戦国時代の

 

真っただ中。

 

 

ヒーローだった


武将がいる。

 

 

 

その

 

武将の下で

 

だれもが

 

働きたいと願った。

 

 


その武将の

 

名前は

 

加藤清正(かとうきよまさ)

 

 

 

 

加藤清正のお墓は

 

彼が生まれた

 

愛知県には無い。

 

 

 

彼の城がある

 

熊本県にも

 

無い。

 

 

じゃあ

 

 

どこにあるのか

 

 

 

生まれ故郷から

 

はるかに北へ

 

東北地方

 

山形県にある。

 

 

なんで?

 

 

理由は、

 

関ヶ原の戦の後、


だれもが

 

徳川家康に服従するなか、


 

加藤清正は

 

ひとり

 

なんとか

 

豊臣家を救おうと

 

動いていたためだった。

 

 


天下を

 

目指す家康にとって

 

加藤清正の

 

動きは

 

脅威だった。

 

 

 

そこで、

 

家康は、


加藤家を

 

熊本県から

 

山形県へ

 

左遷してしまうのだった。

 

 


加藤清正が、

 

まだ若いころ

 

戦(いくさ)で手柄を立て、


肥後の国(熊本県)に

 

居(きょ)を構えた頃の話。

 


 

すぐれた

 

領国経営で

 

国は豊かになり、


加藤清正の名声は

 

日々高まっていった。

 

 

九州全土に、


 

”お仕えするなら、清正公のもとで!” 

 

という空気が流れていた。

 

 

熊本城には

 

仕官希望の

 

浪人が後を絶たなかった。

 

 

加藤家では、

 

良い人材があれば

 

積極的に採用していった。

 


あるとき、

 

三人の男が

 

仕官を希望して

 

やってきた。

 

 

ひとりは

 

年寄り


ひとりは

 

中年


最後の一人は

 

若者

 


 

いつものように、

 

加藤家の重臣たちは

 

希望者に

 

質問をしていった。

 

 

”おまえは加藤家にお仕えしたいと申しているが、なぜじゃ”

 


すると、

 

最初に

 

老人が答えた。

 

 

”わたしは、これまで数々の戦場を渡り歩き、経験を積んでまいりました。


 しかし、ご覧の通り、もう年寄りです。


 昔のように戦場で戦うことは出来ません。


 しかし、茶飲み相手として雇っていただければ、


 きっとお役にたつことと存じます。”

 


重臣たちは、

 

おもわず顔を見合わせた。

 

”茶飲み相手”とは

 

なんたる

 

言い草じゃ


話にならん

 

勘違いも甚(はなは)だしい。

 

 


そして次に、

 

中年の男、


”最近、すこし天下も治まってまいりましたが、

 

 いつなんどき、戦があるかわかりません。


 わたしは

 

 これまで多くの戦場で戦い、

 

 武功もあげてきたつもりです。

 

 しかし、

 

 前の主人は人を見る目がなく、

 

 わたしの力を正当に評価してくれませんでした。

 

 名君の誉れ高い清正公なら、


 きっと

 

 わたしの力を正しく評価し、

 

 活躍の場を与えてくださるものと

 

 確信いたしております。”

 

 

出世意欲満々の男だった。

 

 

 

そして

 

最後に若者が答えた。
 

若者は、


先に話した二人と比べると

 

経験は少なかったが、


とても誠実で、

 

重臣たちの質問に、

 

はきはきと的確に答えていった。

 


 

重臣たちは、


”こやつ、若いながら、しっかりしておる。”


”将来が楽しみじゃ。

 

 三人の中からは、この若者を選ぶことにしよう!”


と、

 

重臣たちのなかで話がまとまった。

 

さっそく

 

重臣たちは、


三人の男たちを待たせたまま、


加藤清正の待つ、

 

別間へ移った。

 

 

そこで、

 

加藤清正を交えて、

 

採用の話し合いがもたれた。

 

 

重臣たちは、


加藤清正へ

 

仕官にやってきた男たちの話と、

 

重臣たちから見た印象を話した。

 

 

重臣

 

”まず、年寄りの方ですが、


 話になりません。

 

 いままでどれほどの手柄を立ててきたかは知りませんが、


 もう戦の最前線では役に立たないので、

 

 茶飲み相手として仕えたい。などと


 申しております。


 まったく図々しい年寄りです。


 
 次に

 

 中年の男ですが、


 あの年になっても、まだ立身出世の夢を見ております。


 また、かつて世話になった主人の悪口をいうなどと最低の男でございます。

 

 ほんとうに力のある者なら、


 あんな次元の低い話はしないものです。


 中年の男も、

 

 採用は見送った方がいいでしょう。

 

 

 最後の若者ですが、


 謙虚でありながら、

 

 質問には的確に答えてくる。

 

 なかなかの切れ者と見ました。

 

 こういう将来のある若者こそ、

 

 これからの加藤家には

 

 必要な人材だと思います。


 

 ぜひ、

 

 この若者を採用したいと考えております。”

 

 

じぃっと

 

重臣たちの話を見つめていた

 

加藤清正は、

 

つぶやいた。

 


”若者は不採用とする。”

 

”老人と、中年の男を採用する。”

 

 

 

はっ?????

 

 

重臣たち

 

”。。。。。。。。。。。。。。。”

 

 

”??????????”

 

 

加藤清正は、

 

重臣たちとは正反対の考えだった。

 

 

重臣たちは、

 

疑問の表情で

 

加藤清正の顔をながめた。

 

 

加藤清正は、

 

その疑問に応えるように、

 

話し始めた。

 

 

”まず、年寄りじゃ

 
 ”茶飲み話”と言っているのは

 

  謙遜(けんそん)じゃ


  お前らの

 

  反応を試しているのじゃ。
 
 
 むしろ老人の方が、

 
 お前たちの反応を見て、

 

 加藤家の値踏み(ねぶみ)していたのだろうよ(笑)


 
 緊張する面接の会場で、

 

 茶飲み話をもちかけてくるぐらいの男だ。


 相当な

 

 経験と自信なければ、

 

 言えないセリフだ。


 ぜひ、

 

 わたしは

 

 その老人と茶飲み話がしてみたい。

 

 採用じゃ。

 

 
 

そして

 

中年の男は、


わが家に軋轢(あつれき)を起こすために採用するのだ。


 

最近、


戦もなく、

 

加藤家も安定し、

 

どうも城内をみていて、


気が抜けてきているように感じておる。


そんな中だからこそ、

 

あえて、

 

こういう男を採用して

 

家中を締めるのだ。


平和な世の中でも、

 

こういうアクの強い男を採用し、

 

城の中に入れておけば、


まわりの者たちも

 

刺激を受け、

 

向上心を失うことなく、


切磋琢磨してゆくことだろう。

 

のんびり

 

ぽか~んとしている、

 

いまの我が家の家臣たちに活を入れるためにも、


こういう

 

ギラギラとした

 

出世意欲を持つ人間を入れることは価値があるのじゃ。

 

 

よいか、

 

平和の時代の採用と、

 

戦争の時代の採用は、

 

採用基準が

 

違うのだ。”

 

 

 

臣たちも、

 

”なるほど”と納得した。

 

 

しかし、

 

殿、


若者は

 

なぜ不採用なのでしょうか?

 

 

すると

 

加藤清正は、


たしかに、

 

お前たちの話を聞いていると、


非常に優秀な若者のようだ。


わしも

 

ぜひ採用したいという気持ちになる。


だから、

 

今回、

 

不採用にした。

 


 

重臣たち

 

???????
 

”。。。。。。。。。。。。。”

 

 

 

加藤清正


いいか、


外から来た若者を優秀だといって採用してしまったら、


いま いる、

 

うちの若者たちは優秀ではない。

 

というようなものではないか。


それでは、

 

うちの若い者が不憫(ふびん)だろう。

 

よいか、

 

若者というのは、


可能性は無限だ。


おまえたち

 

年長者が育てなければならないのだ。


それを怠って(おこたって)、

 

すぐに

 

役に立つ外部の若者を、


引き入れようとする考え方は間違いだ。


わしは、

 

いまいる、

 

うちの若者たちは、

 

みな優秀な者ばかりだと思っている。


もし、

 

その力を

 

うまく発揮できていないとしたら、


それは若者の問題ではない。

 

 

指導している

 

お前たちにこそ

 

問題があるのだ。


 

今いる若者たちを、

 

もっと 

 

もっと力を入れて育てていくことの方が、


先決だと

 

わしは思う。


だから、

 

この若者は

 

不採用としたのだ。

 


重臣たち


”。。。。。。。。。。。。。”

 

 


この話は

 

すぐに

 

城内に

 

伝わる。


 

そして、

 

この話を

 

聞いた、


城内の若者たちの心は

 

想像に難くない。