カメラガム | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 「これはカメラガムだよ」と公園で友人が言った。友人はガムが入っているらしい紙の塊をこちらに差し出してきていた。

 「カメラガムだって?どんな味なの?」と私は訊いた。

 「口に入れればわかるよ」と友人は言った。

 受け取って包装紙を開けると黒いブロック型のガムが出てきた。口に入れて噛んでみると口内にシャッター音が響いた。ちょうど友人の方に視線を向けていたので私はそのにやけた笑みを撮影したような錯覚を感じた。

 「どうだ?カメラになったような気分になっただろう?」と友人が訊いてきた。

 「ああ」と私は呟いて友人の方から視線を逸らせた。公園の中をゆっくりと見回しながら口内にシャッター音を響かせた。そうすると視界の中の景色を写真として撮影しているような気がし出した。そして、見慣れているはずの景色に改めて注目させられた。私はガムを噛みながら公園内を歩き回りたくなった。


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