月飴 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 「これは月飴だよ」と公園で友人が言った。友人は飴が包まれているらしい紙の塊をこちらに差し出してきていた。

 「月飴だって?どんな味なの?」と私は訊いた。

 「口に入れればわかるよ」と友人は言った。
 
 受け取って包装紙を開けると白くて丸い飴が出てきた。ざらざらとした表面に凸凹があり、月に似ているように見えなくはなかった。どのような味なのだろうかと思いながら私はそれを口に入れて舌の上で転がしてみた。すると、飴は呆気なく崩壊し、たちまち跡形も残さずに口の中から消え失せた。何の味もしなかった。

 「消えたよ」と私は報告した。

 「あそこに月が出ているよ」と友人は言った。

 頭上に視線を向けると白くて丸い月が青空に浮かんでいた。私は舌の上で呆気なく消滅した飴の儚さを思い出し、寂しくて胸が締め付けられるように感じた。空に浮かんでいる本物の月には消えてもらいたくないと願ったが、どうにも頼りないような気がして心配で堪らなくなった。自分がどれだけ望んだとしても消滅する運命を避けられそうにないという気がした。傍らに友人がいるので我慢しようと思ったが、目頭が熱くなり、涙で視界が滲んだ。


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