためにも赤いキャップの醤油ではなく、丸大豆を使用した金色のキャップの醤油を買われたらいかがでしょうか・・・?
創業当時の製法を守り続けている角長は一級品の職人であるけれども、商売人としては向いていないのかもしれません。
安価な原料を使って大量生産する大手醤油メーカーのように大きくなることなく、現在でも湯浅町でほそぼそと営業しているだけなんですから・・・。
でも、そんな事を微塵も気にせず、己の信じる道を角長は歩んでいるようです。
角長では現在でも170年以上前から使用している吉野杉の木桶で作り続けていますが、宝として大事にしているのが天井や梁、桶などに白く付着している「酵母」です。
ある日、蔵の屋根の一部が傷んでその部分の梁から改修したことがあったそうですが、その下の桶だけがうまく発酵しませんでした。
そこで残りの部分を修理するときには昔からの天井を残し、その上の部分だけを新しくしたところ以前と変わらない発酵の仕方をしたことによって、屋根や梁に付着した酵母が樽の中へ降り注いでいるおかげで発酵・熟成しているのだと確信。
湯浅の醤油で唯一、昔ながらの製法で造り続けている角長は今後も古い蔵を維持し、妥協を一切しない醤油造りをしていくんでしょうね。
生醤油と刺身醤油を買いました。
醤油は大豆・小麦・塩・水で造りますが、角長は素材にもこだわりがあるようです。
大豆は岡山産、小麦は岐阜産、仕込みの際の塩水はオーストラリア産の天日塩が用いられているとか・・・塩も国産やと思ってたんですが、違うんですね。
そういえば「伯方の塩」もオーストラリアの塩を使っていたように記憶していますが、オーストラリアの塩ってそれほど質が良いんでしょうか・・・。
そして一般的に使用される「濃口醤油」は大豆が5割、小麦が5割らしいのですが角長では大豆6割、小麦4割で造られているとか。
その割合の方が旨いのかどうか分かりませんが、水はホタルの名所として有名な「湯浅山田の水」を使用していて、その水は山田川の源流へと流れつくそうです。
早速、刺身をスーパーで買ってきて刺身醤油を使ってみました。
・・・ふむ、さすがにこだわって作っているので味に深みがあって、塩辛さの中に甘みも感じられます。
それに自己主張しすぎて刺身の素材そのものの良さを打ち消すことなく、素材を生かす隠れた名脇役といった感じです。
これはいいですね。
日本料理を初めとして今や欠かすことのできない調味料の一つである醤油。
家で作る料理の幅を広げてくれる角家の醤油、ネットだけでなくスーパーでも購入可能なので(私はイオンで見かけました)機会があれば一度ご購入されてみては・・・?
おすすめです。
㈱角長・本店
〒643-0004
和歌山県有田郡湯浅町湯浅7
℡:0737-62-2035
営業時間:9:00~17:00
定休日:年中無休
資料館
営業時間:9:00~12:00/13:00~17:00
休館日:年中無休(不定休)
入館料:無料