魚飴 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 「これは魚飴だよ」と公園で友人が言った。友人は飴が包まれているらしい紙の塊をこちらに差し出してきていた。

 「魚飴だって?生か?それとも焼いてあるのか?」と私は訊いた。

 「舐めてみればわかるよ」と友人は言った。
 
 受け取って包装紙を開けると魚を象った飴が出てきた。気味が悪いと思ったが、臆病だと侮られたくないので私はそれを口に入れ、どのような味なのだろうかと思いながら舌の上で転がしてみた。飴にしては柔らかいようだが、味に関してはただ甘いだけで魚を感じさせる要素がなかった。

 「甘いね」と私は感想を言った。しかし、その拍子に飴が口から飛び出てきて地面に落ちた。飴が口の中で動いたのだった。そして、飴はまるで一匹の魚になったかのように公園の地面で跳ねていた。

 「ちゃんと口を閉じていないと駄目だよ。この飴は唾液に反応して舌の上で魚のように踊りながら溶けていくのだからね。溶けて小さくなって消えていくまで踊り続けるよ。でも、地面に落ちたから舐められないね。残念だね」と友人は言った。

 地面で跳ねていた飴は砂に塗れて表面の水分が奪われたようで段々と動きが鈍くなっていき、遂に力尽きたかのように動かなくなった。



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