魚の箱 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 夜、寝床で横になって目を閉じていると魚が入れられている箱の映像が頭の中に浮かんできた。箱は幾つもの木の板が合わさって出来ているのだが、側面に隙間が開いているようで水が漏れ出ていた。

 このままだと箱の中の水がすぐに尽きて魚が死ぬだろうと思われたので私は胸騒ぎを覚え、咄嗟にその想像を頭の中から打ち消した。しかし、魚の安否が気になるので私はまたその箱を思い浮かべた。

 箱の中の水量はずっと一定で変化がないようだった。そもそも想像の産物なのだから水が漏れたら減るという現実世界の常識を適用させる必要はないのだった。私が死なせたくないと思えば魚は死なないはずなのだった。それで、私は魚の安否をずっと気に掛けていなければならなくなった。頭の中で魚に死んでほしくなかった。私は魚の映像を思い浮かべながら寝付けなくなった。


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