猫の箱 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 夜、寝床で横になって目を閉じていると木箱の映像が頭の中に浮かんできた。蓋が開いていて一匹の猫が入れられていた。猫の身体はその箱の中にきっちりと隙間なく収まっていた。瞼はしっかりと閉じられていた。

 ふさふさとして柔らかそうな体毛を撫でてみたくなったので私は自分の手を想像した。しかし、そうして猫の身体を撫でても感覚が伝わってこないので他人の動作を見ているかのようだと思われて物足りなかった。

 箱の中の猫は身体を撫でられても身動きしなかった。ひょっとして死んでいるのではないかという疑念が頭を掠め、私は背筋に寒気が走ったように感じた。しかし、よく見ると猫の身体は呼吸に合わせて微かに伸縮を繰り返していた。猫は眠っているのだった。

 猫はとても心地良さそうに寝ていて一向に目を醒ます気配がなかった。私は明日も仕事があるので早く眠らなければならないと思っているのだが、自分の替わりに猫が睡眠を取ってくれているようだと考えると焦燥に駆られずにいられた。


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