自然観察 鳥の種子散布その他諸々
(2020/8/7一部修正ローズマリー)


セミ
8月3日午後、ニイニイゼミとクマゼミの鳴き声がぱったり止みました。夕方はアブラゼミだけが盛んに鳴いています。8月4日の夕方もアブラゼミの合唱でした。つい数日前に1本のクロガネモチの木にニイニイゼミのメスが集合していたのは、今生最後の望みをかけて一匹のオスのもとに集まっていたのかもしれません。そして今年はクマゼミの発生が少なかった感じがします。

↓タブノキ
 今度こそ、きっとこれはタブノキでしょう。樹皮も合っています。冬芽を見てタブノキだとわかっている木があるのですが、少し遠くて最近足を運んでいません。APG体系でモクレン類クスノキ目(←APG体系)クスノキ科です。種子は鳥散布です(※1)。
写真2020/8/1タブノキ 



↓アラカシ
 アラカシの証拠というか、ドングリになりかけの若い実がついていてアラカシとわかりました。根元の写真を見れば先日の蘖(ひこばえ)の写真はアラカシとわかります(この近くですし)。APG体系で、アラカシは真正バラ類Ⅰブナ目ブナ科コナラ亜科コナラ属です(※2)。さすがにドングリとなると、鳥ではカケスくらいしか種子散布者に挙がってきません。平地ではカケスは身近な鳥とは言えませんから、親木のそばでしか見られないということになります。山地では、イノシシ、シカ等大型哺乳類による土壌の攪乱と小型のげっ歯類や鳥のカケス類の働きで繁殖域を拡大できます(※10)。照葉樹林の代表樹種の割に、平地で放置しておいても勝手には生えてこないというのは、コナラ(カシ)類、シイ類共通ということになります(照葉樹林ではありませんが、ドングリという点で山地や東北地方のブナ類も同じ)。あるいは、人が拡大に関与していたということはあるかもしれません。いずれにせよ、動物とごく一部の鳥の関与を必要とするというのは、生態系が絶妙なバランスの上に成り立っていることの一例となるでしょう。
↓写真2020/8/5(修正追加)アラカシ若い実

↓写真2020/8/3アラカシ根元



↓アカメガシワ
 アカメガシワは雌雄異株ですが、これ(下の写真)は若い実です。三行脈(葉の基部から3つに分かれて出る葉脈が目立つ)の葉脈がくっきりとわかります。クワと並んで、鳥の種子散布(としか考えられません)によっていたるところに生えてくる木の双璧です。バラ類キントラノオ目(APG体系で新設)トウダイグサ科エノキグサ亜科エノキグサ連アカメガシワ属です(※3)。(Wikipediaから抜粋(※3))「材は軟らかく、床柱・下駄・薪炭に用いる。日本薬局方に記載の生薬で、樹皮は野梧桐(やごどう)、葉は野梧桐葉(やごどうよう)という。樹皮を煎じたものは初期の胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃酸過多症に効果があるとされるほか、葉の乾燥品を風呂に入れて入浴すると、あせもに効能があるとされる。」(抜粋終わり)

インターネット検索により見つけた論文
山階鳥学誌 (J. Yamashina Inst. Ornithol. ), 36: 1-13, 2004「排泄物分析に基づカラス類Corvus spp.のアカメガシワMallotus japonicus種子の利用と消化状況」吉野知明*・ 藤原一繪*(*横浜国立大学環境情報学府植生学研究室)
を読みました。
内容は、アカメガシワの種子のような可食部位がほとんどないようなものをカラスは利用しているのだろうかということを出発点に静岡県静岡市の静岡大学周辺の農道で調査が行ったというものでした。排泄物に含まれる種子数はアカメガシワが最も多くエノキの4倍で、(アカメガシワの)排泄物当たりの種子数は平均21個(最多332個)とありました。カラス類がアカメガシワを選択する理由は、アカメガシワの外種皮に含まれる脂肪分への嗜好性が考えられ、大量に摂取することで、可食部の少なさを補っているのではないかとされました。また、種子が破損したケースは稀でカラス類は種子散布者として働いていると結論づけていました。排泄物の中からアカメガシワの種子を2811個、エノキの種子を740個など、確認されていて、大変な作業だったと想像します。
 
 アカメガシワがいたるところに生えることに納得がいきますし、エノキもいくらか見かけることとも一致します。日本野鳥の会のウェブサイトの「種子散布者として期待できる野鳥20種」では、ハシブトガラスはヤマグワの種子散布もするとあります。また、ハシボソガラスを含め、エノキ、クスノキを散布しますが、アカメガシワは挙がっていませんでした。ヒヨドリも、エノキ、クスノキ、ヤマグワを散布するとありましたがアカメガシワは挙がっていませんでした。(単に「野鳥により種子散布される樹25種」にアカメガシワは選ばれなかったということでしょう)
↓写真2020/8/1アカメガシワ(水路脇) 



↓クワ
 写真を見て何という植物だろうと考えてしまうとわからなくなってしまいますが、考えなければクワと気がつきます。クワの葉は割と多様です。まず、三行脈の葉脈がはっきりしたものしないもの、3裂するもの、5裂するもの(イチジクみたいに)があります。写真のものは三行脈がはっきりし、ハート型のおとなしい形です。何度も写真を載せていますが、路傍に生えてくる木の双璧です。APG体系で真正双子葉類バラ目クワ科クワ連クワ属です(※4)。写真の場所ではヒヨドリを時々みかけるのでヒヨドリの仕業かもしれません。
↓写真2020/8/1クワ 

↓写真2020/7/20ヒヨドリ 



(積み残しになってしまうので少し古い写真を少しずつ放出します)

↓メドハギ
 双子葉植物綱バラ亜綱マメ目マメ科ハギ属です(※5)。←APGかどうかわかりませんが、APGは広義のマメ科を採用とあります(※6)。花がつくとマメ科の感じがしてくるのではと想像します(今まで、これはメドハギという目で見てこなかったので「想像」です)。(Wikipediaより抜粋要約(※5))「元来は筮萩とよばれたが、これはかつて筮竹(ぜいちく・・易占いで使われる竹ひごのようなもの)の替わりに用いられたことによると言う。お盆の箸として使われる地域もある。」
↓写真2020/7/10メドハギ 

↓写真2020/8/1 メドハギ 



↓ローズマリー
 APG体系で真正双子葉類コア真正双子葉類キク類シソ類シソ目シソ科マンネンロウ属です(※7)。常緑灌木とあります(草ではない)。そして、古代から薬として利用されてきました。
 メドハギと見た目が似ているので載せました。写真は植えてある感じがするところのものです。8月6日に再度現地確認しましたが、根元のほうが木になっていることがよくわかり、メドハギとは間違いようがないこと、ローズマリーに違いないだろうとわかりました。葉のついた部分で比較するとしても、ローズマリーが白っぽく、1本1本しっかり立っていて葉のついた部分ではあまり枝分かれしない感じがするのに対して、メドハギは枝分かれし、草のようで、白っぽくはないと思います(個人的感想です)。
↓写真2020/7/10ローズマリー



↓コムラサキシメジ?
 まだ雨が降り続く頃に見つけました。コムラサキシメジなら、真正担子菌綱ハラタケ目キシメシ科ムラサキシメジ属です(※8)。Googleレンズとインターネットの画像検索(芝生の上に生える+似ていた)(※9)で判断したものなので合っているかわかりません。きのこ類は難しいです。昨年は別の場所でシバフダケを見たことがあります(それはキノコらしい形をしていました)。
↓写真2020/7/10コムラサキシメジ?



(引用参考資料 文中に出典を示したものを除く)
※1:「クスノキ科」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/5/20 05:44 UTC 版)https://ja.wikipedia.org
※2:「アラカシ」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/6/28 11:05 UTC 版)https://ja.wikipedia.org
※3:「トウダイグサ科」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/5/2 05:36 UTC 版)https://ja.wikipedia.org
※4:「クワ科」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/5/20 05:50 UTC 版)https://ja.wikipedia.org
※5:「メドハギ」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2010/7/11 07:51 UTC 版)https://ja.wikipedia.org
※6:「マメ科」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/6/30 12:52 UTC 版)https://ja.wikipedia.org
※7:「ローズマリー」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/7/9 16:31 UTC 版)https://ja.wikipedia.org
※8:「コムラサキシメジ」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2014/1/27 02:03 UTC 版)https://ja.wikipedia.org
※9: 愛知県岡崎市公式観光サイト「コムラサキシメジ(こども自然遊びの森 わんPark)」 https://okazaki-kanko.jp/mizutomidori/creature/2735
※10:「ドングリ」フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/7/30 20:34 UTC 版)https://ja.wikipedia.org