叫べの小人 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 夜、枕元で誰かが「走れ。走れ」と呟いているようだと気が付いた。意識が朦朧としているので私は夢を見ているようだと思ったが、しばらく経っても声が消えないので夢ではないのかもしれないと考え直して瞼を開けた。

 部屋の中は照明が灯っていた。布団の脇に小人が立っていて「叫べ。叫べ」と呟いていた。私と目が合っても小人は表情一つ変えなかった。まるで人形のようだと思ったが、口は動いていた。やはり夢を見ているようだと私は思った。

 すると、家の外から犬の遠吠えが聞こえてきた。たくさんの犬達が一斉に吠え出した。そして、人間達の叫び声も聞こえてきた。同居している家族達も叫んでいるようだった。私は当惑した。叫びの数と勢いは刻々と増してきているようだった。

 小人は相変わらず表情を変えないまま「叫べ。叫べ」と呟いていた。その小さな声は数々の叫びの中でも私の耳にしっかりと届いてきていた。しかし、私は口を固く結んだまま頑として声を発しなかった。夢を見ているのだと自分自身に言い聞かせていた。


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