反対語の夢 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 明け方に夢を見た。

 私は学校の廊下を歩いていた。こちらに話し掛けてきた同級生の発言の内容をまったく理解できなかったので私は当惑して現実世界ではないようだと察した。その場所から立ち去ろうとしたのだが、その同級生に力強く肩を掴まれたので仕方なく立ち止まった。

 同級生は再び私にわけがわからない言葉を投げ掛け始めた。今度は先程よりも声が大きくなっていた。それを聞きながら私はどうやら一つずつの単語の音節の順序が逆になっているらしいと察した。しかし、反対になっている言葉に耳と頭が慣れないので私は同級生の発言を部分的にしか理解できなかった。

 ただ、私は反対語で話される同級生の発言を聞きながら自分の頭脳の隠れた才能に驚いていた。よくすらすらと澱みなく反対の言葉を繰り出せるものだと感心していた。しかし、同級生が話している反対語を私は少しも話せなかった。ひとつずつの単語の音節の順序を逆にしなければならないと考えると頭の中でまともに文章を組み立てられなくなるのだった。それで、私は同級生が話している様子を黙ったまま見つめていた。