設計図を失った街 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

アメーバブログにて超短編小説を発表しています。
「目次(超短編)」から全作品を読んでいただけます。
短い物語ばかりですので、よろしくお願いします。

 廃墟の路上で一体のロボットが探検家から投げ掛けられた質問に答えていた。

 「この街は設計図を失ったのですよ。それでも建設用の重機が作動し続けていたので街の構造はどんどんと出鱈目になっていったのです」

 「人間は誰も住んでいないのか?」

 「この街には私のようなロボットしか住んでいません。人間の居住に適した環境ではないのですよ。道路はそこら中で途切れていますし、清潔な飲料水もほとんど手に入りません。私のようなロボットでさえ今では街全体の約二割程の土地にしか立ち入れなくなっているのです」

 「なぜ新しい設計図を用意しなかった?」

 「かつて、この街では長期間に渡って住民達同士の争いが続いていたのです。人々はその争いによって疲弊していました。だから、設計図が紛失した時、誰も新しい設計図を用意しようとはしなかったのです。すべての住民がこの街の未来に絶望していたのですよ」


関連作品

設計図を失った腕

目次(超短編小説)