夜、私は星空の下で大きな階段を見上げていた。一つずつの段があまりにも高いので明らかに人類用に造られた建築物ではなかった。
「この階段を上るつもりか?」という質問が聞こえてきた。
声の方を振り向くと一匹の怪物がいた。足が少しだけ地面から浮いていた。どうやら飛行能力があるようだった。この怪物なら簡単に階段の上の方まで飛んでいけるだろうと私は察した。
「いや。上れないよ」と私は答えた。
「そうだな。お前では上れないだろうな」と怪物は言って嘲るように笑った。辺りに甲高い笑い声が響いた。そして、怪物は身体を浮上させ、たちまち暗い夜空に姿を消した。
怪物の姿を見送ってから私は再び階段の方へと視線を向けた。どのような方法で上ろうかと考えた。先程まではこの階段を上ろうなどとは微塵も思っていなかったのだが、怪物に笑われて急に意欲が湧いてきたのだった。適切な道具を揃えれば一つずつの段がどれだけ高くても上っていけるはずだと私は考えていた。
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