宇宙人と言語の数 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 居間で宇宙人と一緒にソファに座ってテレビを視聴していた。私は番組の内容に興味を持てなくて眠くなってきたので背伸びをしてから宇宙人に問い掛けた。「ところで、この宇宙には君の同類が何人いるの?」

 「正確な数はわからないけど、おそらく今は数兆といったところかな。我々の同類は故郷の惑星を離脱してから長い年月が経っているから互いに連絡を取り合わなくなっている仲間が宇宙の遠い場所にたくさんいるはずだよ」と宇宙人はテレビから視線を外さないまま答えた。

 「数兆もいるのか。それは多いね。言語の種類は幾つあるの?」と私は好奇心が赴くままに次の質問を投げ掛けた。

 「一種類だけだよ。我々の祖先は高度に機能する言語を開発した。その言語のおかげもあって文明が高度に発展し、宇宙の広範囲に移住するだけの技術力を獲得できた」と宇宙人は答えた。

 「数兆も同類がいて一種類の言語しか使用していないという状況は無駄が多くないの?同じ言語を使っているのなら発想も同じようになるよね?」と私は疑問を口にした。

 「我々の祖先が開発した言語はこの世界のすべての可能性に対応できる。だから、我々はどのような発想でも言語化できるよ。今、私は君に合わせて君の言語で会話をしているわけだけれど、この言語では自分の思考を十全に伝えられないから歯痒いと感じているよ」と宇宙人は私の方を見ないまま言った。


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