本日のセンバツ3日目、地元、創志学園の試合を観戦しに甲子園に行ってきました。






初戦の対戦相手は北海道の別海高校。


別海高校は今大会21世紀枠で選出、部員はわずか19人(その内マネジャーが3人)ながら、昨秋は快進撃を見せ、見事北海道大会でベスト4入りを果たし、今センバツはその成績が評価されての堂々のセンバツ初出場となります。


本日もそんな地元の球児を応援しようと、北海道の最東端の別海町からは、おらが町の球児の晴れ舞台を一目見ようと、たくさんの町民がアルプススタンドに詰めかけていました。



別海町はオホーツク海に面する人口14,000人、酪農やホタテ漁が盛んな町(生乳生産量日本一の町と)として知られています。そんな別海高校の選手たちの親も酪農業や漁業に勤しんでいる家庭も多く、選手たち自身も学校の酪農経営科に属している選手も多くいるとのこと。


アルプスもそんな別海のシンボルとも言える生乳をイメージした真っ白なウインドブレーカーで統一したアルプスの光景が広がっていました。


対する創志学園もスクールカラーの青が綺麗ですね。



創志学園の系列、環太平洋大学のマーチングバンドは全国でも有名で、毎回アルプスにはそうした系列校からもたくさんの大応援団がかけつけ、甲子園に美しい音色を響かせてくれます。


創志学園は東海大相模で数々の実績を残してきた新監督門馬監督が率いてから初めての甲子園となります。名将に率いられた創志学園が甲子園でどのような野球を展開するのか。


さて、そんな両者の対戦は創志学園山口くん、別海高校堺くんの両先発でスタートします。創志学園の左腕山口くんは昨秋防御率0点代の好投手、その前評判通りのテンポのよい投球で序盤から別海打線を抑え込んでいきます。


対する堺くんも、右のサイドハンドからキレのよい直球を投げ込み、創志学園に序盤チャンスを作られながらも無失点でしのぎ、3回までは両校0-0の試合展開。


そうした中、創志学園は4回に相手エラーで出したランナーをバントで着実に進め、7番秦くんの犠牲フライで先制に成功します。創志学園はその後も別海高校の守備の乱れに、単打や盗塁を織り交ぜ、着実に追加点を積み上げ、試合を優位に進めていきます。


対する別海高校も何とか反撃を試みようとしますが、四球などでチャンスを掴む場面などもありながら、あと一本出ない展開。


そして試合はそのまま7-0と創志学園のリードで最終回に。その最終回、別海高校は、2本の安打で甲子園初得点に向け大いにアルプスはわきあがります。しかし、最後も創志学園の山口くんのキレは衰えず、最後の打者もセンターフライに倒れ、そのまま試合はゲームセット。7年ぶり出場の創志学園が門馬体制のもとでの甲子園初勝利を挙げ、見事2回戦に駒を進めました。


今日の創志学園、先発山口くんは9回完封、途中四球でランナーを溜める場面もあり決して調子がよいとは言えなさそうでしたが、それでも勝負どころではきっちり厳しいコースに投げきるなど、やはり所々に彼の投手としてのポテンシャルの高さを見て取ることができました。


あとやはり攻撃面ですね。創志学園は塁に出ればランナーを積極的に走らせるなど、今大会飛ばないバットで長打があまり期待できない中、しっかり機動力を生かした攻撃を展開していたことが印象的でした。特に7回の場面などは、別海高校の投手が堺くんから、金澤くんに代わったその代わり際の二死一、三塁から、いきなりセーフティバントスクイズを仕掛ける場面などもありました(結果的にこれがダメ押し点となりました)。


本日のゲームは門馬監督が東海大相模監督時代に掲げていたアグレッシブ・ベースボールの片鱗が随所に見て取れる、そんなゲームだったと思います。そうした多彩な攻撃(飛ばないバット対策も十分見て取れ、低くて速い打球をチームとして徹底していることが見て取れたこと)が別海高校の守りに少なからず動揺をもたらしたことは間違いなかったと思います。創志学園には本日の山口くんの他にも中野くんというもう一人の好投手も控えているだけに、次戦の試合に向けて、とても期待を持たせてくれるゲームだったんじゃないでしょうか。


別海高校は序盤こそ自分たちのペースで試合を進められているように見えましたが、そうした創志学園の多彩な攻めに少し守りの面で翻弄されてしまった感が否めなかったように思いますね。その証拠にこの試合別海高校の守備のエラーは5つ、こうしてミスが堺くんの投球リズムにも狂いを生じさせ、中盤から、試合の流れを手放すきっかけとなってしまったことは少し残念でした。これについて夏に向けての課題ですね。


しかし、そんなゲーム展開の中でも別海高校のナインに向けて、地元アルプスが最後まで選手に温かい声援を送っているのが印象的でした。別海高校の島影監督が2016年に監督に就任した際は部員4人だったそうです(島影監督は別海町出身、前任の武修館高校の監督退任後地元に戻り、親族のコンビニ経営に携わる傍ら少年野球を指導。その指導実績が評価されて、町から高校に派遣される外部指導者の形で別海高校の監督に就任したそうです)。


そんな島影監督ですが、「10年で甲子園に連れていく」という熱い想いを胸に地道に指導を重ね、その評判を聞きつけて地元別海出身の野球少年が徐々に別海高校に集まる流れとなっていったそうです(別海中央中学として全国大会出場経歴がある、堺くん、千田くん、寺沢くん、金澤くんなども、地元で野球をやろうと揃って別海高校への進学を決意)したそうです。そして、そんな野球部を地元行政や住民が過疎化に見舞われるまちの活性化の起爆剤として、支えてきた、今回の別海高校の躍進にはそんなバックボーンがあるわけです。


いやね、こうしたドラマを耳にすると、スポーツのもたらす素晴らしさというものを改めて実感しますね。高校野球の新たな可能性と言いましょうか、高校の野球部が過疎化に見舞われるまちの活性化に一役も二役もかうなんて、まさに高校野球日和に尽きるってもんじゃないですか。最後選手たちがアルプスへの挨拶で大歓声を受けている場面を見ていて、私は少し胸が熱くなりましたよ。


あと、最後に大会全般に関して。今日外野で見ていて改めて思ったのは、やはり飛ばないバットとなり圧倒的に長打は減った印象を受けました。外野手の守備位置もかなり前、打者もよっぽど芯でとらえないと外野の頭を抜けることはまずなさそうです(大阪桐蔭と言えど、これまでのように長打連発なんてことはなさそうです)。打球音の割に打球が伸びない場面も多く、これに風も重なってきた場面、外野の守備はちょっと苦労しそうだなと。そうなると今後はますます投手を中心とした守備や、機動力を駆使した攻撃がこれまで以上に勝敗を分けることになるんだろうなと、改めて本日の試合を見て感じた次第です。


そういう面では、初戦を突破した今年の創志学園、大会のダークホース的な存在としてなかなか面白いかもしれませんよ。次の対戦相手は昨春の優勝校山梨学院ですが、二回戦もきっと面白い試合になるんじゃないでしょうか。順当にいけば次の創志学園の試合日は日曜なので、また観に行けたらと思ってます。


春はセンバツから、風が強くまだ肌寒い天候でしたが、何年立っても高校野球を観戦しに甲子園にくると身が引き締まります。本命なき大会を制するのはどこなのか、最後まで目の離せない大会となりそうですね。


PS.

創志学園のブラスバンドの音色、いつ聞いても爽快です♪