息子と帰路で | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 幼い息子と手を繋いで住宅街を歩いていた。息子が頻りに背負ってくれと頼んできているのだが、私はその願いを拒んでいた。

 小さな橋を渡り、自宅が近付いてきた。「雨だよ」と息子が言った。

 頭上を見ると暗い雲が空を覆っていた。そして、冷たい雨粒が顔面に落ちてきた。「早く帰ろう」と私は言った。

 しかし、私が急ぐように手を引くと息子はまるで駆け引きの材料を見つけたと言わんばかりに背負ってくれという主張を再開し出した。私は雨が本格的に降ってくれば二人共が濡れる羽目になるのだから急がなければならないと反論したが、息子は立ち止まって頑として動かなくなった。

 そうしている間に遠くから雷の音が聞こえてきた。激しい降り方になりそうだと思われたので私は根負けし、息子の身体を背負って歩き始めた。すぐに大粒の雨が落ちてきた。「お父さんが遅いから濡れた」と息子が大声で私を非難し出した。


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