笑わせる茸 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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短い物語ばかりですので、よろしくお願いします。

 「世の中には食べると笑いが止まらなくなる茸があるらしいね」

 「ああ。しかし、それは毒茸なのだろう?食べたら死ぬかもしれないよ」

 「笑い過ぎるから死ぬのかな?その茸を食べたら必死に笑いを我慢していても死ぬのかな?」

 「笑ったせいで死んだ人間なんて見た経験がない。だから、きっと笑いを我慢しても死ぬのだろう」

 「しかし、だとしたら、どうしてその茸を食べたら笑うのだろう?茸としては自分を食べた人間を殺す意味はあるかもしれないけど、笑わせる意味はなさそうだよね」

 「そもそも茸は毒で動物を殺そうとしているわけであって人間を笑わせる意図はないのだと思うよ。神経に作用する毒の効果がちょっと狙いを外れたのかもしれない」

 「茸が笑わせようとしているわけではないのだとしたら余計に人間がその茸を食べて笑う理由がわからなくなるよ」

 「人間は常に笑いたがっている生き物なのかもしれない。普段は余計な心配をし過ぎているせいで不幸な気持ちになっているけど、神経に作用する毒の効果で思考力が低下した人間は幸福な本性が剝き出しになって自然と笑い続けるのかもしれないよ」


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