カメラ犬 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 休日に友人が住んでいるマンションに初めて訪問した。友人は部屋の中で犬を飼っていた。私は動物が苦手なので近付きたくなかったのだが、犬の方からこちらに駆け寄ってきた。

 「大丈夫だよ。絶対に噛まないよ」と友人は微笑みながら言った。私が怖がっていると思ったようだった。

 犬が足元で吠えたが、その声がカメラのシャッター音のように聞こえたので私は驚いた。「ひょっとして、この犬は機械なのか?」と私は尻尾を振っている犬を見下ろしながら訊いた。

 「そうだよ。外見は犬そっくりだけど、機械だから食事も排泄もしない。だから、ほとんど世話をする必要がないよ。ただ、数日前から声帯が故障しているのだけどね」と友人は答えた。

 「カメラで撮影されているみたいな気分になる音だね」と私は感想を言った。足元の犬は私の顔を見上げながら何度も連続してシャッターのような音を鳴らしていた。

 「実際、この犬型機械は頭部に内蔵されているカメラで周りの状況を視覚的に認識しているわけだから君のその印象は間違っていないよ」と友人は言った。


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犬型機械の反応

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