鳥語 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 この群島の公用語は土着の古語、外来語、鳥語という三つの要素から成り立っている。この群島は大海原の真ん中にあり、昔から他の言語圏との交流が少なかった為に個性的な言語が育まれたと学者達は考察している。

 三つの要素の中でも鳥語の存在が他の地域の言語には滅多に見られない大きな特徴になっている。鳥語とは文字通り鳥の声を真似て発音される言語である。この群島においては古代から諸島間の情勢を互いに探り合いたいという潜在的な欲求が存在していたらしく、その為に鳥から情報を聞き出そうという真摯な研究が長年に渡って積み重ねられていたのである。

 そのような歴史があったので解読された部分の鳥の言語は価値が高く、鳥の声を正確に真似る技術も尊ばれたので自然と公用語に鳥の言語が組み込まれるようになっていったらしい。そして、今ではこの群島の公用語の基本となる三つの要素の中で鳥語が占める割合が他を圧倒して大きくなっている。鳥の声真似の中に補足的に人間らしい発音の単語が入るという状況になっている。