馬ガム | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 休日の午後、小腹が空いたので台所の戸棚の中を探っていると『馬ガム』と書かれた袋を見つけた。見慣れない菓子だが、どのような味なのか興味が湧いたので私はその袋を鋏で切って開けた。すると、中身はさらに幾つかの小さな袋によって小分けにされていた。

 その小さな袋を開けると馬を象った白いガムが出てきた。私はそれを口に入れて噛んでみたが、甘いばかりで特に美味しいとは思わなかった。ただ、噛む度に馬の足音が口の中に響いた。そして、白い馬が歩いている光景が思い浮かんだ。私はその馬を走らせてみたくなって噛む速度を上げた。頭の中が随分と騒々しくなったが、白い馬が駆ける姿が颯爽としていて格好いいので嬉しくなった。

 しかし、全力疾走はたちまち顎の筋肉を疲弊させるのだった。私は仕方なく速度を落とさせた。立ち止まって馬にも休息を取らせたが、足音を立たせないでいると馬の存在が感じられなくなって心細くなるので私はしばらく経つとまたガムを噛まずにはいられなくなった。そうして休日の午後は白い馬をゆっくりと歩かせながら過ぎていった。


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