『ボタン』 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

アメーバブログにて超短編小説を発表しています。
「目次(超短編)」から全作品を読んでいただけます。
短い物語ばかりですので、よろしくお願いします。

 二人の少年達がマンションの通路に立って話し合っていた。

 「ほら。ここの壁に『ボタン』と書いてあるよ」

 「そうだね」

 「でも、どこにもボタンなんか見当たらない。この文字は何のつもりで書かれているのだろう?」

 「文字の部分の壁がちょっとだけ膨らんでいるね。まるでボタンみたいだ。試しにそこを押してみたら?」

 「『ボ』を押すべきかな?それとも、『タ』にしようかな?」

 「どれでもいいよ」

 「それでは、『ボ』を押すよ」

 少年は『ボ』を押した。すると、「ボ」という音が通路に鳴り響いた。少年達はその音に驚いたが、なんだか面白くなってきたので笑いながら何度も押してみた。その度に「ボ」という音が鳴った。短い音が出たり、長い音が出たりしたが、どれもとても大きな音だった。マンションの外にまで響いているかもしれなかった。


目次(超短編小説)