夜の場面が多い | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 二人の生徒達が下校途中に歩きながら話し合っていた。 


  「このところ、僕は昔の人が書いた小説を読んでいるのだけど、夜の場面が妙に多いという共通点があるようだと気が付いてね。昔は夜間に活動する人間が多かったのかな?」 


  「昼間は昔の人達だって労働していただろうからね。読者だって他人が真面目に働いている姿を作中で事細かく描写されても退屈だろう?」 


  「どうかな?他の人々の労働風景をじっくりと見る機会は意外と少ないだろうし、読者はむしろ新鮮だと感じるかもしれないよ」 


  「同時代の見慣れた労働風景なら面白いと感じる可能性はあるけど、昔と今では世相や風俗が大きく異なるからね。服装だって違うし、使う道具だって違っているのだから頭の中に鮮明な情景が浮かぶはずがない。文章から読み取れる情報が少ないのだから退屈だと感じるはずだね。だったら、夜の場面の方が台詞や心理描写の割合が増えるわけだから断然面白くなるはずだよ」 


  「なるほど。だから、夜の場面が多い作品ばかりが今まで読み継がれてきたわけだね」