身近な自然観察 道端の草本/テリミノイヌホオズキ?トゲチシャほか

 最近は毎度のようですが、近縁の見分けからです

↓テリミノイヌホオズキ(ナス科ナス属Solanum americanum 北アメリカ原産)
 少し前に、アメリカイヌホオズキとして(花と全体の写真を)掲載したものから100メートル以上は離れた道端(日当たりがよい)ところに、再びイヌホオズキの仲間を見つけました。この時期、実も花も両方見られることがはっきりしました。もしかすると、前に載せたものと同じかとも思いましたが、今回のは、葉に波打った鋸歯もなく、実(花の個数)が多そうなので違う可能性もあると考えました。

前の記事で「三河の植物観察」(※1)を参照し、

 「イヌホオズキ類4種の中では花序の花の個数が1~4個と少ないのがアメリカイヌホオズキ(Solanum ptychanthum)だけで、他のイヌホオズキ(Solanum nigrum、世界の温帯から熱帯に広く分布し、日本では史前帰化植物と考えられる(※3))、オオイヌホオズキ(Solanum nigrescens)、テリミノイヌホオズキ(Solanum americanum)は5個以上」

 と記載しましたが、今回、実の数が5個以上がよく観察されたので、さらに分類を試みないわけにはいかないと思いました。再び「三河の植物観察」を頼ります。以下抜粋です。

「テリミノイヌホオズキ(広義)は、茎は直立することが多く、稜があり、小さな刺がまばらにつき、屈毛がある。葉は長さ2~15㎝の卵形、大きな波状の切れ込みがある。花は1花序に典型的には4~10個(3~11個)、ほぼ散状につく。
 テリミノイヌホオズキ(カンザシイヌホオズキ型)は、果実の付く形がカンザシのようで(小果柄が上向きにつく)、特徴があり、気づきやすい。このカンザシイヌホオズキ型の典型的な形は日当たりの良い場所で見られることが多く、よく分枝し、葉は幅がやや狭く、ほぼ全縁が多く、場所によっては波状鋸歯も見られる。
 テリミノイヌホオズキ(垂れ実型)は果実のフケ状班紋が明瞭で、光沢が強い。
 アメリカイヌホオズキは、茎は直立し、普通、上部で多数、分枝し、ほとんど毛がない。(広く分枝するともいわれる。)葉は互生し、卵形又は菱形(diamond-shaped)、薄い緑色で、柔らかく、厚さが薄く半透明に近い。小さな花が小さな散形花序(小花柄は1点につく)に普通、2~5個集まってつく。花柄は短く、葉腋でなく、茎の側面から突き出す。
 オオイヌホオズキ 実が多いと散状から一部離れて総状...日本には広く帰化しているようである。茎はときにやや暗紫色を帯び、稜があり、曲がった小さな刺がある。茎の基部は這い、先が立ち上がる。あまり立ち上がらず、長く這っていることも多い。葉は深く切れ込まず、浅い波状の鋸歯があることが多い。
 イヌホオオズキは茎が暗紫色を帯びることが多く、上向きの曲がった毛がある。葉は卵形~広卵形、縁は全縁~浅波状、葉の幅がやや広い。葉の両面に屈毛があり、葉裏の脈にも屈毛がある。花は1つの房に総状に集まってつく。花冠は星形に平開した幅10~12㎜程度、白色~淡紫色で、5裂するが、基部まで切れ込まず、裂片の幅が広い。ただし、一部、切れ込みが深く、裂片の幅があまり広くないときもある。...果実は直径8㎜前後、未熟な緑色のときにも光沢がほとんどなく、熟して黒くなっても光沢はない。ただし、かなり光沢のある果実が混じるときもある。果実の表面に見えるフケ状の班紋は少ない。イヌホオズキ類は果実の横幅がやや広くなるものが多いが、イヌホオズキはやや縦長になる。イヌホオズキ類は果実中に種子と一緒に含まれる球状の顆粒の数で同定するが、イヌホオズキにはこれがない。」

 なお、アメリカイヌホオズキの花の個数が前に記載のものより1個多いですが、前が「神奈川県植物誌」記載のデータ、今回がオンタリオ州発信のデータという違いがあります。一番少ないのがアメリカイヌホオズキという点に変わりはありません。
 まず、今回、実に光沢があるため、イヌホオズキは外れ、5個以上の実も見られるためアメリカイヌホオズキも外れるかもしれないと考え、茎は暗紫色でもなく基部が這っているようでもないためオオイヌホオズキではなく、実のつき方がカンザシのようで緑の実にフケ状斑紋もあり、これはテリミノイヌホオズキの可能性があると考えました。テリミノイヌホオズキ(広義)の葉の形が「卵形」、アメリカイヌホオズキの葉の形が「卵形か菱形」という点は、葉の柄側の幅が広い感じが卵形で、葉の中央で幅が広いのが菱形と考えれば、前にアメリカイヌホオズキとして掲載したものは確かに中央の幅が広い傾向、今回は根元側が広い傾向の違いはありそうです。つまり、今回のはテリミノイヌホオズキでよいかもしれません。都合のいい解釈をしようとしているかもしれませんが。今後の観察や検討で変更があれば訂正します。
2021/7/19撮影




↓ワルナスビ(ナス科ナス属Solanum carolinense)
 ナス属なので、やはりイヌホオズキとよく似ています。それで続けて載せました。外来生物法の要注意外来生物でしたが、改正後の生態系被害防止外来種には引き継がれなかったようです。
 群生しているようには見えず繁殖力がすごいようには思えませんが、駆除の困難さが問題ということのようです。駆除方法には、大量の熱湯で根も含めて熱死させるか、土中に根を残さないよう完全に掘り起こして処分(絶対すき込んではいけない)とありました(※2)。牧野氏による「ワル」という命名には先見性があったと見るべきなのでしょうか。
Wikipedia「ワルナスビ」(※2)によると、

「アメリカ合衆国東南部(カロライナ周辺)原産。日本では1906年(明治39年)に千葉県成田市の御料牧場で牧野富太郎により発見及び命名され、以降は北海道から沖縄まで全国に広がっている。1980年代頃から有害雑草として認識されるようになった。...特にナス科であるため畑に生えるとナス、トマト、ジャガイモなどのナス科の作物に2年の連作障害を与える。また、直接畑などに生えなくとも付近の空き地などに生えただけでナスやジャガイモなどの作物の害虫であるニジュウヤホシテントウの温床ともなり、付近のナス科作物に飛び火するため農業関係者からすると非常に厄介な雑草である。同様の被害は同じナス科の雑草であるイヌホオズキなどでも起こるが駆除の困難さがあるので本種の方がはるかに厄介である。」

2021/7/17撮影
ワルナスビ Solanum carolinense

↓アキノノゲシ(キク科アキノノゲシ属Lactuca indica 史前帰化)か
 Googleレンズでは、アキノノゲシとトゲチシャが出てきます、共にレタスの仲間ですので似ているのでしょう。画像検索すると葉の細かいギザギザがあるものでもアキノノゲシとなっているものもあり、何より黄緑色の草の感じからしてアキノノゲシではないかと思えます。明らかなトゲチシャは次に挙げます。
2021/7/11撮影

 

↓トゲチシャ(キク科アキノノゲシ属Lactuca serriola ヨーロッパ原産)
 恥ずかしながら、トゲチシャを初めて知りました。葉はアキノノゲシと似た形ですが、濃い緑色で主脈が白く、茎への付け根でグニャッと捻れています。茎の先端のほうでたくさん枝分かれし、キク科らしい花をつけますが、花のつく部分と下の茎はまるで別物です。というのも茎は白く、見た目は木質化していて、実際触ると曲げようと思えば曲がるものの結構堅く半分木質化したような感じです。レタスの仲間といいますが、全くレタスのイメージを感じません(アキノノゲシではまだ感じます)。
 下の写真のマルバヤナギ(ヤナギ科ヤナギ属Salix chaenomeloides)と思われるものと写っているものですが、マルバヤナギは車道側にあるグレーチングから生えていますが、トゲチシャは歩道側のアスファルトの路面から生えています。しかも、以前の記事でこの場所の4月のマルバヤナギの写真を見るとまだトゲチシャはありません。3か月で1.7メートルほどに半木質化した茎が伸びたということです。
↓2021/7/19撮影

トゲチシャ Lactuca serriola
トゲチシャ Lactuca serriola

トゲチシャ Lactuca serriola

↓2021/7/13撮影 マルバヤナギとトゲシチャ

トゲチシャ Lactuca serriola マルバヤナギ Salix chaenomeloides
トゲチシャ Lactuca serriola マルバヤナギ Salix chaenomeloides

 

↓ヒナギキョウ(キキョウ科ヒナキキョウ属Wahlenbergia marginata)?
 小さ過ぎる感じがするので確信が持てませんが、雄蕊のような白い3つの部分は、確かにヒナギキョウの感じがします。花茎が長く立ち上がっているのもヒナギキョウ的ですが、ひょろひょろな感じもします。公園の草の生えている部分にありました。もちろん、初めて知る植物です。
2021/7/18撮影



↓シロザ(ヒユ科アカザ属Chenopodium album 古い時代に帰化)?
 これも初めて知りました。まずは、知ることから。道路の歩道の縁石のところです。
Wikipedia「シロザ」(※3)によると、

「若葉や種子が食用になる。アカザ同様にほうれん草に似た味がする。」

2021/7/13撮影
シロザ Chenopodium album

↓メドハギ(マメ科ハギ属Lespedeza juncea (L.fil.) Pers. var. subsessilis Miq.)
Wikipedia「メドハギ」(※4)より、

 「元来は筮萩(めどぎはぎ)とよばれたが、これはかつて筮竹(ぜいちく 易占いで使う)の替わりに用いられたことによると言う。一部では薬草として利用されたことがあるようだが、広く薬効が認められている訳ではない。」

2021/7/13撮影
メドハギ Lespedeza juncea

↓ヘクソカズラ(アカネ科ヘクソカズラ属Paederia scandens
 可哀想な名前ですが、日本原産の在来種ですので貴重かもしれません。外来種だらけの環境で、まだ時々見かけるので逞しいです。基本的に蔓性植物は嫌われ者になるくらい蔓延るものなのでしょう。一方で、先日のノウゼンカズラとフジの記事でも書きましたが、なぜか恩恵も与えてくれる場合があるようです。万葉集でも詠まれ、地方により呼び名も様々あります。
Wikipedia「ヘクソカズラ」(※5)によると、

「干して水分を飛ばした果実、または熟した生の実を薬用とする。生の果実はかなりの臭気を放つのに対して、乾燥したものは不思議と臭いが消えるため、乾燥したものを使うことのほうが多い。」
「また、全草を開花期に採取して天日乾燥して調製したものは、鶏屎藤(けいしとう)と称する生薬になる(下痢、黄疸)。」

2021/7/13撮影
ヘクソカズラ Paederia scandens

↓シロツメクサ(マメ科シャジクソウ属Trifolium repens ヨーロッパ原産 明治以降牧草として導入)
 まだ咲いています。花期としては終わり頃か。
2021/7/16撮影
シロツメクサ Trifolium repens

↓エノコログサ(イネ科エノコログサ属Setaria viridis 全世界の温帯に分布)かキンエノコロ(イネ科エノコログサ属Setaria pumila)か
 言わずと知れたエノコログサですが、今の時期に緑の穂をつけているのは時期的には普通でしょう。世界中の温帯に分布していて、穀物として可食ということです。写真は穂の毛の色からキンエノコロかもしれません(2021/8/4追記)。
Wikipedia「エノコログサ」(※6)より、

「現在は、一般的に食用としては認識されてはいないが、アワ(粟)の原種であるので食用に使える。基本的に穀物であるので、粟やほかの穀物同様、種子の部分を脱穀・脱稃して食用とする。近代以前の農村では、飢饉の際にカラスムギなどと共にこれを食用としたこともあった。」

2021/7/13撮影
エノコログサ Setaria viridis

↓アメリカオニアザミ(キク科アザミ属Cirsium vulgare ヨーロッパ原産)?
 生態系被害防止外来種になっています。国道の横断歩道近くの歩道側にあり、くしゃくしゃとなっていましたが、写真を撮って調べてみると、アメリカオニアザミではないだろうかと思いました。タンポポのように、この綿毛で種子が飛んでいき拡散するわけです。日本に定着してまだ半世紀です。
Wikipedia「アメリカオニアザミ」(※7)より、

「日本へは北アメリカから輸入された穀物や牧草に混入して持ち込まれた。1960年代に北海道で初めて確認され、本州や四国でも定着しているが、特に北海道に多い。利尻島や世界遺産の知床国立公園などの自然度の高い地域に侵入し、在来種と競争し駆逐している。」

2021/7/19撮影

 

↓前にアメリカイヌホオズキを載せた記事
身近な自然観察 メマツヨイグサの時期へ/アメリカイヌホオズキ
2021-07-16 21:51:22

 


↓今トゲチシャのある場所の4月の写真(マルバヤナギ)を載せた記事
身近な自然観察 春の雑草や道端の雑木(補遺)
2021-05-01 23:10:35

 


(引用、参考)
※1:「三河の植物観察」by katou
https://mikawanoyasou.org/index.shtml
(参照ページ→)https://mikawanoyasou.org/data/inuhoozukirui.htm
※2:「ワルナスビ」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/5/16  23:53 UTC 版)https://ja.wikipedia.org
※3:「シロザ」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/3/5  21:02 UTC 版)https://ja.wikipedia.org
※4:「メドハギ」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/2/7  05:46 UTC 版)https://ja.wikipedia.org
※5:「ヘクソカズラ」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/21  03:40 UTC 版)https://ja.wikipedia.org
※6:「エノコログサ」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/7/12  07:10 UTC 版)https://ja.wikipedia.org
※7:「アメリカオニアザミ」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/5/23  06:10 UTC 版)https://ja.wikipedia.org