高速眼鏡 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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短い物語ばかりですので、よろしくお願いします。

 砂漠に敷いたビニールシートの上に仰向けに寝転がり、恋人と手を繋いで星空を眺めていた。私達は高速眼鏡を着けているのだが、その効果で空全体がかなりの速度で回転しているように見えていた。流れ星などは速過ぎるので視認できていなかった。

 かなりの速度で回転しているように見える星々が一向に地平線に落ちていかないという矛盾のせいで私の脳は常に混乱を抱える羽目になっていた。そのせいで目眩に襲われたので私は眼鏡を外した。

 すると、星空は回転しなくなった。まるで宇宙全体が停止したかのようだった。しかし、目眩はなかなか収まらなかった。私の脳は今度は停止した宇宙に対して強い違和感を覚えているようだった。それで、私は動かない宇宙に慣れる為にまたしばらく星空を眺め続けなければならなくなった。恋人の様子が気になっていたが、そちらにはなかなか視線を向けられずにいた。

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