二人の少年達がマンションの通路に立って話し合っていた。
「ほら。ここの壁に『ボタン』と書いてあるよ」
「そうだね」
「でも、どこにもボタンなんか見当たらない。この文字は何のつもりで書かれているのだろう?」
「文字の部分の壁がちょっとだけ膨らんでいるね。まるでボタンみたいだ。試しにそこを押してみたら?」
「『ボ』を押すべきかな?それとも、『タ』にしようかな?」
「どれでもいいよ」
「それでは、『ボ』を押すよ」
少年は『ボ』を押した。すると、「ボ」という音が通路に鳴り響いた。少年達はその音に驚いたが、なんだか面白くなってきたので笑いながら何度も押してみた。その度に「ボ」という音が鳴った。短い音が出たり、長い音が出たりしたが、どれもとても大きな音だった。マンションの外にまで響いているかもしれなかった。
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