身近な自然観察 春の道端の植物(前編)雑木6強 桑の木も

 昼間暑いと感じるようになりましたが、朝夕がまだ寒いです。今回は春の道端の植物の前編とします。昨年の観察で、当地域(東海地方)ではおそらくカラスやヒヨドリが糞で散布することにより道端に勝手に生えてくる木(雑木)として、双璧のアカメガシワとクワ、続いてセンダン、エノキ、ナンキンハゼ、さらにはクスノキがあり、私は6強としました(昨年5強と言っていましたがクスノキを加えました)。そして、これらが芽吹いてきました。
 最初は雑草のようですが、放置すると木になります。これらの中に欧米、中南米、アフリカ原産の木はなく、センダンはヒマラヤ山麓原産ですが、だいたい史前帰化などによる東アジア原産の植物(木)です。鳥頼みですが頼もしいと言えるのかもしれません。
 「道端の雑草」も合わせて載せようと思いましたが盛り沢山過ぎるため分けることにしました(次回へ)。
 考えてみれば、こうして道端の草木を観察したり、頭の中で思考したり、それをブログに書いて、資本主義の世の中では、持たざる者のささやかなブログであります。


↓アカメガシワ
 在来の植物という点では頼もしい感じもします。川の土手のようなところや道端でもよく生えています。以前、拙記事「自然観察 鳥の種子散布その他諸々2020-08-04」で取り上げましたが、

山階鳥学誌 (J. Yamashina Inst. Ornithol. ), 36: 1-13, 2004「排泄物分析に基づカラス類Corvus spp.のアカメガシワMallotus japonicus種子の利用と消化状況」吉野知明・ 藤原一繪(横浜国立大学環境情報学府植生学研究室)によると、カラス類がアカメガシワを選択する理由は、アカメガシワの外種皮に含まれる脂肪分への嗜好性が考えられ、大量に摂取することで、可食部の少なさを補っているのではないかということでした。また、排泄物中には大量のアカメガシワの種子に加えてエノキの種子も含まれていたということでした。

 分布拡大は鳥頼みではあるということです。
 今回の写真のものは、昨年繁茂していたものが刈り取られていたところから、この春萌芽したものです。鳥に遠くへ運んでもらったあと、一度生えてしまえば、刈り取られても粘り強く育つようです。
Wikipedia「アカメガシワ」(※1)より、

「日本の本州の岩手・秋田県以南、四国、九州、沖縄、国外のアジアでは台湾、中国の南部に分布する。...明るいところによく生えている、典型的なパイオニア植物である。...古来は熱帯性植物であり、落葉性を身につけることで温帯への進出を果たしたものと見られる。」
「日本薬局方に記載の生薬で、樹皮は野梧桐(やごどう)、葉は野梧桐葉(やごどうよう)という。」

↓2021/4/18撮影 



↓クワ(桑の木)
 アカメガシワと双璧でよく見かけます。葉の形は切れ込みが入って5裂や3裂だったり裂が入らなかったり、大きさも含めて多様です。常緑樹ではありませんが、葉がニスを塗ったようにテカった感じに見えることがあります。川の土手では水に近いほうに生えているように感じます。そういうところでは結構大きくなり、木になっています。また、道端にも実生から生えていて、冬に葉を落としても当然また春に芽吹きます。昨年初夏から身近な自然観察を始めましたが、実はまだクワの花や実を見たことがありません。雌雄異株ということですが、それにしても全然見ないというのは不自然で、ただ単に見落としていたのか、今後注意深く観察します。
Wikipedia「クワ」(※2)より、

「クワ属は、北半球の暖帯もしくは温帯地域に10数種が分布する。養蚕のために広く栽培されるほか、盛んだった時期の名残で畑のわきなどでも見られる。中国北部から朝鮮半島にかけての原産といわれ、日本へは古代に渡来したと考えられている。」
「クワの根皮は桑白皮(そうはくひ)、葉は桑葉(そうよう)、枝は桑枝(そうし)、果実は椹(たん)または桑椹(そうじん)、もしくは桑椹子(そうしんし)という生薬である」
「養蚕の歴史は古く、中国では紀元前3000年ごろ、日本では弥生時代中期から始められたと考えられていて、植物の名はふつう基本となる野生種からつけられるのが普通だが、クワの場合はその逆で、栽培種の名が先につくられ、山野の自生種があとからついている」

↓2021/4/19撮影 

↓2021/4/18撮影 

 



↓センダン
 ムクロジ目センダン科(APG体系)です。「双葉より芳し」の栴檀(せんだん)は別種(白檀)です。ヒヨドリが実をつつく様子を以前2月の拙記事「身近な自然観察 鳥たちの春
2021-02-25」に載せています(ほぼシルエットですが)。
Wikipedia「センダン」(※3)より、

「薬用植物の一つとしても知られ、果実はしもやけ、樹皮は虫下し、葉は虫除けにするなど、薬用に重宝された。」
「順応性の高い種であり、原産地のヒマラヤ山麓のほか、中国・台湾・朝鮮半島南部および日本などの乾燥した熱帯から温帯域に分布する。日本では、本州(伊豆半島以西)、伊豆諸島、四国、九州、沖縄に分布する」

↓2021/4/19撮影 たぶん蕾

↓2021/4/18撮影 

↓2021/4/5撮影 


↓エノキ
 APG体系ではアサ科です(従来はケヤキなどと同じニレ科だった)。エノキは秋に実をつけているのを見ました。鳥がつつく様子は未確認です。
Wikipedia「エノキ」(※4)より、

「東アジアに分布する。国内では本州、四国、九州。広い範囲に自生する落葉樹。大きな緑陰を作るため、ケヤキやムクノキなどとともに各地の一里塚や神社仏閣に植栽され、その巨木が今日でも見られる。根張り(地際の幹)の美しさは日本の樹木で最高の評価。日本のほか、中国の中北部、台湾及び朝鮮半島にも分布が確認されている。」
実は人が食べても大丈夫なようです。

 私は食べたことはありません。
↓2021/4/19撮影 


↓ナンキンハゼ
 街路樹や公園木としてよく見ますが、非常に頻繁に野に拡散しているのを見ます。環境省の生態系被害防止外来種になっており、付加情報の記述では江戸時代に園芸植物として渡来したとあります。アフリカ、ヨーロッパ、北アメリカにも広がっているようです。侵略的で強いため、草原や雑木林等への影響が懸念されるとあります。
Wikipedia「ナンキンハゼ」(※5)より、

「和名は、ハゼノキの代わりに蝋をとる材料として使われるようになった、中国原産の木の意味である。」
「種小名の sebifera は「脂肪のある」の意」
「ムクドリなどの鳥類がこの種子を摂食し、蝋状物質を消化吸収して種子を排泄することで、種子分散が起こる。」
「根皮、果実は乾燥して、利尿剤、瀉下剤にする。これを烏臼(うきゅう)という。 種子の油脂の烏臼油は、石鹸・蝋燭の原料や、薬用(腫物、皮膚病)とされる。」

↓2021/4/19撮影 


↓クスノキ
 クスノキ科ニッケイ属です。昨秋は近隣の公園てで黒い実を確認しましたが鳥が食すのは未確認です。葉の三行脈は特徴的です。「ダニ室」はまだ確認したことがありません。古くから、防虫、木材用としても利用されてきました。Wikipediaからの引用過多になってしまいましたが、以下に載せます。
Wikipedia「クスノキ」(※6)より、

「「楠」という字は本来は中国のタブノキを指す字である。」
「世界的には、台湾、中国、朝鮮の済州島、ベトナムといった暖地に分布し、それらの地域から日本に進出した(史前帰化植物)。
日本では、主に関東地方南部以西から本州の太平洋側、四国、九州・沖縄に広く見られる。
生息割合は、東海・東南海地方、四国、九州の順に8%、12%、80%である。暖地の常緑樹林に生えるが自生かどうかは不明で、人の手の入らない森林では見かけることが少なく、人里近くに多い。かつては天然樟脳を採取するため、日本各地にクスノキが植林されてきたが、合成樟脳ができるようになってからは、植林樹が放置されて野生化している。」
「果期は秋(10 - 11月)で、果実は直径8 - 9ミリメートル (mm) 程度の球形で、黒色に熟す。鳥が食べて種子散布に与るが、人間の食用には適さない。」
「木部に精油が約1%含まれており、有効成分は主にカンフル50 - 60%であるほか、シネオール約6%、ピネン、カンフェン、フェランドレン、ディペンテンなどである。葉にも精油約1%を含み、精油成分はカンフル約50%、サフロール約30%、α-ピネンなどである。
 粗製樟脳から精製して得られるカンフルは、強心剤として注射薬に使われるほか、神経痛や打撲に用いる軟膏、チンキ、歯科用フェノールカンフルなど製薬原料として重要である。
 民間療法では、疲労回復、肩こり、腰痛、神経痛、リウマチなどの痛みを和らげるために、陰干しにした葉を布袋に入れて、浴湯料として風呂に入れる使い方が知られている
妊婦への服用は禁忌」
「樟脳には防虫効果があり、衣類の防虫剤として箪笥に入れられた。また、材は耐朽性が高く、その防虫効果や巨材が得られるという長所から、家具や飛鳥時代の仏像にも使われていた。江戸時代には、夏に夕暮れ時にクスノキの葉を焚いて、蚊遣りとしたほか、その煙に包まれて「自然養生にも良きよしと言えり」といった記録が残されている」
「クスノキの葉に2つずつ存在するダニ室には2形があり、入り口の大きいものと小さいものがある。入り口の大きい方にはケボソナガヒシダニという捕食性のダニが住み込んでおり、これがクスノキの葉を害する植食性のダニを捕食することでクスノキを守っていると考えられる。」

↓2021/4/19撮影 


 拙い記事をお読みくださりありがとうございました。今日(明日)よい一日となりますように。

(参考)
※1:「アカメガシワ」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/1  13:10 UTC 版)https://ja.wikipedia.org
※2:「クワ」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/3/13  04:45 UTC 版)https://ja.wikipedia.org
※3:「センダン」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/4/16  09:00 UTC 版)https://ja.wikipedia.org
※4:「エノキ」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/2/25  10:53 UTC 版)https://ja.wikipedia.org
※5:「ナンキンハゼ」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/2/19  06:07 UTC 版)https://ja.wikipedia.org
※6:「クスノキ」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/3/27  11:54 UTC 版)https://ja.wikipedia.org

自然観察 鳥の種子散布その他諸々
2020-08-04 22:02:34

 

 

身近な自然観察 鳥たちの春
2021-02-25 19:57:03