大きくなる茸 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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短い物語ばかりですので、よろしくお願いします。

 「世の中には食べると自分の身体が大きくなったと勘違いする茸があるらしいね」

 「ああ。僕の知り合いがその茸を食べて悲鳴を発しながら家の外に走り出ていったよ。家の中に留まっていると巨大化していく自分の身体の圧力で壁や天井が壊れるかもしれないと心配になったらしい」

 「僕の知り合いはその茸を食べて自分が象になったと錯覚したらしい。涙を流し始めたから様子がおかしいと思って僕が『どうしたの?』と問い掛けたら彼は『長い鼻がなくなったから悲しい』と答えたよ。自分が大きくなったと錯覚する効果は共通しているけど、すべてが完全に同じというわけでもなく、毒の効果には個人差があるみたいだね」

 「君はその茸を食べなかったの?」

 「僕は食べなかったよ。だって、その知り合いが涙で顔面を濡らしていて本当に心の底から悲しそうな様子だったからね」


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